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東方紅魔語り

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第一章 紅魔館
  Part4 紅魔館

 
前書き
遅れて申し訳ないです。
今回の話はいつもより短いです。
実は書き溜めもあるんですが、一気に投稿するのはアレなので、ハイ。

では、今回もゆっくりしていって下さいね! 

 
 ……頭が痛む。
 えーと、何をしていたんだっけ俺?
 そうそう、確か廃墟に行って……そこからなんやかんやあってフランドールに会って……。
 あー、そうそう、咲夜さんに勘違いでやられそうになったんだっけ?
 それで逃げて、フランがいたから向きを微妙に変更して……!

 目を開けて、勢いよく起き上がった。

 「ん、あー起きたー」

 目を開いてみると、そこは一つの部屋だった。
 その部屋は、壁や床、天井と、ありとあらゆるものが赤の色で統一されており、目には決して優しく無い。
 と、そこへ、部屋の色と同じ、赤で統一された服を着た『フランドール・スカーレット』が近付いてきた。その隣には、フランに似た少女が一人。
 その少女は、フランのような『真紅』ではなく、どちらかと言うと『純白』をイメージした服装をしている。髪は目立つ紫色で、フランと同じくナイトキャップを被っている。

 「初めまして。私の名前は『レミリア・スカーレット』、宜しく」

 レミリア……確かフランの姉だったか?

 「貴方が咲夜とやりあった人間ね?」

 やりあったというか、後半はボコボコにされた記憶しかないのだが……まあ、俺なのだろう。

 「そうですが……何か?」

 とりあえず、初対面には敬語で話すのが我が流儀。
 地味に咲夜がレミリアの後ろから睨み付けてきているが、それに気付かぬフリをするのも俺の流儀。

……正直、凄い怖いです。

 「咲夜が無礼を働いたのは謝るわ、侵入者だと勘違いしてごめんなさいね」

 レミリアはそういいつつ、頭は下げない。
 見るからにプライド高そうだから、それが原因だろうか。
 ところで、なんで俺が侵入者じゃないと分かったのか。

 「私の能力で貴方が辿ってきた運命を見たのよ。それで、貴方がここに来たのは偶然だって分かったわ」

 レミリアの能力、『運命を操る程度の能力』の応用か。

 「さて、謝罪も終わったことだし、本題に入りましょうか?」

 本題?

 「貴方、ここで働きなさい」

 「……は?」

 思わず声を漏らしてしまった。
 なんでそんなお誘いを?

 「貴方、咲夜とやりあえる程の実力を持っているんでしょう?今からちょっとした異変を起こしたいんだけど、どうも戦力が足りないのよね」

 レミリアは背後にいるフランを親指で指差しながら、ため息を吐いた。

 「この子が動けたら戦力は跳ね上がるのだけど、残念な事にフランは使えないのよね。下手したら私達も巻き添えを食うのよ」

 親指を下ろし、視線を此方に戻す。

 「門番の美鈴は弾幕系の勝負は不慣れだし、図書館のパチェも長時間の戦闘は避けた方がいい。だから実質、長時間戦えるのは私と咲夜だけなの」

 更にレミリアは話を続ける。

 「で、咲夜とやりあったと言われる貴方が入れば、此方は単純計算で、戦力が咲夜一人分ほど上昇する。ここに住む間、衣食住は確保してあげるわ。どう?魅力的じゃない?」

 つまりは、『住む場所は確保してあげる代わりに、戦力として戦え』という事か。
 どうしようか、とポケットの中に入っている携帯を触りながら考える。
 正直、衣食住を確保してくれるのは有難い。帰る方法が分からない以上、何処かで雨風を凌がなければならないのだ。
 だがしかし、不安があることは間違いない。
 目の前のレミリアは、どうも俺を過大評価し過ぎてる。咲夜とやりあったとはいえ、此方は一方的にやられただけだ。
 恐らくレミリアは、『俺が咲夜と同じ力を持っている』ものとして話を進めていくだろう。
 レミリアの頭の中では、咲夜=俺 という図式が立っているに違いない。実際は、咲夜>>>俺 である。
 さて、どうするか?と迷っていると、レミリアは首を横に動かし、咲夜を見ながら

