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IS レギオン

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第8話

 そして、一年後の2041年

 アメリカ合衆国 ハワイ州オアフ島

 今日から一週間後にリムパック(環太平洋合同演習)が約3か月半に渡って行われるこの地は、軍・政府関係者及びその家族が数多く訪れ、ある種のお祭り騒ぎを呈していた。そして今年は、特に人々が多く訪れており、今までの中で最大規模の参加国であり、艦船及び車両、航空機があり、その為、各国のマスコミや軍事写真家、各企業の要人なども周辺諸島にも多く見られた。

 その喧騒の中、ある日本人家族も南国特有の暑さと湿気を全身に浴びて、国際空港の出入り口から出て来た。

 「それにしても暑いわね。二人とも大丈夫?」
とその家族の母親が二人の姉弟に心配そうに聞いてみた。
「「私は、(僕は)だいじょうぶだ(だよ)」」
姉弟は元気に返事をした。その家族の家の名は「円谷家」と「織斑家」であった。そう、一年前のあの日から紆余曲折あったが、今では、普通の家族同然に仲が良い家族体であった。

 「それにしても、父さんも今回はこの演習に参加するなんてねえ」
と。高嶺は、ぼやきながらも内心(海外旅行なんて久しぶり)と、とても嬉しそうな顔をしながら、照りつける太陽の下、帽子を被り直した。

 「それにしても一夏ちゃん、体調はどう?」
「うん、今の所大丈夫だよ。それにここに来る前に大目に栄養源を取ってきたし、もしもの時は、此処の回収施設から分けて貰うのも手だし」
と呆気らん、に言うと、高嶺は、
「それならいいけど、あまり無茶しないでよ」
と心配そうに言うと、今まで黙っていた姉の千冬が、
「大丈夫ですよ。母さん、そんな時は私が無理矢理でも止めさせますから」
と両手首包み込みながら、ボキッ、やら、バキッやら音を鳴らした。
「千冬姉、怖いよ」
と一夏は、素直に震えあがった。

「はい、はい、お終いにしましょうね?今日は早めに指定されたホテルに泊まるわよ」
といつも事の様に軽く二人をあしらいホテルに向かって歩き出した。




 「ふふふ、さあ、始めますか!」
と何処かで誰かが呟いた。
さて、ここから少し時間を戻していきたいと思う。

 2039年12月8日
 この日、日本国並びにEUの所属国の各湾内に突如として、第二次大戦時における戦艦、空母、軽重巡洋艦、駆逐艦、潜水艦、工作艦、補給艦などがそれぞれの国の所属ごとに突如として出現した。各国は、この現象を考慮したが、その各艦隊からの連絡があり、各国は、それ連絡に従い、人類初となる「意思を持つ艦達(これより「霧の艦隊」と呼称する)」とのファーストコンタクトが各国が成功し、此処に新たな同盟関係を結ぶことに成功した。
 その時に幾つかの艦隊と各国との約束事をそれぞれ交わした。
また、その時にただ、ごく一部の艦達は、自由気儘にあらゆる海域を航行していったが、日本及びEUなどを筆頭とした多くの国々がこれを認めた。(但し、アメリカは、自国の軍事力の崩壊を恐れ、反対した。それと現在も内乱状態の中国及び韓国領海内には一切近づく艦は無かった。)
そして、日本及びEU各国は、その艦隊からの情報提供及び技術交流が活発に行われた。また、交流の為に艦隊から「メンタルモデル」と呼ばれる者達が出現し、より活発な交流が進められた。

