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ロックマンX~5つの希望~

作者:setuna
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第二十三話 エックスSIDE8

 
前書き
エックスSIDE8 

 
最初から司令室にいたエックスは、他の仲間達の到着を待っていた。
そして全員が集まる。

エイリア「ポイントRD18-66。そこがレッドアラートのアジトよ。…でもこれまで反応すらなかったのに急に見つかるなんて…まるで私達を誘っているみたいね」

自分の考えを率直に述べるオペレータに続き、シグナスも告げる。

シグナス「確かに何かあるかもしれないな。充分に気をつけてくれ…エックス、ゼロ、ルイン、ルナ。アクセルを頼んだぞ」

厳かな声に、エックスは力強く頷いた。

エックス「分かってる…さあ、みんな行こう。こんな争いは、早く終わらせてしまわなければ」

ルナ「いよいよクライマックスだな…腕が鳴るぜ…!!」

拳を鳴らしながら言うルナにルインは苦笑してしまう。

ルイン「もう、ルナったら、女の子なんだからそんな言葉遣いは駄目だよ?」

ルナ「…いいじゃねえかよ別に……」

言葉遣いを指摘されたルナは嫌そうに顔を顰めた。

ゼロ「今更言葉遣いを変えられても気色悪いだけだが?」

アイリス「ゼロ、女の子にそんなこと…」

ルナ「うっせーな!!」

アクセル「そう?僕はルナは今のままでいいと思うけど?」

ルナ「アクセル…俺の味方はお前だけだよ…」

戦士達はそれぞれの武器を握り締め、戦場に向かう。

































着いた先が本拠地に通じるハイウェイ、“パレスロード”。
大型機雷、高速移動メカニロイド、クラッシュローダーが進路を妨げて、序盤から激しい戦いとなる。

アクセル「容赦ないなあ、レッドは。」

ルナ「ああ、それより…」

ゼロ「何だ?」

ルナの呟きにゼロが振り返る。
因みに前衛はゼロとルイン。
中衛はルナとエックス。
後衛がアクセルとなっている。
因みにここではエイリアのナビゲートも受けることはできない。
理由はジャミングだ。
強いジャミングの影響で、通信機が使えなくなっているのだ。
だが、そんなことで任務はやめない。

