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【完結】剣製の魔法少女戦記

作者:炎の剣製
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第六章 正義の在り処編
  第百八十五話  『罪の償いの仕方。そしてモリアとは…』

 
前書き
更新します。

前回からの続きです。

ではどうぞー。 

 



Side シホ・E・S・高町



リオンさんがスバルとティアナの間で泣き続けているのを私達は温かい目で見ていた。
しばらくして泣き止んだのか目尻が赤く腫れ上がっていながらも、もうそこには先ほどまでの悲壮感に包まれているリオンさんの姿はもうなかった。
これならもう安心だろうか………と私は思い結論付けて、リオンさんに話しかける事にした。

「リオンさん、少しいいかしら?」
「あ、はい。なんでしょうか? シホ・E・S・高町一等空尉」
「シホで構わないわ」
「あ、それじゃ私の事もリオンで構いません………」

そう言ってリオンさん………いえ、リオンは少し恥ずかしいのか俯く。
うん、まだスバルとティアナ以外には心は開きにくいという感じか。
まぁ、それもしかたがない事である。
モリアに今までやられてきた過去を聞いたら納得もしてしまうしね。
私も思うところはある。
聖杯戦争が終結した後にリンとともに魔術協会に提出するための資料作りのために故人となった黒幕、元凶の言峰綺礼が居座っていた冬木教会に入った地下で私達を待っていたのは、見るに堪えない姿にまで変貌していた私にとってどこか見覚えがある子供達の姿があったからだ。
彼、彼女らはすでに全員息絶えていたが、言峰綺礼の残した日記によると彼らは私と同じ災難孤児だったらしくもしかしたら一歩間違えたら自分もあそこにいたかもしれなかったからだ。
そう考えると彼らには失礼かもしれないが切嗣に引き取られた私はやっぱり幸運だったのかもしれない。
リンが言うには彼らは協会の人間が丁寧に埋葬したらしいが、検査の結果、なにかの魔力供給の役割をやらされていたという。
考え付く限りでは第四次聖杯戦争から現界し続けていたギルガメッシュをこの世に留めておくために利用されていたのだろうという事らしい。
ひどい話だ………。
そしてリオンもこれと似たような経験をしたいわば被害者なのだ。
だから一概にお前が悪いとはけっして言えない。だけどケジメはつけないといけないのも事実な訳で………。

「それじゃ、リオンと呼ばせてもらうわ。それでリオン。あなたはこれからについてはどうするつもりなの………?」
「これから………?」
「そう。これからよ。あなたはモリアにリンカーコアを握られて無理やり動かされていたって理由はあった。
だけどなんにせよ曲がりなりにも幾人もの人の命を奪ったのは隠しようもない事実な訳だわ。だからなにかしらの罰は受けることになるわ………」

私がそう言葉をかける。
それでリオンはさらに俯いてしまい、代わりに、

「シホさん! 何も今話すことじゃないじゃないですか!?」

スバルが非難のこもった視線と言葉を私に浴びせてくる。
それはまだ年齢の若い者。
特にエリオやキャロも同様であるようで目が訴えてきていた。
しかし、今言わなくてもいずれは立ち向かわなければいけない問題だ。
嫌われ役は誰かがやらなければいけない。この程度なら過去の経験から慣れているから問題はないし。
それを思えばしっかりと理解して黙っているティアナやなのは達は良い方ね。
だから、

「たしかにそうね。でも、リオンはもう犯罪者としてのレッテルが貼られている。だから今のうちに決断はしておいた方がいいわ。でないと、これからの新たな人生の一歩すらも歩き出せないで停滞してしまうから………」

私がそう言うとスバル達は渋々とだがわかったらしく、悔しそうに、でも我慢するように言葉を慎んだ。
それを見計らってなのかリオンが小さい声で、しかし、しっかりと聞こえるように話し始める。

「………管理局には、出頭するつもりです。でも、それ以降の事は考えていません」
「考えていない………? それってどういう事か聞いてもええか?」
「……………」

はやてが聞くがそこでリオンはまた沈黙して俯いてしまった。
それになにかを感じたのか、なのはが少し厳しい感じの声で話しかける。

「………もしかして、リオンさん。あなたは死んで罪を償おうとか考えていない、よね?」
「ッ………!」

なのはの考えは、どうやら当たっていたのだろう。
リオンは目を見開いて今にも泣き出しそうな表情になる。
それにスバルとティアナは驚愕の表情と瞳をして、

「リオン………? それ、本当なの?」
「嘘、よね………?」

スバルとティアナは信じたくないという感じで、嘘であっていてという気持ちなのだろう、リオンにそう問いかける。
それにリオンは辛そうな顔をしながらも、

「………私は、生きていちゃいけない存在なんです! たとえモリアの命令だったとしても、私は、この手で………たくさんの人の命を奪ってしまった………。
私はスバルやティアの横に並び立てるような立派な人間にはもう、なれないんです………!
この手は………もうたくさんの血を浴びてしまっているんです!
こんな、こんな私なんかいっそ死んだほうが………ッ!」

パンッ!