 そして、2041年 ハワイ州オアフ島

 高嶺に率いられ、ホテルに向かった一夏とほぼ同時刻にオアフ島内の湾に設けられた「霧の艦隊」専用の停泊地にある団体がオアフ地に足を付けた。

 「ふう、久しぶりに地に足を付けたなあ。なぁ、群像(ぐんぞう)もそう思うだろ」

橿原杏平(かしはら きょうへい)が、千早群像(ちはや)に聞いた。
「ああ、今まで、随分と海を旅してきたからな。うれしいか,杏平。そういえば、イオナは随分と久しぶりじゃないか」
「おおう、うれしいね。久しぶりに欲しいアニメDVDを買わないと!」
と杏平は、嬉しそうに財布を取り出しながら、某有名アニメショップに向かった。
「やれやれ、艦長はこれから如何するんですか?」
と織部僧(おりべ そう)はマスクの中から声を出した。
「ああ、暫くこの辺を出歩くつもりだ。後は、皆自由に行動してくれていいぞ」
と返答した。
「なら、新しい服買わないと!」
と八月一日静(ほずみ しずか)は、 四月一日いおり(わたぬき いおり)の手を掴むと、走りながらショッピングモール地へと向かった。
「群像、私は一緒について行く...」
と次の言葉を言おうとした所、突如
「お姉さま~、ヒュウガも一緒に行きます~」
とイオナにヒュウガが飛びつき、頬擦りした。
「群像様~、私もご一緒にお願いします~」
とタカオが岸辺に降り立ちながら近付いてきた。

 此処に集まった、イオナ,ヒュウガ、タカオと呼ばれる少女たちは、「メンタルモデル」であり、それぞれ、伊号401、戦艦日向,重巡高雄と呼ばれる霧の艦隊の一隻であった。

 さて、群像たちが町の方に歩き出して行った。

 さて、ここハワイ州オアフ島には、企業関係者も多数出席する為に専用のエリアが設けられていた。その中には、某有名会社も国際色豊かにあったが、それぞれがそれぞれも思惑が交差していた。もちろん裏社会の人達も集まってきており、リムパック前に各国の企業、裏社会間のスパイ,抗争合戦が繰り広げられていた。

 そんな中、D&Aindustry(Dunois AND Alcott industry(日本名 デュノア & オルコット インダストリー))のイギリス・アメリカ方面代表取締役であるマクレーン・オルコットとその愛娘である、セシリア・オルコットとその専属メイド2名と共にプライベートジェットでオアフの地に降り立った。

 「お父様、今回はどのような用事で私と一緒に来てますの?」
と幼いセシリアが父に聞いてみた。すると父は、優しくセシリアの髪を撫でながら、
「ああ、この地で新しいビジネスを始めようと思ってね。その視察が表向きだが、本当は、久しぶりに二人でのんびりと旅行したいからな」
と優しい笑みが太陽に反射して輝いていた。すると、メイドの一人が
「ええ~、マヤもセシリアと遊びたい」
と、赤ずきん風のメイド服を着た少女が、ごね始めたがもう一人の眼鏡を掛けた本格的なメイド服を着た女性が、
「こら、マヤ。はしたないですよ。私たちは、オルコット様の護衛も兼ねているのですよ」と掛けていた眼鏡の弦をクイッと挙げて、怪訝そうな声をかけた。
「ありがとう、レパルス、マヤ。でも、おまえたちもあまり無茶をせず楽しんでほしいんだよ。それに、他にも来ているんだよね」
とマクレーンは、メイドの二人に感謝を述べた後、優しく聞いた。
「さすが、旦那様ですね。ええ、他にもヴァンが居ますよ」
と、レパルスは降参しました。という風に本音を言った。

 「お父様、迎えの車が来ましたよ。早く乗り込みましょうよ」
とセシリアが小走りに迎えの車に向かっていく中、マヤが、
「ああ~、待って下さいよ~。お嬢様」
と追従するようにマヤも小走りに向かっていった。
「やれやれ、お転婆に育ってくれたなあ、わが娘は。さて、迎えを待たせては不味い。では行くとしようか。レパルス」
「はい、旦那様」
と優しい慈愛に満ちた笑みを浮かべながら、レパルスと並んで送迎車に歩み寄った。
 此処で補足するが、此処に出て来た。マヤ、レパルス、ヴァンの三人は、それぞれ、高雄型3番艦摩耶、レナウン級2番艦レパルスであり、霧の艦隊のメンタルモデルである。但し、ヴァンは正式名称アドミラルティV級一番艦である『ヴァンパイア』である。
 
 其々の立場の人たちが、其々の宿泊場所に宛がわれたホテルに向かい、今夜行われるそれぞれの立場の人が一堂に会い見えるレセプションパーティーに出席するための準備をしていた頃、ハワイ諸島沖合約10キロにある無人島に目を向けてみる。


