| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ソードアート・オンライン ~白の剣士~

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

祈る者

「お兄ちゃんとシオンくんなかなか映らないねー」

「ほんとですねキリトさんとシオンさんことだから、てっきり最初から飛ばしまくると思ったのに」

「そうだねぇ。シオンとか特に、ね」

「アイツはスイッチ入ったら止まらないからねぇ・・・」

リーファ、シリカ、エリーシャ、リズは立て続けにそう言うと、後ろからクラインが付け足した。

「いやいや、ヤローはああ見えて計算高ぇからな。参加者がテキトーに減るまで、どっかに隠れてる気かもよ?」

クラインがそう言うとリーファたちと並んでソファに掛けていたアスナは苦笑しながら答えた。

「いくらキリトくんたちでもそこまでしないわよ。たぶん・・・」

するとアスナの肩に乗るユイが羽をぱたぱたさせながら言った。

「そーですよ、パパとにぃにならきっと、カメラに映る暇もないほど一瞬でフイウチしまくりです!」

「あっはは、それはありそうね。しかもキリトにいたっては銃じゃなくて剣でね」

ユイの言ったことにリズは笑いながらかえした。
画面には複数の戦闘が中継されているが、中央にはペイルライダーとダインの戦闘が中継されていた。
優勢なペイルライダーを見てリズは指を指しながら言った。

「おー、あの人強いねー」

「うん、地形と自分のスペックを最大限に活かしてる」

そう言っている最中にペイルライダーとダインの決着はペイルライダーの勝利という形で終わってしまい、ダインには【DEAD】のエフェクトが表示された。
しかし、それからすぐにペイルライダーはばったりと倒れ混み、右肩には電磁パルス弾が撃ち込まれていた。

「何アレ・・・?」

「まるで風魔法の《封電網(サンダーウェブ)》みたい・・・」

カメラの視点がペイルライダーに切り替わると視線の先には黒いぼろマントを纏ったプレイヤーが近づいているのが分かった。
ペイルライダーの目の前に立つと、ぼろマントはペイルライダーに拳銃を向ける。
引き金を引こうとしたその時、ぼろマントの手に何かが当たったように見えた。直後、画面は黒煙とノイズに包まれた。

「ちょッ、何!?」

「あれは・・・プラズマグレネードという携帯武器ですね」

「グレネードって、んなもん何処から?」

「ッ!あそこです!!」

シリカが指差した先にはアングルが切り替わったモニターに映る一人のプレイヤーが立っていた。
白髪に紅と蒼のオッドアイ、その容姿はまさしく皆が知っている者だった。

「シオン・・・!?」

「シオンくん、まさかあそこから当てたの?」

「相変わらずとんでもないわね・・・」

「でも、何でしょう?シオンさん、険しい顔をしています・・・」

「いや、険しいっていうより・・・」

すると突然カウンターの方から声がした。

「怒ってるな、アレ・・・」

「シュタイナー・・・!」

「シュタイナーさん、怒ってるってどういう?」

「ああ、アスナは見たことないのか。シオンがキレたこと」

シュタイナーは画面に映るシオンを見ながら言った。

「シオンが本気でキレたことは恐らく2回。“ハーモニクス”の時と、あとは・・・“バーデン”と対峙したときだろうね」

「バーデンって《殺人鬼》の?」

《殺人鬼バーデン》───

かつてSAO時代に突如出現した無差別殺人鬼の名である。
フィールドに現れては無差別にPKを繰り返し、すぐに姿を消してしまう。
ついたあだ名が《霧のバーデン》
笑う棺桶と並ぶ最重要危険人物としてブラックリストに載っていた。

「でも、あいつは死んだって・・・」

「そう、彼は殺された。シオンの手によってね・・・」

「エッ・・・!?」

「彼と対峙したのは、ラフコフの討伐任務があったときだ。最悪なことに彼はラフコフと手を組んでいてね、シオンは彼と剣を交えることとなった。その時だったよ、シオンが本気でキレたのは・・・」

