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魔法少女リリカルなのは~"死の外科医"ユーノ・スクライア~

作者:DragonWill
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本編
  第九話

 
前書き
ストックが底を突きましたのでしばらく更新は遅くなります。 

 
『――――――ではカタログナンバー20番の品は2000万で落札です。』

オークションは着々と進み、様々な品が落札されていく。

「フェイト隊長、いいのですか?どれもこれも被害届の出ている品ばかりですよ」
「慌てないで。今はそれよりもスカリエッティを確保することが先決だよ」
「・・・分かりました」

歯痒そうな表情を浮かべながらも、記録を続けるティアナ。

フェイトとシグナムもスカリエッティの姿を探しているものの、周囲の人間に気付かれる訳にはいかないため、大っぴらにきょろきょろと周囲を見渡すわけにもいかず、なかなか見つけられないでいた。

(いったい、スカリエッティは何処に・・・)
「失礼、お嬢さん(フロイライン)がた」
「「「っ!?」」」

突如、聞き覚えのある声に、三人とも驚きを隠せなかった。

その声の主に振り替える。

そこには・・・。

「私たちと相席していただいても構いませんんか?」

白いタキシードに身を包み、胡散臭い笑みを浮かべたスカリエッティとボディーガードのようなスーツを着こなすウーノ、トーレの姿があった。





「これは・・・想定外の事態だね」

会場の状況は、なのはたち狙撃班にも視認されており、突然の事態にどう判断を下すべきか、なのはにも分かりかねていた。

「これ・・・撃ってもいいんすかね?」
「射程圏内です。なのは隊長の許可次第ですぐに狙撃できます」

渋々射撃体勢に入るヴァイスに対して、ディエチはもう撃つ気満々であった。

「ま、まって、二人とも!?フェイト隊長からの合図があるまで、現状で待機!!わたしとディエチで彼らを見張るから、ヴァイスさんは他に仲間がいないか探って!!」
「「了解(ラジャー)!!」」

今にも撃ちそうな部下を慌てて止めたなのはは、すぐに会場にいるフェイトに連絡を取った。





一方、会場内で突然目的の人物に話しかけられたフェイトは混乱の極致にいたところに、なのはからの念話が届いた。

(フ、フェイトちゃん!?)
(なのは!?)
(もしかして、気付かれた!?今までの私たちの作戦、スカリエッティにバレてたの!?)
(多分そう言うことになるね。一体どこから漏れたの?)
(とりあえず、こっちは合図しだいでいつでも撃てるけど・・・)
(まだ待って。できる限り、彼の注意を引いて・・・)
「フフフ・・・。随分と戸惑っているようだね」
「っ!?」
「大方、どこから情報が漏れたのかとあれこれ思考しているところだと思うが・・・残念ながら、それは間違いだよ」

突然のスカリエッティの言葉にますます混乱するフェイト。

(フェイト隊長)

今度はティアナから念話で話しかけられた。

(どうしますか?外の応援部隊を突入させますか?)
(待って。彼が何の警戒も無しに近づいてくるなんてありえない。焦って事を荒立てると、仕損じるよ。少し様子を見よう)
(分かりました)
(シグナムも後ろの二人に注意して)
(勿論だ、テスタロッサ)

三人の念話に気付いているのかいないのか、スカリエッティの話が続く。

「どうやら、君たちの今回の作戦。よっぽど慎重に進めていたようだね。私ともあろう者が今日ここで君たちを見つけるまで、まったくその情報が掴めなかったよ」
「その言葉を信じろとでも?」
「おや?むしろここで嘘をつく理由など私にはないはずだがね?」

確かに、ここでスカリエッティが嘘をつく理由はない。

「ならばどうして、わざわざ私たちの前に姿を現す?気付いたのならすぐに逃げればいいものを・・・」
「私なりの敬意と思ってくれたまえ。それに私にもここでの目的がある。それを果たせずして、ここから立ち去るわけにはいかないのだよ」
「勇ましい心掛けだが、それで捕まってしまえば本末転倒ではないか?」