 その島は、完全な無人島であり、元々米軍が射爆上にする予定だったが、その島には、ある種の強力な磁場を発する鉱石が多数埋積してあり、その影響は、軍民問わずの電子機器を混乱させるために、米軍すらも手が出せない状態だった為に手つかずのままに放置されていた。その島にある日本人が足を踏み入れていた。

 「へー、「天災」は、こんな処に居るんだ、ありがとう、『ミッドナイト・ギャオス』」
と木々の間の枝で休んでいた一匹の異形な鳥に少女が話しかけた。そう、この「ギャオス」と言われた鳥は昨年、姫神島の住人を捕食した後に生まれた第二世代ギャオスの一匹であった。

 「ミッドナイト・ギャオス」と言われた怪鳥の特徴は、大きく分けて3つあった。
 1つ目は、何と言っても第一世代よりも格段に大きくなった目と鼻と耳であった。其の目に見える範囲は、日本の東京の中心からほぼ関東一円を詳細まで見分けること出来る。また、昼夜問わずという事も挙げられる。また、耳の聴覚も同様であり、日常的な会話などは、普通に聞こえることも挙げられ、鼻の嗅覚は、犬や猫よりも多様劣るくらいである。
 2つ目は、背中の背骨に沿って、巨大な突起物であった。その突起物から、あらゆる電波・電子機器内のあらゆる波長(一部例外あり)に対してのジャミングと盗聴をほぼ同時に行える。範囲は、大体15キロから20キロ半径である。
3つ目は、これらを自在に扱える為に、脳が背骨の中間にもう一つあると言う事である。その処理速度は、人間2~3人の最大処理(一応人間の脳は、ある種のリミッターがあり、それを外すことでスパコン以上になるとされています。)速度を優に超える。

 暫く、少女が歩いていると、開けた場所が現れ、そこに目当ての女性がいた。
「今日は、「篠乃之 束」さん。」
とニッコリと少女は挨拶したが、本人は、
「誰かね、話しかけてもらえないかな~。邪魔だよ、死んでほしいな」
と此方を見ずに,強烈な言葉を吐いた。
「家、出来れば此方を見て欲しいのですが」
と言うと、「仕方ないな~」という風に束が顔を向けた。

 そこには、常夏の島には合わない高校の制服に身を包んだ少女がいた。
「どうも、初めまして。私の名前は、「園田 海未(そのだ うみ)」と申します。音ノ木坂学院の2年です。どうぞお見知りおきを」
と黒いロングヘヤーと制服を靡かせながら、お辞儀をした。
「で、何の用?」
と余り興味が湧かない束は,面倒臭そうに聞いてみた。
「いえ、すぐに終わらせますから手間を掛けませんよ」
と言った瞬間だった。

 制服がだった物が突然変化した。いや、元々制服に偽装を解除したという方が良いかも知れない。それは、長く太い2対の触手の間の膜だった物であり、それが仕舞われた後に、全くの違った身体を見せていた。

 
 背中から2本ずつ計4本生えている伸縮自在の触手、両腕の鋭利な槍状の手甲、部分的に発光する胴体、背面の四枚の翼状の突起などの特徴があった。

 「おおう、たまげたね。束ちゃん驚いちゃった。でもその身体、本当にあなたなの?」
とあまり驚いたという雰囲気はなく,逆に質問した。
「ふーん、やっぱりばれちゃったか。さすが、天災」
と園田が言いながら、園田だった物から本物に移り変わった。髪が短く、淡い水色になり、本物の「更識 簪」に変化した。

 「やはり、一年前に襲った沖縄の修学旅行生達の何人かのDNAを取り込んだけれど、やはりばれましたか、残念です。しかしながら、あの学生たちの怯え顔は良かったですね。特に、生徒会とか言われる3人はすごく良かったですね。そして、美味しく戴けました。ああ、心配せずとも、残り物はちゃんと残さず綺麗にしましたよ」
とウットリとしながら簪は喋った。

 「それで用件は何かな?」
と今までの簪の言葉を無視するかの如く束は聞いた。
「はい、貴女のDNAを貰おうと思いましたが、どうもあなたの中に特殊な機械が入って入るようですし止めました。でも貴女には、居ては困りますから死んでください」
と言うや、鋭利な槍のような触手を射出した。
 此処に、天災vs邪神の火ぶたが切られた。
 
  
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