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インフィニット・ストラトス ―蒼炎の大鴉―

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学年別トーナメント

6月末、学年別トーナメントの日がきた。

デルタカイ、打鉄弐式は共に万全。俺と簪のコンディションも良好だ。

これならどんな相手でもやれる。

今、俺と簪はアリーナの通路にいる。なんでも父さんが来ているらしい。まぁ、父さんは俺のスポンサーで父親だし、それに簪に投資しているから当然と言えば当然だが

「和也か?」

後ろから話しかけられる。振り向くと父さんがいた。

「社長、久しぶりです」

「今は父親として話しかけたんだ。敬語はいい」

私生活では親子の会話で敬語はNG、それが俺と父さんの取り決めだった。

「和也、学校生活はどうだ?」

「良好だよ。それと前の中間試験、全教科満点だった」

「それは私も知ってるよ。結果はこっちに郵送されたからな。流石はお前といったところだ。頑張ってるじゃないか」

「社長を継ぐんだ。これくらい当たり前さ。それに卒業したらと東大に行くんだ。勉強しないと主席になれない」

「まったく、お前は勤勉だな。私も東大卒だが、順位は中の上くらいだったぞ」

「父さんがどうだったとかは関係ないさ。これは俺なりの覚悟だよ」

「まぁ、お前の好きなようにやれ。それより、彼女は出来たか?こんだけ周りに女子が居れば出来てもおかしくないが」

「父さんの目の前にいるだろ」

俺がそう言うと、父さんは隣にいる簪を見る。

「簪さんかい?」

「そうだよ。つい最近付き合いはじめたんだ」

ちなみに父さんと簪は面識がある。

「簪さん、息子がお世話になっております」

父さんは頭を深々と下げる。

「あ、いや…世話になっているのは私の方で…」

簪は慌てふためいている。そりゃあまぁ、顔見知りとは言え社員243658人の航空機メーカーの社長が深々と頭を下げたら普通は驚くわな。

「こんな愚息ですが、どうか愛想を尽かさないでください」

「…はい!」

「和也、いい女性を見つけたな。今時あんな女性はそうそういないぞ」

「だろう?」

「まぁ、元気でなりよりだ。それじゃあ私は社長としてやることがあるから、ここで失礼するよ」

「ああ。それと今日のトーナメント、俺も出るから見てくれよ」

「わかってるよ」

それだけ言って父さんは来賓用の観客席(所謂VIPルーム)に行った。

時計を見ると、俺たちの試合まで後15分だった。

「そろそろ準備した方がいいな」

「…うん…」

俺と簪はそれぞれの更衣室に行く。

更衣室に入ってから俺は服を脱いで簡単に畳み、ロッカーに収めた。時間としては2分とかかってないだろう。

俺が更衣室から出て約1分後に簪が合流、俺たちはピットに入った。

「作戦だが、俺が前衛で撹乱し、簪はミサイルとビームライフルで仕留める、それでいいな?」

「…うん…」

「まぁ、俺も普通に攻撃するし、攻撃を完全に任せるわけじゃない。お前の好きなように動けばいいさ」

今回の試合でするべきことは3つ。1つは試合で勝つこと。2つ目にデルタカイの性能を知らしめ、レイヴン社のデモンストレーションをすること。最後に打鉄弐式の稼働データの獲得だ。

俺たちの番がくる。

「行こう、簪」

「…うん!」

俺はデルタカイを、簪は打鉄弐式をそれぞれ展開し、ピットを出た。

相手は一般生徒2人、1機は打鉄、もう1機はリゼルだった。

「簪、俺がリゼルの相手をする。打鉄は任せた」

個人回線で簪に伝える。簪は頷いた。

来賓席を見ると父さんがいる。その視線は息子を見守る父親の目だった。

ヴーー

開始のブザーが鳴る。

俺はスラスターを吹かせ、一気にリゼルとの距離を詰める。

簪は前方にスラスターを吹かせてバックブーストし距離を取る。

接触はすぐだった。リゼルはビームサーベルを発振、切りかかってくる。それに対して俺はロングバレルのビームライフルを展開、銃口からロングビームサーベルを発振しつばぜり合いに持ち込む。

お互いの両腕がふさがっている。リゼルならこの状態で腕部グレネードが使える。

なら撃たせる前に殺るだけだ。

背部にマウントされた2基のプロトフィンファンネルを起動、相手の左右に展開し発射

散弾状のビームがリゼルに容赦なく降り注ぎ、大きな損傷を与える。このとき、シールドを貫通したビームがグレネードが格納された左腕のボックスを損壊させる。これでグレネードは使用できなくなった。

相手はあわてて距離を取る。だが、このデルタカイから逃げられるわけがない。

スラスターで上昇、相手の上をとり、飛び回りながらビームライフルで撃ち抜く。

次々に降り注ぐビームと実弾は瞬く間にリゼルのシールドエネルギーを0にした。

あと1機か

そのとき、試合終了を告げるブザーが鳴り響く。

―――――――――――――――――――

Side簪

和也くんが突撃を仕掛けて、リゼルを押さえてくれている。これならいける!