シグナムが胸元にある待機状態のレバンティンに手を掛けながら、スカリエッティに問いかける。

「この場でやりあう気かね?気が強いのは構わないが、周りをよく見たまえ」
「「「っ!?」」」

3人はスカリエッティに指摘されてようやく気付く。

照明が落とされ、薄暗くなったパーティー会場に複数の赤く細長い光が見えることに。

否。

それはただの光などではない。

スカリエッティの得意とする『糸の檻』である。

彼は一瞬にして、この会場の至るところに、魔力で編んだ糸を張り巡らせていたのである。

「き、貴様!!」
「私たちが今ここで争えば、この会場にいる数十人は巻き込まれてバラバラになるだろうね。私としては、ここにいる人間が全員死のうが大して気にしないが、君たちは違うよね?」

スカリエッティは薄ら笑みを浮かべ、言い放つ。

彼は一瞬にしてこの場にいる全員を人質にしたのである。

彼の使う糸は、高濃度のAMF下にいたとは言え、フェイトのザンバーを砕くほどの強度を持っている。しかも、ただの糸ではなく、魔力で編まれた糸なので、強度を変えることなく、いくらでも細さを変えられるのだ。

彼ならば、糸をワイヤーのように操り、この場にいる人間をバラバラに切り刻むことも容易いだろう。

この場にいるような人間ならば、罪のない一般市民など一人もいないだろうが、それでも彼女たちは『管理局員』である。

犯罪者であろうとも、殺すことを良しとしない彼女たちに、彼らを見捨てるという選択肢など取れるはずもなかった。

結果的に、フェイトの判断は正しかったのである。

もし、あのまま強行に突入していたら、この会場は一瞬にして地獄絵図と化していただろう。

「スカリエッティ・・・」
「何かね?フェイト・テスタロッサ」
「あなたは一体、何を目的としている?」
「・・・」
「かつてあなたを縛っていた最高評議院は壊滅し、脱出不可能と言われていた監獄から脱走し、自由を得た」
「フェ、フェイト隊長?」
「・・・何が言いたいのかね?」
「あなたは復讐を遂げ、望んでいたものを手に入れた。ならばこれ以上何を望む?何が目的で動いている。答えろ!?」

どこか悲痛そうな声を上げ、スカリエッティに問いただすフェイト。

「・・・やれやれ、チンクか」
「っ!?」
「困ったものだな。全て知っているということか。・・・ならば答えよう」

何の話をしているのか分からないシグナムとティアナを置き去りにし、二人だけで会話が進んでいく。

「強いて言うならば・・・そうだな。私の目的は・・・君だよ、フェイト・テスタロッサ」
「「「っ!?」」」

3人は思いがけない返答に、驚愕した。

だが・・・。

「ドクター?」

その驚愕も、地の底から響くような女性の声によりかき消されてしまった。

「えっと、どうしたのだね?ウーノ、いやウーノさん!?」
「酷いです、ドクター!!長年、苦楽を共にし、あなたに尽くしてきた妻を見捨てて、どこぞの馬の骨の女を口説くなんて!!」

今までスカリエッティの後ろに控えていた、ナンバーズの長女であるウーノの突然の激昂に3人は唖然としていたが、その言葉を聞いて、永久凍土のような視線をスカリエッティに向けた。

「いや、待ってくれウーノ!?そもそも君は私の作品、つまりは娘も同然の存在だ!!それに君には私の因子が使われている以上、遺伝学上でも君は私の娘でもあって、そういった関係は不適切ではないかね!?」
「関係ありません!!愛があればそんなこと些細な問題です!!」
「いやいやいや!?全然些細じゃないからね!?結構致命的な問題だからね!?」

