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旧エクリプス(ゼロの使い魔編)

作者:cipher
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第28話 カトレア

■皇紀2794年 3月32日
カトレア、トリステイン魔法学院を首席卒業。
卒業に合わせて、(あきら)一条(いちじょう)と婚約。

■皇紀2796年 4月 1日
カトレアと(あきら)トリスタニア大聖堂で結婚。
カトレア・イヴェット・ラ・ボーム・ル・ブラン・ド・ラ・フォンティーヌとなる。
(あきら)ラ・ヴァリエール公爵よりフォンティーヌ領を譲り受け伯爵に叙爵されたのである。

■皇紀2797年 7月28日
カトレアと(あきら)の間に第一子が生れる。
マリー・ルイゼ・ル・ブラン・ド・ラ・フォンティーヌと名付られる。


ブリミル暦6241年 アンスールの月 ティワズの週 マンの曜日
皇紀2799年 7月28日 トリステイン王国 ラ・フォンティーヌ伯爵領 本邸

Side マリー・ルイゼ・ル・ブラン・ド・ラ・フォンティーヌ

今日が私の2歳の誕生日である。私は転生者である。目が見えた頃より少しづつ前世を思い出してきた。そう、あれは女子大の2年生になって間もない頃、通学途中に交差点を渡ろうとしていた時に、信号無視した赤いスポーツカーに跳ねられたのだ。
まぁ、あまり未練はない。マンガの続きを読みたかったぐらいだ。大学ではアニメ研究会に所属していたけれど、オタクではない。

お母様は桃色がかったブロンドの持ち主で、おっとりとした性格ですごく優しい。お父様は黒髪で外見は日本人そのものだ。ただ話している言葉は外国語のようだ。部屋も洋風だし、メイドさんも沢山いる。最初の頃は外国の裕福な家庭に産まれたのだと思っていた。ここが異世界だと気付いたのは、メイドさんの一人が犬耳をしていたことだ。
1歳になる頃には、言葉も少し理解出来るようになってきた。またお母様がよく裏庭に、散歩に連れ出してくれる。外から眺める家は豪邸であった。家には離れもあった。離れも大きい、前世の家より大きいのだ。その離れには沢山の動物がいた。まるで動物園みたいだ。裏庭には多くの動物達がいる。みんなお母様に懐いている。
家には良く母方の祖父母や叔母達が訪れる。皆んな私を可愛がってくれる。そんな環境で生まれた私は幸せである。そんな私もすくすく育ち、2歳の誕生日を迎えた。今日は内輪だけの誕生日パーティーが開かれる。
朝から綺麗なドレスに着替えて、準備に余念がない。ルイズと(ゆめ)叔母様は魔法学院の夏休みを利用して、我が家に滞在している。
薄々感じてはいたのだか、この世界はゼロの使い魔の世界のようだ。でも原作と大分違う。何処か変だ。
その時、お母様の携帯が着信音を告げる。

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Side カトレア・イヴェット・ラ・ボーム・ル・ブラン・ド・ラ・フォンティーヌ

「カトレアです。はい、分かりました。」

お母様は携帯で手短に話して通話を切る。

「マリー、ラ・ヴァリエールのお祖父様とお祖母様が、もう直ぐ着くそうよ。お出迎えしましょう。」

お母様は私を抱えると玄関口へと向かった。
暫くしてシルバーのリムジン型の車が家の門をから入ってきた。
この世界には携帯や自動車がある。これも違和感の一つだ。私の知っているゼロの使い魔の世界は中世ヨーロッパ風の世界の筈、しかしこの世界は近未来的である。
車が家の前で停止した。ドアが自動で開くとラ・ヴァリエール公爵と夫人、お母様のお姉さんのエレオノールさん、お母様の末弟のロランが降りてくる。

「ようこそ、お父様、お母様、エレオノール姉様、それとロラン。」

「おぉ、カトレア、それにマリー!久しいな、それにマリーは少し大きくなったなぁ。」

「お父様、前に来たのはほんの10日前ですよ。幾ら子供でもそんなに早くは成長しません。今日は誕生日パーティーなので、おめかししているだけですよ。」

「そうですよ、貴方。それより、カトレア身体は大丈夫なの。」

「えぇ、大丈夫です。まだ2ヶ月目です。それに夫が大切にしてくれますし、何より夫はお医者様ですよ。しっかり健康管理をして下さいます。」

「そうでしたわね、カトレアの病気も治した名医でしたわね。」

「カトレア、アキラさんはどうしたの。」

「エレオノール姉様、夫は厨房で陣頭指揮しています。」

「そう、貴族らしくないけれど、それは楽しみね。栄養バランスを考えて、美味しい料理を出してくれるんだもの。貴方が病気がちの時も治療した後も、ラ・ヴァリエール邸に残って栄養管理してくれたもの。いろんな料理のレシピをラ・ヴァリエール邸のコックに教えたのもアキラさんだったわね。あの後、魔法学院に入学した時に食堂の食事が不味く感じたもの、豪勢だけれどあんなに肉料理ばかりだと、油ぽっくて食べられた物じゃないわ。光輝殿に頼んでメニューを抜本的に変えさせたもの。」

「あらまぁ、魔法学院の食堂のメニューを変えたのは、お姉様だったの。知らなかったわ。それよりパーティーが始まるまで時間があるわ。応接間でお茶でもどうかしら。」

「そうねそうしましょう。マリーのビデオ見せてね。お父様とお母様は、ちゃつかりマリーに会いに来ているもの。私はアカデミーの研究で忙しくてなかなか会いに来れないもの。」