 「そういえば咲夜、紅茶の材料が足りなくなってたわよね。確か材料は人間の血だった筈ー」

 「喜んで戦力になりましょう」

 どうやら此方に選択権は無かったようだ。
 遠回しな脅しに屈した俺を見ながら、レミリアは満足そうに頷く。

 「じゃ、付いて来て。貴方の部屋はもう用意してあるわ」

 どうやら俺が入ること前提で話を進めていたらしい。なんて理不尽な。
 そんな俺を後目に、レミリアは背を向けて歩き出した。
 付いて行こうとしたが、携帯の設定がそのままになっている事を思い出し、ポケットの中から携帯を取り出して画面を確認してみる。
 アプリはまだ起動していた。
 少し迷ったが、タスクを切ってアプリを落とし、再度ポケットに押し込む。
 そして、早足でレミリアへ付いていった。






 そして数十分経過し、ようやく部屋についた。広すぎる、この館……。

 「はい、この部屋は好きに使ってもいいわ。じゃあ私は用があるからこれで失礼するわね」

 そう言うと、レミリアは咲夜を連れて廊下の奥へ消えていった。
 踵を返し、部屋の扉を開ける。
 中の部屋は意外と普通で、何処か文句をつけるような箇所は無い。広さもちょうどいいくらいだ。……部屋の壁や天井が、全て赤で統一されているのは受け入れるしかない。
 とりあえず、部屋の中にあったベッドに腰をかけ、一休みした。

 「ふう……じゃねェよ俺!」

 くつろいでいる自分に喝を入れる。

 「なに極普通に会話したりくつろいだりしてんだ俺……、よく考えてみれば、ここが何処だか分かんないんだぞ!!」

 だが、ここが何処だか知る方法があるか?と聞かれたら、『無い』としか答えられない。
 もう諦めて適応した方が楽なのかもしれないな。と少し真剣に考える。

 「……なんだろう、考えんのが怠くなってきた」

 どうせ帰る方法など分からない。 ならばこの状況を楽しむ事こそ最善ではないか?
 携帯を取り出し、アプリを起動する。
 何かを0にすることも出来れば、何かを100にすることも出来る、不思議な力を持つこの携帯。
 東方風に言うとしたら・・・『100と0を操る程度の能力(携帯)』と言ったところか?

 「……この世に神がいたのなら、俺はこう言いたい……。なぜ携帯に能力つけたし」

 出来れば俺自身にしろよ神様。
 と、そこで俺の身に不幸が訪れた。

 ピーー。

 響き渡る、笛のような高い音。
 なんの音だか分からなかったが、その疑問はすぐに解消された。
 ……携帯の充電が切れた。

 「……まあね、やっぱり現実は甘く無いと思ってたよ。うん」

 だがこんな時の為に、充電用の充電器は常時持ち歩いているのだ。
 その充電器を持とうと手を横に伸ばして、ようやく気が付いた。
 ……俺のバッグ……何処いった?

 「……あれ」

 ベッドから立ち上がり、急いで辺りを見渡す。
 確か、俺はミニバッグを持ち歩いていた筈だ。それは確かに廃墟の時まではあった。
 だが今は何処にも無い。
 記憶を張り巡らし、落としてそうな場所を検索していく。

 レミリアと話していた時には無かった。
 咲夜との戦闘時も無かった。
 能力に気付いた時にも無かった。
 フランと初めて会った時には……。

 あった。

 つまりは、フランと会ってから無くした。
 いや、落とした……。

「ヤバい!早く回収して充電しないと・・・」

 よくお分かりだろうが、能力は『携帯』が持っているのだ。俺では無い。
 つまり、もし咲夜に襲われでもしたらナイフの一撃で死ねるだろう。
 先の戦闘も、あの能力があったからこそ生きていたようなものだ。

 「クッソ、待ってろよ充電器!!」

 そういい、扉の目の前まで行くと、ドアノブを捻って一気に引いた。
 そして無言で閉めた。

「……よく考えたら、俺、道知らねェわ」

 ……誰かが届けてくれるだろう。
 そんな淡い期待をして、俺は再度ベッドに転がった。 
 

 
後書き
フランがヒロインの筈なんですが、このまま行くと咲夜の方にフラグが立つんですよね。
・・・どうしようかな(震え声) 
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