室内に頬を叩く音が響く。
誰がやったのか? わかっている。
私が叩いたのだから。
それで私に叩かれた頬を押さえているリオンを含めた全員の視線が私に向けられてきていた。

「………そう簡単に死んだ方が、なんて言わないで。
あなたはまだ殺めた人に対して涙が流せる………。
罪の償い方の考えは共感できないけど、罪を自覚して償おうとは考えている。
だからもっと前向きに考えなさい」
「前向きに………?」
「そう。殺めた人の分の命も生きて、生き続けて罪を償っていくのよ」

そう。私もリオンと同じで過去にたくさんの人の命を理想のためと理由をつけて誰に命令されるでもなく自分の意思で殺めてきた。
リオン以上に私は犯罪者だ。
それでも私は自殺しようとはせずに殺した人の分も生きようという思いで今まで生きてきた。
だから私ほどではなくともリオンにも同じ気持ちで生きて欲しい………。
そんな、私の気持ちが通じたのかはわからないが、

「私は、生きていて、いいんですか………?」

それでリオンはまたしても涙を流し始めだした。
それで私はリオンの頭を撫でてやりながら、

「少なくとも、スバルやティアナ、そして私達はあなたがこれからも生きてくれることを望んでいるわ………。だから、あなたもけっして自分から死のうなんて考えちゃダメよ………?」
「はい………はい………ッ!」

それでポロポロと今日何度目かになる涙を流して何度も頷くリオン。
よかった………。これで自殺とかをする心配はもうないわね。
こんなに綺麗な涙を流しているんだから。
それからは話を変えて知っている限りの情報をリオンから聞き出す私達だった。



◆◇―――――――――◇◆



………それから、リオンは中庭でスバル達フォワード達やヴィヴィオ、ツルギ君などと会話を交わしているところを会議室の窓から眺めながら、隊長達だけでの会議を始めた。

「………さて、リオンからあらかた情報は引き出せたけど、なにか意見ある人はいるか?」
「はい」

はやての言葉でまずフェイトが手を上げる。

「フェイトちゃんか。ええで」
「うん。まずリオンさんから聞き出した話を集計すると改めてモリアが用心深い事がわかったと思うんだ」
「たしかにそうだな。モリアはネームレスに何も情報を与えていなかったようだからな」

フェイトの言葉にシグナムがそう返す。
でも、ちょっとシグナムに言っておきたいことがある。
それで私がシグナムに話しかけようとしたけど、先にヴィータに言われてしまった。

「おい、シグナム。たしかにネームレスっていうのはリオンの名前だけどさ………リオン自身は忌み嫌っているんだから名前で呼んでやれよ?」
「む………たしかにそうだな。気をつけるとする」

そう。
リオンの本名。
『リオン・ネームレス』。
リオンという名前は合成獣(キメラ)に殺されたというリオン以外の十九人の兄弟姉妹達につけられた名前だからまだ許せるが、問題はネームレスという苗字。
これはモリアが『誰でもない』という意味でつけたという。
リオンは言った。

『私はたくさんの人の遺伝子から作り出されました。だから誰でもない………ゆえに名無し、ネームレスなんです』

どこか悲しそうにそう言った時のリオンさんの表情は忘れられないものだ。

「リオンは、私と同じなんだね………」
「フェイトちゃん………」

フェイトが共感できたのだろう、少し俯きながらそう呟く。
それになのはが心配そうにフェイトの名を呼ぶ。
たしかに、フェイトという名前は『project F.A.T.E』から失敗作の意味も兼ねてプレシアがつけた名前だ。
だからフェイトも気持ちがわかるのだろう。
モリアとの違いは最後の時にはプレシアと分かり合えた事だろう。

