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俺はやはり間違った選択をした

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そこで俺と彼女は出会う

「おい、羽武谷起きろ。もう部室の前に着いたぞ」

糸井先生の声に起こされ俺は目を覚ます

「いってぇ……なんで気絶させたんですか」

俺は目を細くして訴える

だが俺の質問に対して糸井先生は嬉しそうに頬を緩ませた

「君は屁理屈ばかり言って部室にいくことを拒否しようとしただろうからな。気絶してもらった」

この人頭おかしいよ……絶対おかしい

生徒を気絶させるとか完璧に体罰の域を超えて暴力になっているよな

だって生徒が言うことを聞きそうにないので気絶させましただぞ!

俺がチクリでもしたら糸井先生は何回刑務所にぶち込まれればいいんだよ

まぁ糸井先生と俺の仲だし甘んじて受け入れてしまっているが危ない気がする

主に俺の命が……

「はぁ、もういいです。で、これが部室ですか?」

「ああ、そうだ。さっそく中に入ろう」

そういって糸井先生はつかつか中に入って行ってしまう

俺もすぐさまそのあとを追いかけると聞いたことのない声が聞こえてきた

「糸井先生、ノックをしてもらえるよう以前お願いしたはずなのですが」

「君はノックをしてもすぐに返事をしないからな」

「それは先生がすぐにドアを開けてしまうからです」

少女は糸井先生に向かって不満そうな視線を送る

「それでそのぼーっとした人は?」

彼女の冷めた瞳がこちらをちらと見た

俺はこの少女、早乙女(さおとめ)雪乃(ゆきの)を知っている

長い黒髪をなびかせ透けるように白く綺麗な肌、まるで見られたものを凍てつかせるのではないかという鋭く冷たい目

彼女はB組に所属する幻の6人目と言われている

そして実力テスト、定期テストで常に1位に鎮座する成績優秀者

そのこと以外はあまり知らない、そもそも他のクラスとの繋がりがない俺にとっては情報の入りようが無いのである

さっき説明したものだってたまたま耳に入ってきた情報だ

「彼は羽武谷、入部を希望する者だ」

俺は糸井先生に促され軽く会釈する、どうやらこのまま挨拶する流れなのだろう

「2年A組 羽武谷式です。えーと、おい入部ってなんだよ」

そもそも入部を希望する者ってなんだよ、世界を破滅させる者の別称かよ

確かに俺は色んなものを破滅させてるけどさ……

それに俺は入部するなんて言った覚えが無い

俺の言葉の続きを察してくれたようで糸井先生が口を開いた

「君には今日からこの部活に所属してもらう。異論反論抗議などは一切受け付けない、少し人とうまくやることを覚えなさい」

俺の反論する時間も与えない速さで糸井先生は早口でまくしたてる

「というわけだ。目を見ればわかると思うが彼はなかなか根性が腐っている、そのせいでいつも孤独な哀れ奴だ」

やっぱり目を見ただけでわかるのね……

「人との付き合い方を学べば少しはまともになると思う。彼をここにおいてやってくれ、そして腐った目と根性の更生が私の依頼だ」

糸井先生が早乙女に向きなおって言うと、早乙女はめんどくさそうに口を開いた

「それなら、先生がご自分で指導なさった方が早いのでは?」

いや、それはやめてください

「私だってできるならそうしたいところだが、この頃はそういうのにうるさくてな。手を出そうにも出せないんだ」

……まるで俺への暴力は正当と言っているような

「お断りします。この男の下品で低俗な視線は身の危険を感じます」

早乙女は別に乱れてもいない襟元を掻き合わせ2歩、3歩後ずさる

「安心したまえ。根性と目が腐っているだけあって彼のリスクリターンの計算力は大したものだ、決して刑事罰に問われることはしない。彼の小悪党ぶりは信用してくれ」

「何一つ褒められてないんですが……違うでしょう?、ちゃんとした判断ができると言ってほしいんですが」

「小悪党……。なるほど……」