ルナ「いや…アクセルが仲間になってから、全員で出撃したの初めてじゃね?」

ルイン「あ…言われてみればそうだね」

ルナ「やっぱ、傷ついた心を癒すには愛しい人からの愛ってか?ん?エックスく~ん?」

ゼロ「?」

アクセル「あ、それ僕も気になるな~?」

ルイン「あう…」

ニヤニヤと笑いながらエックスとルインを交互に見遣るルナとアクセル。
ルインは赤面し、エックスも俯いてしまう。

エックス「に、任務中だぞ。私語は慎んでくれ」

ルナ、アクセル「「は~い」」

ニヤニヤと笑みを浮かべたまま返事をする2人。
笑うのを止めて、アクセルはエックスに問い掛ける。

アクセル「エックス、久しぶりの大規模戦闘だけど大丈夫なの?それにパワーアップパーツは?」

エックスはグライドアーマーを装備している。
父が自分に遺してくれたアーマーがあるのだから不安になる要素などない。

エックス「はは…そんな物はないよ」

アクセル「ええ!!?それじゃあ、そのアーマーでパワーアップしただけ!!?」

エックス「そうだ。でもパワーアップパーツは今の俺には必要ない。俺の強さは心の中にあるから、だから大丈夫だ」

アクセル「ふ、ふーん…」

ルイン「……」

ルナ「アクセル!!後ろから敵だぜ!!」

ウェントスに変身し巨大メカニロイド、モルボーラからの攻撃をかわす。

ルイン「あのメカニロイド…軍事用メカニロイドと比べても遜色はないね」

ゼロ「来るぞ!!」

モルボーラが突っ込んでくる。
狙いはアクセルだが、エックスが間に入る。

エックス「チャージショット!!」

エックスのフルチャージショットがモルボーラの突進を止める。

アクセル「あれが…エックスの力…」

ルナ「マジで強くなったなエックス。エックスのチャージショットはあんなとんでも威力じゃなかったのにな」

アクセル「そうなの?」

ルナ「ああ、グライドアーマーのパワーアップを差し引いてもな。」

エックス「アクセル!!先に行くんだ!!」

モルボーラにエクスプロージョンを喰らわせながらエックスが叫んだ。

アクセル「で、でも…」

ルイン「ここは私達が食い止めるから、ルナ、アクセルをお願い!!」

ゼロ「早く行け、お前はお前の決着をつけろ。どんな過去だろうとお前自身が乗り越えるんだ」

エックス「行くんだアクセル。君の信念に従って突き進むんだ!!」

ゼロとエックスの言葉にアクセルはハッとなる。
ルナと目配せし、2人はハイウェイを駆け抜けた。

ルイン「それにしても意外」

エックス「何がだ?」

ゼロ「ルナと一緒とはいえ、アクセルを先に行かせたことだ」

ゼロもルインと同意見だったらしく、エックスを見遣った。

エックス「心外だな、俺だって信頼してるんだよ。彼のことは」

ルイン「ふふ…だろうね、アクセルは昔のエックスにそっくりだもん」

ゼロ「ああ、無茶をするところは特にな」

エックス、ルイン「「それはゼロには言われたくない」」

見事に言い返されたゼロは苦虫を噛み潰したような顔をする。
モルボーラが突っ込んできた。

エックス「…ギガクラッシュ!!」

凄まじい威力を秘めた波動にモルボーラは飲み込まれ、完全に粉砕された。

ルイン「急ごう!!」

ゼロ「ああ」

モルボーラの撃破を確認するとエックス達も中に突入する。




































先には地獄の谷があった。
僅かな足場を踏み外せば、死に誘われる。
エックス達が辿り着いた時には既に勝負はついていた。

ルイン「アクセル、大丈夫!!?」

アクセル「大丈夫だよ。ルイン達はまだ来ないで!!」

エックス「?」

アクセル「前に教えてくれたよねレッド?残心を忘れるなってさ。」

レッドは薄く笑った。
アクセルは未だにバレットを下ろさない。
油断なくレッドを見据えていたが、突如宮殿が揺れて、ガラガラと破片が降る。

アクセル「え?」

ルナ「な、何だ?」

エックス「(何が起こった?)」

震動が激しさを増してエックスは驚愕する。

レッド「…あれが聞こえるだろう…ここは…長くは持たない……。俺に…万が一のことがあった時は……ここから下は……一緒に消えて…なくなるように……セットしておいたからな……」

エックス「(何だと…?)」

耳を疑うエックスにアクセルの叫び声が響く。

アクセル「嫌だ!レッドも行こう!!」

駆け寄ろうとして、アクセルは後ろに引かれる。
ルナが、アクセルの右腕と左肩を掴んでいた。

アクセル「早く!まだ間に合う!!」

ルナ「駄目だ、急がねえと俺達も埋まっちまうぞ!!」

アクセル「でも、でも…っ」

アクセルの声が焦りを強めていく。
元は仲間であった戦士が目の前で消える。
その確信がアクセルにはあった。

エックス「(また…誰かが死ぬ…)」

エックスが悲しみに顔を顰める中、アクセルは手を伸ばすのを止めなかった。
小さな手で大切なものを掴もうとしている。

レッド「アクセル…その小娘の言う通りだ。先に行って待ってる…」

振り返った横顔は死への恐怖はなく、とても穏やかなものであった。
死神と恐れられた闘気も殺気もない。
あるのはアクセルへの深い優しさのみ。

レッド「いつでも来な…慌てなくてもいい…」

アクセル「レッド…」

レッド「小娘…」

ルナ「…………」

レッドの視線がルナに向けられる。
その表情はとても優しく、ルナはアクセルを捕まえながらも唇を噛み締めた。

レッド「アクセルを…頼んだ…」

アクセル「レッドオォォォォォォ!!!!」

アクセルの絶叫は天井に吸い込まれ、暗闇の中に消えていった。



































静寂が訪れ、辺りは無惨な有様。
掘り起こしても多分、何も出ないだろう。
出るとしたらレッドを思わせる残骸だけ。

ルイン「アクセル…」

エックス「……」

涙を流すルインの肩に手を置きながら、エックスはアクセルの小さな背中を見る。
エックスはゼロに視線を遣る。
ゼロもまた、どこか迷っているような顔をしている。
この先に居るであろう敵。
その正体に、エックスもゼロもルインもおおよその察しはついていた。
根拠などない、経験からの直感。
しかし、最も大切な存在を目の前で失った少年の心は、言葉では言い表せないほど深く傷付いているはず。
今の彼に、声をかけるということ自体憚られた。
今のアクセルは悲しみに沈んでいるだろう。
自分を責めているかもしれない。
しかし、それでも…。

ゼロ「アクセル…俺には慰めの言葉すら見つからん…だが、俺達はここで立ち止まるわけにはいかない」

その言葉にルナはゼロに食いかかる。

ルナ「お前…っ、その言い方はないだろうがっ!!アクセルは…アクセルは目の前で育ての親を失ったんだぞ!!」

次にルナは俯いているエックスとルインを向く。

ルナ「今こんな状況で何が出来る!?どう考えたって一時撤退だろうがあ!!」

ルイン「………」

ルナ「何とか言えよおい!!」

叫ぶルナにエックスが彼女の肩に手を置いた。

エックス「…ルナ、大切な人を失うというのは身を斬られる程の苦しみだ…。それくらいは、俺にも分かる。」

ルイン「確かに今はアクセルを休ませてあげたい。レッドの残骸を回収して弔ってあげたい…でも、それで私達が満足しても意味がないんだよ。」

ゼロ「レッドアラートのリーダーであるレッドが倒れた今、クリムゾンパレスの頂上に向かうことは容易いだろう。いわばこれは俺達に訪れたチャンスでもある。」

ルナ「だ、だけどよ…」

アクセル「行こう」

ルナ「え…?」

アクセルを見遣ると儚い、けれど吹っ切れたような表情を見せていた。

アクセル「“センセイ”をやっつけなくちゃ…」

ルイン「…でも、少し休憩しようか……」

エックス「そう…だな」

3人は2人から少し離れた場所で休息を取る。





































ルイン「大丈夫かなアクセル……」

アクセルがそんなに弱いとは思ってはいない。
しかし、まだ十代前半の子供が育ての親の喪失に耐えられるかどうかは断じて否である。

エックス「さあ、どうだろうな…」

ルイン「なんかエックス冷たいよ?」

不安そうにエックスを見遣るルインだが、エックスは苦笑を浮かべて彼女の疑問に答えた。

エックス「彼ならきっと大丈夫だ。俺達に出来ることは彼を信じることだけだ。」

ルイン「そう…だ、ね…」

アクセル「みんな!!」

エックス「アクセル?」

ルイン「もういいの?」

アクセル「うん」

決意に満ちた表情でエックス達を見つめるアクセル。

アクセル「もう大丈夫だよ。さあ、黒幕のセンセイを倒そう!!」

エックス「(アクセル…その小さな手が、この先の戦いを制するか否かの鍵となるか…)」

エックスはアクセルを頼もしく感じると共に、戦いの元凶の打倒を強く誓う。 
 

 
後書き
エックスSIDE8終了。 
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