「すまん、テスタロッサ。苦い記憶を思い出させてしまったな」
「ううん。大丈夫だよ、シグナム。母さんとは最後には分かり合えたんだから私にとってはいい思い出だよ。
それと比べるとリオンはとても可哀想だね」
「たしかにそうね。リオンはモリアに無感情のままにつけられてしまったんだからね………」
「やっぱり、モリアは捕まえないといけないね。またリオンさんのような子を出さないためにも………!」

なのはが拳を握り締めながらそう強く宣言する。
それほどに腹に煮えくりかえるものがあるのだろう、モリアの所業には。
今ももしかしたら他にリンカーコアを抜き取られて無理やり戦わされている人がいるかもしれないと思うといても立ってもいられなくなってくる。
しかし、現状では手がかりは………。あ、そう言えば。

「そう言えばはやて」
「ん? なんや、シホちゃん?」
「えぇ、はやて。ふとした疑問なんだけどどうやってモリアの本名が判明したの?」
「あぁ、その事やね。調べるには簡単やったんよ。モリアという名前と顔を照合したらすぐにリストが出てきたからな」
「そうなの………。詳しくはあったの?」
「うん、それなんやけどな。モリアの過去の経歴は元・執務官だったんやって………」
「執務官!?」

フェイトが声を荒げる。
あんな非道なことをしておいて元・執務官だったというのは私もちょっと信じられないわね………。

「うん。みんなが信じられないのも頷ける。でも、事実なんや。なんでも過去にとある任務に失敗して全身を大火傷してほぼ死に体だったらしいんや。なんとか一命は取りとめたらしいんやけど、少しして姿をくらましたそうや………」
『……………』

モリアの意外な過去に私達は思わず言葉を失う。
でも、

「そこが、モリアの人生のターニングポイントだったわけね」
「ま、そうなるね。でも、同情はできないかなぁ。リオンの話を聞く限りは………」
「たしかにね」

昔は昔だ。それからなにがあったのかは知らないけど同情の余地はないわね。
と、なると、

「シュバインオーグ。奴の体を映像で見たな?」
「ええ、見たわ。となると少しおかしいわね。整形にしても完璧に火傷の跡が消えていた。あれは一体なんなのかしらね」
「シホちゃん。他にも気になることがあるよ。モリアは空を飛んで移動しながらも転移魔法をしたんだよ?」
「たしかにな………」

そうね。移動しながらなんて座標がズレてしまってうまく転移なんてできるどころではないだろう。
もしくは、高速の演算機を内蔵していれば、もしくは………。
そこで私はある事に気づく。

「モリアは背中から直接バーニアが展開したわね。
それにスバルの振動破砕の拳をくらったのにまるでケロっとしていたらしいわ。手応え的には鉄を殴ったかのような硬さだったらしい。
ここから結論出される結果は………」
「まさか………」
「モリアは全身機械の可能性があるということか?」

私達の中でモリアという人物がなんなのかが少しずつではあるが判明してきたのかもしれない。
だとすればまだ早計かもしれないが、モリアは自身の科学力だけで生身の代わりに機械の体を手に入れたかもしれない、という予測が立てられる。
他にも合成獣(キメラ)や、生物兵器製造技術、リンカーコアを引き抜くという下手したら命を奪う紙一重の行為と、上げていくと狂っているとしか言えない所業の数々………。
強敵になるという可能性が出てきたわけだ。
私達の頭を悩ますには十分である。
これからの捜査はまた気を引き締めないといけないわね。



◆◇―――――――――◇◆


モリアは自身の研究室でシホによってあらぬ方向に曲げられた腕を文字通り修理していた。
色々な機器が自動で動いて部品を取り替えていく。
そして換装が終了したのだろう、何度も「キュイン」と鳴る腕を動かしながら、

「ふむ………さすが俺様だ。
この程度ならもう簡単に治せるのだからね」

そしてモリアは胸に内蔵されている“あるもの”を感じながら、

「しかし、ある方から譲り受けたこの魔導ジェネレーターは最高だねぇ。おかげで魔力が尽きることがなくなったわけだからな」

恍惚とした表情を浮かべながらも、モリアは、

「………さて、あの方がそろそろ動き出す。そこから俺様の計画も始動することになる。いや〜、楽しみだねぇー」

モリアは不気味に笑うのであった。



 
 

 
後書き
ハロウィンネタはしたかったのですが、ありきたりでネタが思いつきませんでした。
まだシリアスモードですしねー。

話は戻りまして、リオンを正すシホ。
シホは過去に理想のためにかなりの人を殺してますから気持ちがわかりますよねー。だから言葉に責任も持てます。

そしてモリア、全身機械説。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。

では。 
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