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リリカルな世界に『パッチ』を突っ込んでみた

作者:芳奈
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第二話

 深夜。普段なら既に寝ているはずの時間だが、葵はまだ起きていた。
 
 原作のキーマンの一人、ユーノ・スクライアがフェレット状態で発見された以上、ここから原作が始まるのは確定しているからだ。

 幸い、彼の両親は一度眠ったら朝まで絶対に起きないので、彼は家をこっそり抜け出して、ユーノの治療をしている動物病院の近くで待機していた。

 ―――電柱の上で。

「俺も人間離れしてきたな・・・。」

 なのは達のように魔法の力を使うのではなく、只の純粋な身体能力による跳躍。

 何故電柱の上かと言えば、小学生がこんな時間まで外出していたら、確実に補導されるからである。原作のなのはがあれだけ大暴れしても捕まらなかったのは、ひとえに主人公補正であろう。主人公ではない葵は、万全の体制で臨む必要がある。

 彼は、フード付きの、黒いパーカーを着ており、更に顔には家で見つけた狐のお面を付けている。

「ロストロギアとの融合なんて・・・管理局に知られたらどうなるか・・・。」

 管理局員として働くことを要請されるくらいなら別に構わない。だが、相手の上層部は、既に脳味噌だけの状態で生きている、文字通りの化物である。絶対正義を謳いながら、裏では人体実験などもしていることを知っている為、本気で信用するつもりにはなれないのだ。

「だけど、バックアップは絶対にあったほうがいいんだよなー。」

 ジュエルシードの事件だけなら、正体を隠して暗躍するのもいいが、このあとに闇の書事件も控えている。そうなると、完全に正体を隠すというのも難しく、どこかでバレてしまうだろう。ならば、今回派遣されてくるハズのリンディ・ハラオウンとは接触しておきたいところであった。彼女は管理局の中でもかなりの権限を持ち、それなりに良識もある。二次創作などでは黒く書かれる存在だが、管理局に根回しを頼むなら、これ以上はない存在だと葵は思った。

 たった一度のジャンプにより、彼は電柱の上へと到着していた。この高さになると風もそれなりに吹いているのだが、肉体全体が超人の域まで強化されている葵にとって、何の痛痒も与えない。

 彼の存在自体が、周囲のものとは一線を画すものへと変化しているのだ。例えば、象にミジンコが攻撃をしたところで、何のダメージも与えることはできまい。既に、眼球に砂が入ろうと、不快感すらないのである。

「・・・昇れば昇るほど、人間からかけ離れていく、進化の階段・・・か。」

 『進化させる』ことが、『パッチ』の能力だ。

「確かに、この能力なら『死なない』ことは出来る。『死なない』場所まで、階段を駆け上がればいいんだから。」

 この能力で階段を駆け上がれば、人は心臓すら不必要となり、宇宙空間で何の問題もなく生存でき、寿命の楔からも解き放たれる。どれほど致命傷を負っても・・・いやむしろ、傷つかない場所まで(・・・・・・・・・)階段を上がればいいのだ。

「でも・・・そのために、人間辞めるのか・・・?」

 上手く進化出来なければ、感情すら失ってしまうこともありえる。神にも悪魔にもなれる。これは、そういう力なのだ。

「・・・お?」

『僕の声が聞こえる人・・・!助けて下さい・・・!』

 強化された彼の聴覚が、破壊音を捉えた。同時に、ユーノのSOSメッセージが発信される。どうやら、ユーノがジュエルシードの思念体に襲われているのだろう。・・・だが、葵はあえて助けない。彼が助けた結果、なのはが魔法少女になる機会を潰してしまうかも知れないからだ。
 それに、最初の雑魚敵になのはが負けるとも思えず、彼がここにいるのは、万が一の為の保険であった。

「病院の人には申し訳ないんだけど・・・。これも地球の未来のためだ、諦めてくれ。保険も降りるだろうし・・・。」

 原作通りならけが人が出るわけでもないので、ここは放っておく。一般人が巻き込まれるようなら、迷わず助けに入るつもりでいるが。そのために正体を隠しているのだ。

「・・・ん?来たか。」

 なのはが近くまで来ていることを確認した葵は、万が一があった場合にすぐに動けるように準備する。既に、『パッチ』から力を引き出す方法は完璧だ。今ならフルマラソンをしても一切疲れないだろう。

「お、変身シーンか・・・って!」

 バッ!と彼は勢いよく顔を逸らす。強化された動体視力により、本来見えない程の高速で行われるハズの彼女の変身をバッチリ目撃してしまったからだ。彼女の全裸を目撃してしまい、彼の鼻から一筋の血が流れ出る。

「ちょっ・・・!ヤベ、鼻血が・・・!」

 いくら前世の記憶があるとは言え、精神はある程度肉体に引っ張られるものだ。それも、彼の場合はつい昨日までは、この世界の『伏見葵』として生きてきたのである。彼は、なのは達に友情以上の物を感じており、体がこんな反応をするのも不思議ではないだろう。

「ロリコンか俺は・・・。いや、年齢的には同じなんだし、問題ないのか・・・?いやでも・・・!」

 『パッチ』により強化された肉体は、鼻血も即座に止める。ティッシュで鼻血の跡を拭った彼は、戦いを見ることに戻った。・・・その瞬間―――

「おい、ヤベエ!」

「え・・・!?」
 
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