エレオノールはジト目で公爵を見る。公爵はエレオノールと視線を合わせない様にしていた。

「貴方、早く行くわよ。」

カリーヌが公爵をフォローする。それには訳がある。カリーヌは夫がいない時も毎日のように訪れていたのだ。来れない時はテレビ電話でマリーの様子を伺っていたのだ。しかし自分にも末の息子がいる、身体が二つ有ればいいのに、そこで閃いた。そう偏在魔法が有るではないか。それからは偏在がマリーの子守をした。カトレアも偏在で夫の手伝いをした。
一条家にとっても目から鱗が落ちる思いだった。偏在を利用して研究の幅を拡げると共に諜報活動にも活用して行った。

「皆の分のお茶をお願いね。」

カトレアは皆を応接間に案内し、メイドにお茶をお願いすると立体TV(ソリビジョン)にマリーの成長記録のディスクをセットして映像を流し始めた。
ラ・ヴァリエール家の皆は映像で盛り上がっていた。カトレアやルイズの幼い頃にそっくりだとか、初めて言葉を話したのことに感動したりしていた。
そんなおりカトレアの携帯にメールの着信音が鳴った。カトレアはメールを確認するとマリーを抱いて立ち上がった。

「間もなく一条家の皆さんも到着されます。私はお出迎えしますので、切りの良いとこで広間に集まって下さいね。」

カトレアはそう告げると、部屋を後にしてフネの駐艇場に向かった。
屋敷の外に出ると、遠くから小型のフネが空を飛んで近付いて来ている。

「ルイズとユメちゃんも魔法の訓練は、それまでにしてドレスアップして来なさい。間もなく一条家の皆さんもお着きになるわよ。」

「「はい。」」

二人は魔法の訓練を中止して、カトレアに返事をすると、母屋に向かって飛んでいった。

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Side マリー・ルイゼ・ル・ブラン・ド・ラ・フォンティーヌ

やっぱり変だ。叔母のルイズと(ゆめ)さんも前世で見た魔法少女リリカルなのはの格好をして、魔法の訓練をしていた。ルイズは原作では魔法を失敗して爆発していたのに、今は普通に魔法を使える。誰か原作に介入したのだろうか?一番可能性があるのは、父方の親族だ。原作にはお父様や(ゆめ)さんも出てこなかった。今近づいているフネも帆がない。ましては自動車なんか走ってはいない。立体TV(ソリビジョン)に至っては前世の日本でも実現できていない。

そうこうしているとフネが駐艇場に着いた。
お母様は一条家の皆さんと挨拶を交わして、広間に案内している。
祖父母も曽祖父も若い、20歳位に見える。不思議だ。
広間ではお父様が待っていた。お父様は日本語で挨拶を交わしている。やっぱりお父様は日本人だ。身内だけの時は日本語を話している。
お父様はお母様から私を受け取ると、腕に抱きかかえてお母様と壇上に上がり挨拶をする。

「皆さん、お忙しい中、娘のマリーの2歳の誕生日パーティーに参加して頂きありがとうございます。細やかですが宴の準備もしてあります。最後までお楽しみ下さい。」

こうしてパーティーは、始まった。

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Side ラ・ヴァリエール公爵

「アキラを本当にフォンティーヌ伯爵家して良かったのですか?」

ラ・ヴァリエール公爵と光輝(こうき)(あきら)の三人は広間のバルコニーで歓談していた。

「えぇ、大丈夫ですよ。アキラ以外にも孫達もおりますし、一条家を継ぐ者がいない場合は曾孫でも養子縁組して、後を継いで貰えれば問題ありません。それよりカトレアさんが少しでも幸せになって貰う方が大事です。ラ・ヴァリエール公爵にはお礼を言いたい位です。ラ・ヴァリエール公爵の領地を割譲してくれた上に伯爵への叙爵まで手を回して頂いた。」

「いや、礼には及びません。アキラと家臣団がフォンティーヌだけではなく、ヴァリエールの領地も計画的に開発してくれています。磁気浮上式(リニア)鉄道も通してくれたし、道路も整備してくれた。今ではトリスタニア新王宮まで片道1時間で着いてしまう。それに投資のノウハウも教えてくれた。今やラ・ヴァリエール銀行は民間金融機関として、ハルケギニアで1、2を争う銀行になった。」

「いえ、父君。私は大した事をしていません。私は研究に没頭しています。曽祖父の家臣団のお陰ですよ。各地に病院を立てていますが赤字です。製薬会社と医療機器メーカーのお陰で何とか黒字です。ライヌ川の整備は終わりましたのでこれからは、ガリアとゲルマニアの船の玄関口へと変わるでしょう。何しろフォンティーヌはトリスタニアと一番近い港になります。ライヌ川は川幅も広く大型貨物船も入港出来ます。隣のツェルプストーとも船で行き来が出来ます。大量輸送には鉄道より船です。」

「ツェルプストーは気に入らぬが、トリステインの発展の為には仕方ないか。」

「そうですよ。それにラ・ヴァリエールはトリスタニアに次ぐ第二の都市に発展しています。航空機産業や自動車産業、家電産業といった製造業も育てなければなりません。お金は貯蓄してしまうと、経済の発展を阻害します。農業や畜産業は今後、人が余ってくるでしょう。第二次産業や第三次産業を今の内から育てなければなりません。その為に投資を勧めています。10年、20年先には投資に見合う収益が帰ってきます。」

「光輝殿の言葉には説得力がある。トリステインも太平洋連邦が投資してくれたお陰で今では15年前より10倍以上の国力になった。」

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後書き
カトレアの話でした。
原作開始まで、後1年です。
転生者を登場させましたが、これは客観的にハルケギニアの発展振りを表現させる為です。 
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