「わたしも、シオンが本気で怒ったのはあの時初めて見た。エリーシャちゃんはあの場には居なかったけど・・・」

アスナは険しい顔でそう言った。

「でも、あの時何か話してた気がする・・・」

「僕もそれは見たよ。そして直後、シオンは我を忘れる勢いで怒りを露にした」

瞳は赤く染まり、黒い髪は白へと染まる。黒い(いかづち)を走らせ、バーデンに襲いかかった。
その姿はまさしく───

「獣のそれだったよ・・・」

「獣・・・」

「これは非公式だがシオンは“白の剣士”以外にも密かに別の名前で呼ばれていたんだ」

「それって・・・」

「“鬼神”、それがシオンのもう一つの名前だ・・・」

シュタイナーの言葉にその場にいたものは皆息を飲む。
エリーシャは再び画面に映るシオンを心配そうに見る。

『シオン、大丈夫だよね・・・?』

シオンとぼろマントの戦闘は終盤を迎え、シオンはぼろマント相手に近接戦で挑んだ。

「何あれッ・・・!」

「成る程。シオンの奴、アレを使ったか・・・」

「アレって?」

シュタイナーの意味深な言葉にリーファが反応する。

「以前、というかALOの時から教えていた体術だよ。ここ半年くらいね」

そう言っている間にぼろマントはその場から姿を消し、別の戦闘に切り替わった。

「あ、終わった・・・」

「どうやら今回は大きな進展は無かったようだね」

シュタイナーはカウンターから出てくるとウインドウを開いた。しばらく操作していると、シュタイナーの手がふと止まった。

「成る程、そういうことか・・・」

「シュタイナー?」

「どうやら、事はそう簡単な状況じゃないらしい」

そう言ってシュタイナーはその場にいる全員にメッセージを飛ばした。内容は先程のぼろマントをアップで撮った画像。それを見たアスナたちは目を疑った。

「お、おいッ!これッ!?」

「この、マークって・・・」

「これは、僕たちが思っている以上に深刻な状況かもしれない」

皆の目の前に表示されているぼろマントの画像、彼の手首には《笑う棺桶(ラフィンコフィン)》のタトゥーが刻まれていた。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

都市廃墟から北に数キロ離れた砂漠エリア。
シオンとアリアはバギーを乗り捨て、キリトたちと合流していた。
今は衛星スキャンを避けられる洞窟に立てこもっている。

「キリト、アリア。少し外で見張っていてくれないか?」

「分かった」

「敵が来たら知らせるわ」

そう言って二人は洞窟入り口で待機した。
洞窟に残ったシノンはシオンにある疑問を投げかけた。

「ねぇ、どうやって私を助けたの?」

「どうやって?」

「あの距離からどうやって私のところまで短時間で来れたの?」

「ああ、その事か。答えは簡単だ、ビルからビルからへと跳び移って最短コースで来た。下にいたら俺が到着する前に撃たれていたからな、まあ俺が間に合わなくてもキリトが何とかしただろうがな・・・」

「アイツは倒せたの?」

その質問にシオンは否定の意味で首を振った。

「いや、正直俺一人で倒せる相手じゃない。今回は引いたが、次に真正面で戦ったら勝てるかどうか・・・」

「なら、どうして私を助けたの?」

シノンは理解できなかった。勝率が低いにも関わらず危険を犯してまで自分を助けた理由が、普通ならライバルが減ることはありがたいことなのに───
彼は自分の命よりも他人の命を優先したのだ、その行動に彼女自身理由できなかった。

「どうして、か・・・。似てるんだよ、何年か前に助けた女の子に」

「えっ・・・?」

「五年前だったか、俺はその日部活が休みでな。家に帰ろうと思って帰り道を歩いてたら、近くの公園で女の子が虐められてたんだ。俺はすぐに止めさせてその子供たちを追っ払った。虐められてた女の子はお前と同じことを言ってたよ、『どうして助けてくれたの?』って・・・」

シオンは遠い記憶を思い出す、それと同時にシノンもまた、思い出していた。

「五年前・・・」

「さて、俺はもう行こうかな」

シオンは立ち上がりウインドウで残弾数を確認する。

「行くって、まさか死銃のところに・・・?」

「これ以上誰かを死なせるわけにはいかないからな」

「なら、私も・・・」

シノンも着いていこうとするがシオンは無言で彼女を止める。

「いや、シノンはここにいてくれ。この砂漠エリアはお前のようなスナイパーには愛称が悪い。リスクは俺の比じゃないぞ」

「死んでも、構わない」

「何ッ?」

「私、さっき、凄く怖かった。死ぬのが恐ろしかった。五年前の私よりも弱くなって・・・情けなく、こんなんじゃダメなの。そんな私のまま行き続けるくらいなら、死んだほうがいい」

