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鎮守府にガンダム(擬き)が配備されました。

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第1部
  第10話 激闘、横須賀沖迎撃戦〜其ノ壱〜

 
前書き
遅れて申し訳無い……。
仕事を転職する事になった為、更新出来ませんでした。
今年中には第1部を終わらせたい……(汗 

 
8月22日 PM10:45
横須賀鎮守府


満月の登る、雲一つない満点の星空の下。
純白に飛竜の紋章を掲げる巨大な軍艦…リンドヴルムが、横須賀鎮守府の埠頭から短い旅路へと旅立たんと、機関を唸らせる。



「手空き総員、整列ッ‼︎ 頭ァー、右ッ‼︎」

右舷第1カタパルトに集まった兵員が右手を向いた。

「帽振レーッ‼︎」

一斉に被っていた帽子を大きく振る。
陸地や繋留されている艦艇上から見送りの兵士達が、声を張り上げて精一杯帽子を振って応えてくれた。

「直レッ‼︎ 総員、配置に戻れッ‼︎」

号令を掛けると、リンドヴルムの兵員が駆け足で艦内へ戻って行く。
それを見ながら、俺…神宮司一葉はタバコを取り出して火を付けた。

「准将閣下」
「ん? …ああ、晴子姉さん」

カタパルト上を走り回る整備班の中で一際目立つ日本海軍の軍服を着こなす少女……柏木晴子少尉が直立不動の姿勢で敬礼していた。
親父…神宮司定晴が学長を務めた士官学校の最初で最後の1期生だ。

「あははは…なんだか、とんでもない再会になっちゃったね……」
「全くもってね……」

戦術アドバイザーとして海軍士官が乗り込むのは知っていたが、まさか晴子姉さんだとは予想出来なかった。
晴子姉さんはほんの少しはにかみながら頬を掻いた。

「……勝てると思う? この海戦」

1士官の顔に戻った晴子姉さんは厳しい視線を沖に向けた。
単艦で大艦隊に仕掛ける今作戦に、不安があるようだ。
それも致し方ない事だろう。

「宇宙世紀の艦艇は…いや、このリンドヴルムは姉さんが考えてる程柔じゃないよ。
〝ミノフスキー粒子が連中の機能を無力化する〟事が分かった以上、俺たちにも勝機はある。
奴らに俺達の兵器が最も有効なら、MSは奴らにとって最大の脅威になる。
奴らに、深海以上の地獄を味合わせてやるさ」

夕呼の上げてきたレポート……俺達がこの世界に来てから初めて戦った、戦艦棲姫達の戦闘時の報告書。
其処には、様々なミノフスキー粒子の隠された効果が示されていた。

中でも顕著だったのは、霊子結合の阻害と弱体化。
深海棲艦と艦娘の用いる霊子を一時的にではあるが、機能不全を起こさせる事が判明した。
つまり、深海棲艦の圧倒的な自己修復機能を無力化出来る様になった訳だ。
ミノフスキー粒子の接している部分に限定……つまり、今大幅に普及しているホプキンス効果によって威力を高めるHEP弾ではなく、AP弾などの貫通式の弾頭なら高い効果が望める訳だ。

また深海棲艦の霊子装甲の強度を著しく弱体化させる。
卓上の見解だが、各国のミサイル駆逐艦などに搭載されている76mm速射砲の威力でも、軽巡クラスまでなら充分撃破可能となった。
更に深海棲艦や艦娘の使う霊子通信の阻害が可能と言うおまけ付きだ。

それらの情報を基に今作戦……〝星一号作戦〟が立案された。

「……ブリーフィングの時間だ。
少尉、ブリーフィングルームへ来て欲しい」
「…はっ‼︎」


◉◉◉


「作戦を再確認する。
1度しか言わんからよく聞けっ‼︎」

ブリーフィングルームの上座に立つラトロワの透き通るような声が響く。
MSパイロットと各部署の代表、そして作戦海域までの護衛に着く帝国海軍の駆逐艦隊の各艦艦長や提督、艦娘が詰めるブリーフィングルームに、俺達の姿はあった。

「本作戦の流れは次の通りだ。
……まず本艦は横須賀港を出港した後、護衛艦隊と共に北上し……作戦海域に発生中の濃霧に紛れながら敵艦隊に接近。
敵艦隊の索敵範囲内に入り次第、ミノフスキー粒子を散布。
単艦で特攻を仕掛ける。
敵艦隊上空100にレーザー誘導でミノフスキー弾頭を搭載したミサイルを撃ち込み、敵艦隊の動きを阻害。
その後提督の搭乗するバーサークヘリオンが突出、敵の出鼻を挫き……本艦のハイパーメガ粒子砲で敵艦隊中枢に打撃を与える。
その後、各MS隊は急速展開、敵艦隊を各個撃破…殲滅するっ‼︎」