打鉄はブレードを展開、接近してくる。

ここでビームライフル、相手を牽制。相手は距離をとった。

この距離なら山嵐が使える

山嵐を作動、48基のミサイルが打鉄に降り注ぎ、多大な損傷を与える。

一気に決める

ビームサーベルを展開、ビーム刃を発振し、打鉄に切りかかる。

相手はブレードで防ごうとするが、刀身はビームの熱で熔け瞬く間に切り裂かれ、意味を成さない。

そのまま本体に2連撃、相手は停止した。

終わった。和也くんの方は…

そのとき、試合終了を告げるブザーが鳴り響く。

―――――――――――――――――――

「やったな、簪」

「…うん!」

そのまま俺と簪はピットに戻る。ISを解除し、ピットを出ると、父さんが待っていた。

「よくやった和也、簪さん」

父さんは俺は頭をワシャワシャと撫でる。若干髪型が崩れた。

「当然だよ。この機体で負けることなんてないさ」

「そうだな。それじゃあ私は来賓席に戻るよ。2回戦以降も頑張れよ」

「ああ」

「簪さん、息子をよろしくお願いします」

「…は、はい!」

父さんが人混みに紛れ、見えなくなる。

「簪、次は専用機持ち同士の試合らしいぞ。観に行くか」

「…うん…」

俺と簪は適当な席に座る。

「織斑か…。2ヶ月前は話にならないほど弱かったが…。それに転校組の能力も気になるところだ」

試合が始まる。

織斑がイグニッション・ブーストでボーデヴィッヒに接近、雪片弐型を降り下ろすが、止められる。

「あれは…、AICか…?」

「…そうだと思う」

動けない織斑にボーデヴィッヒのレールカノンが向けられる。

だが、ここでデュノアが割って入り、アサルトカノンで支援、砲口をずらさせる。

そこでボーデヴィッヒは後退、このとき、デュノアがアサルトライフルで追撃に入るが、篠ノ之がシールドを構えながら割って入り、切りかかる。

そこにAICから開放された織斑がデュノアと入れ替わりつばぜり合いに持ち込む。

数度の打ち合いで篠ノ之が劣勢になったところで、ショットガンを構えたデュノアが強襲、散弾を放つが回避された。

正確にはボーデヴィッヒがワイヤーを引っ掛け、篠ノ之を後方に投げ飛ばしたのだ。

ボーデヴィッヒは攻勢に入り、腕部のプラズマ手刀で連撃をしながらもデュノアをワイヤーで牽制。なるほど、ボーデヴィッヒは一対多数の戦い方を理解している。

ここでデュノアは攻撃対象を篠ノ之に変更、織斑は一対一になる。

織斑はひたすら接近戦を維持することに努めている。それでも織斑が劣勢なのは誰の目にも明らかだった。

そしてワイヤーによる攻撃で身動きがとれなくなり、そこにレールカノンが発射される。

だがデュノアが割って入り、実体シールドで砲弾を防ぎ、さらにワイヤーを切断する。

見ると篠ノ之は戦闘不能だ。

それを確認したのか、織斑は零落白夜を発動、ボーデヴィッヒめがけて直進した。

ボーデヴィッヒの牽制を掻い潜りながら、ついに接近するが、ここでAICが発動、動きが止まる。

そこにデュノアが接近、ショットガンの連射でレールカノンを破壊した。

体勢を崩れたボーデヴィッヒに織斑が接近する。しかし、ここで零落白夜が消失。受けたダメージが大きかったか…。

そこにプラズマ手刀を展開したボーデヴィッヒが切りかかる。とどめをさすつもりだろう。デュノアが援護に入るが、ワイヤーで止められる。

そしてプラズマ手刀が命中、白式とともに織斑は床へと落ちる。それでもまだ稼働状態ではあるのだろう。ボーデヴィッヒはさらに追撃をする。

しかし、デュノアがイグニッション・ブーストで突撃、データになかったのかボーデヴィッヒが一瞬狼狽する。それでも、ボーデヴィッヒはデュノアをAICで止めた。

しかし、このときボーデヴィッヒは無防備だった。

そんなボーデヴィッヒに銃弾が浴びせられる。織斑がデュノアが落としたアサルトライフルを拾って撃ったのだ。

体勢を崩すボーデヴィッヒ。そこにデュノアが接近、そして第二世代型最高の攻撃力を有する近接武器[グレー・スケール]こと69口径パイルバンカーが叩き付けられた。そしてさらに2発、機体から紫電が走り、強制解除の兆候をみせるが、突如異変が起きた。

泥のような黒い物体がボーデヴィッヒもろとも機体を飲み込み、全く別の姿に変える。それはさながら泥人形のようだ。

「まさか、ヴァルキリー・トレース・システムか…。なんてものを…」

「…………」

簪は無言だ。彼女とて初めて見たのだろう。アラスカ条約で禁止されたものだ。むしろ見たことのある方が異常だ。俺だって知識でしかその存在を知らない。

泥人形の突撃、斬撃で織斑は弾き飛ばされ白式は解除される。

退避のアナウンスが流れるが、織斑は引かない。

そして織斑はデュノアからエネルギーを受け取り(どうやったのかはわからない)雪片弐型と腕部だけを展開、泥人形に切りかかる。

泥人形から降り下ろされる斬撃を横凪ぎで防ぎ、続いて袈裟斬りを当てる。泥人形の切り口からボーデヴィッヒが崩れるように倒れ、出てくる。

織斑はボーデヴィッヒを抱えて何かを呟いていた。
 
 

 
後書き
Q:主役の和也より一夏の戦闘が長いってどういうことなのよ。
A:対戦相手と本人らの実力差です。 
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