「お前、それ本気で言ってるのか?」

シオンの言葉にシノンは俯いたまま答える。

「嫌なの、怖いのは。もう怯えて生きるのは・・・疲れた。別に、あなたに付き合ってくれなんて言わない。一人でも戦えるから」

「一人で死ぬつもりか?」

「そう。それが、私の運命だったんだ・・・」

彼女は求めていたのかもしれない、自分を罰してくれる存在を。その罪を咎めてくれる存在を───
しかし、それを“死”というもので償おうとしている彼女を許さない存在がいた。

「待てよ」

「離して、私はもう・・・」

シノンが言いかけた次の瞬間、シオンは勢いよく彼女を壁に叩きつけた。

「ガハッ!何、するのよッ・・・!?」

「それはこっちの台詞だ。一人で行って、一人で死ぬ?ふざけたこと言ってんじゃねーよ!!」

シオンはシノンのマフラーを掴んだまま離さない、むしろより力がこもる。

「一人でも戦えるとか言ってる奴がさっきからガタガタ震えてんじゃねぇ!!そんな戯言は一人前になってから言いやがれ!!」

「ッ!なら・・・!」

今度はシノンがシオンの胸ぐらを掴み、叫んだ。

「なら、あなたが私を一生守ってよ!!」

叫びと同時に涙が溢れる、シオンに全てをぶつける。

「何も知らないくせに・・・何もできないくせに、勝手なこと言わないで!!これは、私の、私だけの戦いなのよ!たとえ負けて死んでも、誰にも私を責める権利なんかない!!それとも、、あなたが一緒に背負ってくれるの!?この・・・この、ひ、人殺しの手を・・・」

シノンは叩きつけていた拳を震えながら見つめる。
かつて血で汚したその手を───

「あなたが握ってくれるの!?」

「・・・・・」

シオンは彼女の心の叫びをただひたすら聞いた。何度も打ち付けられる拳、耳を刺すような叫び、その瞳から溢れ出る涙。
彼はその全てを聞き、見届けた。

『やっぱり、こいつは・・・』

洞窟内は暫く彼女の泣き叫ぶ声が響き渡った───

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

あれからどのくらいたっただろうか・・・シノンはすでに泣き止み、今はシオンに顔を(うず)めている。

「私ね・・・、人を、殺したの」

「それは、五年前の話か?」

シノンは肯定し続けた。

「そう、五年前、東北の小さな街の郵便局で起きた強盗事件。報道では犯人が局員の一人を撃って、自分は銃の暴発で死んだってことになってたんだけど、実際はそうじゃないの。その場にいた私が強盗の拳銃を奪って、撃ち殺した・・・。私は11歳だった・・・もしかしたら、子供だからそんなことが出来たのかもね。そのときに負った傷はすぐに治ったけど・・・治らないものもあった」

『心、か・・・』

「私、それからずっと、銃を見ると吐いたり倒れたりしちゃうんだ。銃を見ると、目の前に殺したときのあの男の顔が浮かんできて・・・怖いの、すごく・・・」

「ただし、この仮想世界だけは別だった・・・」

シオンは徐に口を開き、その言葉にシノンは頷いた。

「だから私は思ったんだ。この世界でいちばん強くなれたら、きっと現実の私も強くなれる。あの記憶を忘れることができるって。なのに・・・さっき死銃に襲われたとき、発作が起きそうになって、すごく・・・怖かった・・・」