ラトロワの掌が、ブリーフィングルームのモニターを叩いた。
室内……帝国海軍関係者や提督、艦娘達にどよめきが起こった。
帝国海軍側は敵艦隊の撃退を要望しており、単艦ではそれが限界だと思っていたのだろう。
敵艦隊殲滅を意図も簡単に成し遂げると発言したラトロワに衝撃を受けたのだろう。

「本作戦の肝は、何と言っても最終段階……各MS隊の働きに掛かっている。
1隻でも多く奴らを撃滅し、人類勝利に貢献する事だっ‼︎
…此方も全力を尽くす。
諸君等の双肩に、我が艦の命運を託すっ‼︎
……提督、頼む」

ラトロワに導かれて壇上に立つ。

「艦長の言葉にあったように、この海戦は人類勝利に必要不可欠だ。
無論、我々も無傷では済まんだろう…。
だが、我々はエインヘリアルだ。
あの世界に蔓延るモグラ共とは違う。
軍人の役目は、力なき民間人を護ることにある。
我々が敗北すれば、次は日本国民が犠牲になる……。
ジオンや連邦という蟠りを乗り越えた諸君になら、実現できない作戦では無い。
……済まんが、諸君等の命をくれ……幸運を祈る」
「准将閣下に対し、敬礼ッ‼︎」

一糸乱れぬ敬礼に答礼し、オブサーバー達に向き直る。

「何か進言のある方は居られますか?」
「……その作戦、一考の余地があります」

1024と銘打たれた腕章をつけた加賀が、1枚の書類を突き出しながら言い放った。
書類には、親父と煌武院悠陽殿下の名前と、指令書の文字が書かれている。

「第1024鎮守府所属、正規空母加賀…本作戦への参加を表明します」
「ちょっ⁉︎…姉さん……それは…」
「俺たちも居るぜ?」
「我輩達もだ」
「我々も居ますが?」

木曾や千歳、利根と筑摩、霧島、横須賀派遣艦隊のノースカロライナまでもが同じ書類を手に前に出た。

「実は…」
「我々もな…」

各艦の艦長までも同じ書類を手にしている。
オブサーバーのほぼ全員が書類を手に、まるで悪戯に成功した子供のように笑っている。
周りからクスクスと笑い声が聞こえてきた。
どうやら俺は嵌められたらしい。

「俺もです」

更には葛葉提督まで。
俺はため息混じりに額に手を置いた。

「全く……命の保証は出来ませんよ?」

俺は顔を顰めながら、今迄の作戦指令書を破り捨てた。


◉◉◉


1時間後
午前零時

「提督、横須賀港を出た。
時間だ」
「ああ。
……迎撃艦隊各艦、進路を北へ」
「ヨーソロー、各艦、進路を北へ。
航海長、両舷半速、取り舵一杯ぁーいッ‼︎」
「ヨーソロー、両舷半速ぉーッ‼︎取ぉーーり舵ぁーーじ一杯ぁーーいッ‼︎」
「いざなぎ型1番艦より発光信号、命令了解、両舷半速、取り舵一杯ッ‼︎
各艦も続きますッ‼︎」

大小様々な時代の艦艇によって構成された艦隊が綺麗な輪形陣を敷きながら回頭する。

第1024鎮守府所属の護衛艦隊旗艦加賀と千歳、横須賀派遣艦隊のエンタープライズ、ヨークタウンによって構成された空母群を中心に、正面にリンドヴルムが陣取る。
更に空母群の左翼を霧島、響、筑摩、いざなぎ型ミサイル重巡洋艦1番艦いざなぎ。
左翼をノースカロライナ、木曾、利根、いざなぎ型2番艦いざなみ。
最後尾に測的支援艦いざよい、わだつみ型対潜駆逐哨戒艦8番艦かぐづちを配置した艦隊だ。

「対潜、対空、対水上警戒を厳となせ」
「了解、各員警戒を厳にせよ」

濃霧の中を突き進む艦隊を、異質な静けさが包み込んだ。
あらゆる対空砲とソナー群が海域を睨みつける中、唐突にその時はやって来た。

「測的支援艦いざよいより入電ッ‼︎
12時方向約20000、海上に霊子変動ありッ‼︎
敵艦隊ですッ‼︎」
「対潜駆逐哨戒艦かぐづちより入電ッ‼︎
同海域海中に霊子変動ありッ‼︎
潜水艦隊ですッ‼︎
潜水空母3、巡航潜水艦12ですッ‼︎」

艦隊に緊張が走る。
遂にその時がやって来たのだ。



「艦隊各艦に通達、現時刻を持って、星一号作戦を開始するッ‼︎」


ついに、後の世に語り継がれる事となる〝奇跡の海戦〟の火蓋は落とされた。

 
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