突然始まった痴話喧嘩に、3人は今が緊迫状態であることも忘れて呆れ返っていた。

やがて、言い争いが終わったようで、体裁を取り繕いながらスカリエッティが話しかけてきた。

「意外かね?」
「・・・ええ。いろいろな意味で」

3人のこれまでのスカリエッティ像が音を立てて崩れていった瞬間だった。

「・・・てっきり、『この世の全てが欲しい』とでも言うのかと」
「確かに、私の開発コードは『無限の欲望(アンリミテッド・デザイア)』・・・かつてはそう考えていた時期もあった・・・だが、ゆりかごを起動させ、その野望に王手を掛けたあの時、私には確信めいたことがあった」
「確信?」
「そうだ。『例え、このまま世界の全てを手中に収めても、私の渇きは満たされることはない』とね」
「・・・えっ?」
「私はね、フェイト・テスタロッサ。生まれた時からずっとこの渇きに苦しんでいるのだよ」
「渇き?」
「そうだ、渇きだ。どれほどの知識を満たそうが、どれほどの物を手に入れようが、私のこの渇きは収まることがないのだよ。まるで、胸の真ん中にぽっかりと大きな穴が開いたみたいに、何をしても満たされることのない虚しさ。自らの内側から溢れる衝動のままに、世界の全てを手中に収めれば、この虚しさも少しは満たされるかと思ったのだが、いつもと変わらず、少しもこの心が高揚することはなかった」

3人はスカリエッティの言葉に耳を傾けていた。

初めて本人から語られる、あれほどの事件を引き起こした動機。

多くの人間が彼を狂人と決めつけ、なぜ彼がJS事件を引き起こしたのかには興味も抱かなかっただろう。

最高評議院が生み出した悪の意志。

『管理局の悪であれ』と生み出された彼の心を、誰も理解できないと決めつけていただろう。

だが、彼も人間である。

その心の一端に触れられた、初めての瞬間であった。

「そんな時に私は君に出会ったのだよ」
「私?」
「そう。その美貌もさることながら、極限の状況で挫けそうになっても、なお私の下に向かってきた意志の強さ。素晴らしい!!有象無象ではなく、この世で二つとない至高の逸品を手に入れてようやく、私の渇きは満たされる!!」

そのスカリエッティの狂気に染まった瞳に3人は言葉をなくす。

『ご来賓の皆様!!大変お待たせしました!!』

その時、会場のアナウンスが鳴り響き、次の商品が登場した。

だが、その商品に彼女たちは言葉をなくしてしまった。

なぜなら・・・。

『続きましてはカタログナンバー21番、次元犯罪者、アレク盗賊団団長「ジョナサン・アレクサンダー」です!!』

今までの盗品や違法薬物などと違い、『人間』が商品として登場したてめである。

「なっ!?フェイト隊長、あれって!?」
「何を驚く必要がある?このオークションでは人間すら立派な商品となっているのだよ」
「そ、そんな!?」
「歴史を紐解けば簡単に予想がつくものだよ。『人類平等』だの『奴隷廃止』などと言った考え方は本当に近代の考え方。むしろ、いまだに、奴隷の文化が残る世界の方が大多数なのだよ」
「だからと言って、こんなことが許されていいはずがない!!」
「まあ、それはただ単に君たちは運が良かっただけに過ぎん。生まれた世界如何では、ああなっていた可能性だってあったのだよ。君も私もね」
「っく!?」

納得できない顔を浮かべるティアナ。

それは他の2人にも言えることだった。

特に騎士道を重んじ、人の尊厳を尊重するシグナムには、例え犯罪者と言えども、『これが人間に対してすることなのか?』と爪が掌に食い込むほど握りしめて、怒りを抑えていた。

『お手元の画面に彼の詳細なプロフィールがございます!!近代ベルカAAA+の実力を持つ古強者!!お家の番犬代わりにまさに打って付けです!!』

司会の言葉に、会場から笑い声が響く。

狂ってる。

3人の心の底から押さえつけれないほどの嫌悪感が溢れ出す。

『それではまずは1000万から・・・あれ?』

司会から間抜けな声が響き、最前列にいた人から異変に気付いていく。

『っ!?カーテンを閉じろ!!早く!?』

司会の言葉にカーテンが閉じられ、会場が慌ただしくなった。

「い、一体何が起きたのですか、シグナム副隊長?」
「彼の口元から血が流れていた・・・恐らく、自ら舌を噛み切ったんだろう」
「どうしてそんな!?」
「少なくとも、奴隷として売られれば、人としての尊厳は奪われ、どんな目にあわされるかも分からない。誇りと命のどちらを取るかで、彼は誇りを選んだのだろう」
「・・・・・」

ティアナは言葉を失ってしまった。

そのとき・・・。


ドッカ――――――――――――――――――ン!!!!!!!!!!!


「「「っ!!!!????」」」

ホテルのどこかから、大きな爆発音が聞こえてきた。
 
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