シノンが言い終わると、シオンも一呼吸置いてから言った。

「俺も・・・」

「?」

「俺も、人を殺したことがある・・・」

「えっ・・・」

「たぶん、お前より多くの人間を殺した。《ソードアート・オンライン》というゲームの中でな・・“」

その言葉にシノンは一昨年から去年にかけて騒ぎとなった呪われたVRMMOのタイトルを思い出した。

「俺とキリトはそこで生き抜いた、いわば《SAO生還者(サバイバー)》ってやつだ。勿論、その死銃もな・・・」

「そいつとは・・・」

「戦ったよ。無論、命の取り合いをな・・・。結果は、まぁ横槍が入ってそれっきりだが、あのまま続けてたら、俺が負けていた・・・」

「・・・・・」

シノンはその事実に言葉が出なかった。しかし、次にシオンが発した言葉はそれを超えていた。

「俺は多くの人間をそこで殺し、あげくの果てには“自分自身を殺した”」

「自分を・・・殺した・・・!?」

「信じられないのも無理ないか。俺は、一人の男を殺すために、“全てを賭け”、“己を捨てた”・・・」

シオンの頭には遥か昔、剣を交え、自分の手で殺した殺人鬼が過っていた。

「そいつに言われたよ、『お前じゃ誰も守れない。目の前で仲間が無惨に死んでいく様を見るだけだ』ってな。今考えてみれば全くその通りだったよ・・・」

「でも、あなたは私を・・・」

シオンは首を横に振り、「あれは運が良かった」とだけ言って、小石を投げた。

「俺は、“夜叉”や“鬼”になれても“ヒーロー”にはなれない・・・。」

「シオ・・・」

「だから俺は・・・俺の周りにいるやつらを護れる守護者になろうって思った」

「守護者・・・?」

シオンは頷くと更に続けた。

「“半径3m以内に大切なものは全部ある”」

「えっ・・・?」

「偉大な先人の言葉だ。大切なものは、意外と近くにあるもんなんだって」

「大切な、もの・・・」

「“仲間”───勿論お前もその一人だ、シノン」

「私も・・・?」

シノンが聞くと、シオンは肯定した後立ち上がり、シノンの正面に回った。

「俺が大切だって思うものは全部俺の領域の中だ。誰にも傷つけさせはしない」

「・・・・・」

「安心しろ、お前が本気で殺されそうになったら護ってやる。俺が、“俺たち”が!」

「シオン!」

監視をしていたキリトとアリアが衛星スキャンを終えて戻ってきた。
シオンは待っていたかのように二人に言った。

「状況は?」

「残りは私たちを含んで6人、死銃と闇風、あとは私たちよ」

「殺されたのは?」

「・・・ペイルライダーと、更に一人」

「そうか・・・」

シオンは立ち上がると、三人に告げた。

「お前ら、ここから先は命を懸けた闘いだ。一つのミスも許されない、だから聞く。“最後まで、生きることを諦めないでいられる自信はあるか?”」

「「「ッ・・・!」」」

それを言ったシオンの目を見て三人は息を飲む。

「シオン・・・」

「俺には過去(あと)も、未来(さき)も変えられない。一人じゃ何も変えられない・・・だから!」

シオンは額を地面に叩きつける。

「俺に!“今を変える力を貸してくれ!!”」

シノンは彼の信念を、心を感じ取った。
真っ直ぐで、諦めが悪くて、説教するし、心を見透かされたような口を利く。
まるで五年前、私を助けたあの人(・・・)のように───

『いや、だからこそ、私は・・・』

憧れたのだ、その・・・心の強さに───

「そう言うってことは、何か策があるってことだよね?」

「アリア・・・」

「とことん付き合ってやるよ、シオン!」

「キリト・・・。あぁ、ある!」

キリトとアリアが同意する中、シノンは静かに立ち上がった。

「シノン・・・」

「私はあなたほどアイツに立ち向かえない、心も強くない。でも、私はこんなところで死ぬわけにはいかない!!」

その言葉にシオンはニヤッとする。

「・・・上等ッ!」

「それで、どうするんだ?」

キリトの問いにシオンは・・・

「あぁ、まずは・・・」

シオンが提示した作戦は皆の表情を変える。

「お前、正気か!?」

「今さらまともな作戦言えるかよ?」

「でも、これ・・・」

「失敗すれば・・・」

「あぁ、失敗すれば・・・俺たちの敗けだ」

失敗すれば、彼らの負け。しかし───

「だが、やるしかない・・・」

「そうね、これしかない」

「でも、確率は限りなく低い・・・」

「そうだな、だが・・・。可能性はある」

キリトたちはその言葉に苦笑いする。

「まったく、毎度毎度。だけどよ・・・」

「その言葉に、賭けてみたくなるのよね♪」

「あなたのことはよく分からない。でも、託すわよ。あなたに・・・!」

キリトたちの一言にシオンは何故か笑みが溢れる。

「オーケー。そんじゃあ、いっちょ!」

シオンは拳を叩くと、いつものように───

「敵さんをぶっ飛ばしに行こうか!!」 
 

 
後書き
はい、あけおめです!!
新年一発目の投稿です!!

2015年もよろしくお願いします!!

ではでは~三( ゜∀゜)ノシ 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