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三色すみれ

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第八章


第八章

「わかったらね」
「どっちがいいの?」
「どっちでもいいさ」
 男組はそう彼女達に述べた。
「どうせよ、おごるんだったら」
「何でもいいさ」
「センスあるじゃない」
 その中心人物は彼等の潔さを見てそう言うのだった。
「これがセンスなのかよ」
「そうよ。センスってのは潔さも重要なのよ」
 こう主張してみせる。
「わかったかしら」
「何か適当なこと言ってねえか?」
「なあ」
 少なくとも男組にはそう聞こえる。そしてそれは正解だった。
「結局あれだろ?女の子にいいムードにできるかどうか」
「それだけだよな」
「何だ、わかってるじゃない」
 しかも女組も堂々とそれを認めるのであった。開き直りに近い。
「わかっていたら勉強する」
「そしてその前にね」
「わかってるさ」
「じゃあ好きなの選べよ」
 そう女組に言葉を言い返す。
「どんなのでもいいからよ」
「ただしラーメンかハンバーガーだけな」
「それじゃあチャーシュー麺ね」
「私はダブルマック」
 女組もそれを受けて好き勝手に言い出す。実に心地よい笑顔で。
「私はわかってるわよね」
「ああ、当然な」
「ビックマックだろ」
 男達はその昌子に対して言うのだった。
「全くよお」
「一番高くつくな」
「あら、授業料と思えば安いものよ」
 昭子はしれっとして述べる。
「これ位ね」
「そうよねえ」
「安くついて感謝しなさい」
 女組はまたしてもここぞとばかりに言う。やはりかなり勝手な調子である。
「ああ、わかったら」
「放課後ね」
「やれやれだぜ」
「シェークスピアの言う通りだな」
 誰かが言ったがシェークスピアは何かと女性というものに対して勝手なことを書いている。それを知っているからこその皮肉まいた言葉であった。
 だがその間も遼平と真琴は抱き合っている。というよりは真琴がずっと遼平を抱き締めたままなのであった。
 遼平はそんな真琴に対して言った。
「あのさ」
「何だ?」
 真琴はその彼に応えてきた。
「何か用か」
「何時までこうしているの?」
 彼はそう真琴に問うた。
「何時までとは。何がだ?」
「だからさ」
 遼平は彼女の言葉を受けてまた言う。
「こうして抱き合っているの。何時までなの?」
「暫くの間だ」
 真琴はそう述べた。
「わかったな、暫くの間だけだ」
「けれどさ。その暫くって」
 遼平はまた彼女に言い返す。
「何時までなのかな」
「それを聞きたいのか」
「だって」
 遼平の声がかなり弱ったものになっていた。
 
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