「勝手に納得してるし……」

糸井先生の説得が効いたのか、はたまた俺の小悪党ぶりが信用されたのか早乙女は結論をだす

「まぁ、先生の依頼ですし無下にもできません。……承りました」

早乙女が本っ当に嫌そうに言うと糸井先生は嬉しそうにほほ笑む

「そうか。なら後のことは頼む」

それだけ言うと糸井先生は部屋から出て行ってしまう

早乙女はそのまま本を読み始めてしまう

ぽつんと取り残される俺

普通の男子だったら美少女と部屋で二人っきりでドキドキしてラブコメ的な展開に期待するのだろうが俺はその手には乗らないぞ

訓練されたボッチにそんな攻撃は効かん!

2度とあんな思いをしないように俺は今まで努力をしてきたのだ

ラブコメ展開に巻き込まれないためには嫌われてしまうのが一番早い

自らのプライドを守るためには好感度など必要ないのだっ!

「そんなとこに突っ立ってないでどこか座ったら?目障りだわ」

「え、あ、はい。すみません」

急に話しかけんなよ、びっくりして謝っちゃったじゃねぇか

それになんですかその汚物を見るような目は、その勝ち誇ったような目は

なんか傷つくんですけど……

それはともかく俺は後ろに積んであった椅子を一つ取り出し早乙女とは長机一つ挟んだところに座った

はぁ、とため息を吐く

どうしたものかと早乙女を見る

こんな風におとなしく本を読んでいればそれなりに可愛く見える

俺はこの美少女と何をしろというのだ

「何か?」

俺が見すぎていたせいもあってか早乙女は不機嫌そうにこちらに目をやる

「ああ、悪い。どうしたものかと思ってな」

「何が?」

「いや、だってろくにこの部活の説明受けてねぇしわけわからんままここに連れてこられたもんだから」

俺がそういうと舌打ちのかわりなのか不機嫌さを露わにして本をぱたんと閉じて机に置く

「ボランティアって言葉を知っているかしら?」

なんで俺はそんな蔑むような目で見られなくちゃいけないんですかね

そんなに俺と話をすることが苦痛なんですか

「そんなことぐらい知ってる」

「そう、てっきりそれすらも知らないのかと思って焦ったわ」

「俺は何も知らない無能な前提なのかよ……」

「あら?自覚があったのね」

こいつ本当にむかつく、顔その他諸々はいいのにここまで人を見下してくるとは……ガンジーのような心を持つ俺でも流石に怒るぞ

あ、でもガンジーって息子のこと殴ってたんだっけ?意外とキレやすいのかな?

「それでそのボランティアがどうしたんだよ」

早乙女は立ち上がり顎に手を添える

必然的に彼女の目線は変わり、俺は上から見下ろされる形となる

「持つものが持たざる者に慈悲の心をもってこれを与える。人はそれをボランティアと呼ぶわ、今私がこうしてあなたと話しているように」

早乙女はにっこり俺に微笑みかけた

普通の一般男子なら恋に落ちているところだが俺は違う!

あの一見かわいい笑顔の裏には俺を小馬鹿にした禍々しいドロドロとしたものがあるに違いない


理由は俺

小学五年のころ俺にすごく微笑んできてくれる子がいた

それを理由に「これって俺のこと好きなんじゃね?!」と思いメールをしてみたのだ

次の日俺が学校に来るとメールを送ったことはクラス全員に知られていて裏であることないこと言われついたあだ名が「キモガヤ」だった

別にただ普通のメールだったのだ

それなのに憶測で話をした馬鹿が勝手に広めたのだろう

今でも思い出すだけで、布団を被って「うわああぁぁー」ってしたくなる

俺がバッドトリップしていると早乙女は話を続けた

「困っている人に手を差し伸べる、それがこの部活の活動よ」

まるで高らかに宣言するように俺を見る早乙女

「ようこそ相談補助部へ、歓迎するわ」

まったくもって歓迎されてるように聞こえないことを面と向かって言われて俺は泣きそうになる

こうして俺の相談補助部としての日々が始まってしまった
 
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