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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──

作者:なべさん
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GGO
~銃声と硝煙の輪舞~
  少女始めました

「もうやだもうやだもうだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだもうだもうやだもうやだもうやだもうやだもうやだっもーやだ帰りたい」

ガンゲイル・オンライン首都《SBCグロッケン》の片隅で、そんな聞いただけで鬱になりそうな声が響く。

ゴンゴン、と。

初期キャラクターの出現座標に指定されているドームの外壁に据えられているミラーガラスに寄りかかって三角座りする少年の後頭部から、断続的な音が連続する。

ちなみに近くに突っ立っている少女はオロオロしていた。

俯いた途端に垂れ下がってくる黒髪がウザい。

出る声がやたら高いソプラノなのが鬱陶しい。

総じて、今すぐALOに戻ってマイホームの自室に閉じこもって五時間くらい泣き明かしたい気分だった。しかしその潤んだ瞳が傍らのオロオロ少女を「はぅっ!」とさせている事に少年は気付かない。

「何で…………こんな…アバターに……よりにもよって………」

断片的な一単語が放たれる度に、少女にしか見えない少年の周囲の重力子がニ割増しで仕事をし始めるように思える。ず~ん、という擬音語まで可視化できるようだ。

「ま、まぁまぁレン。ゴツそうなアバターじゃなくて良かったじゃない」

「………どこが?」

うわぁ完全に鬱スイッチ入ってるなぁ、と思いながら、重い気持ちを振り切ってユウキは口を開く。

「目立つ外見だったら、その《死銃》って人にも分かりやすいかもよ。ポジティブに考えよ、レッツポジティブ♪」

「ポジティブ…………?」

何それ美味しいの?みたいな顔をしながら、レンは淀んだ眼でユウキを見る。

肯定するにも難しい、泣き出す寸前の虐められっ子みたいなオーラを纏う少年に、少女は若干引きつった笑みで微笑みかけた。時間が掛かりそうだ。

そんな二人組は当然色んな意味で目立ち、行き交うプレイヤー達は剣呑な目つきもド忘れしてこちらを見ていた。よく言ったら珍しげで、悪く言ったらドン引きしていた。

その中で、良い方に入るであろう見方をしていた男が、突如として走り寄って来た。

「は、初めて見たよ……、そのアバター…。う、噂には聞いてたけど………ひょっとしてFL1300番系かい!?」

「………………………………」

「………………………………」

ユウキは、何でこんなメンドくさい時にメンドくさい事するかなー、といった顔で。

レンは正真正銘、もうこれ以上何も言わないでクダサイみたいな顔で。

Fは分かる。女性(フィメール)ということだろう。数字はその種類か。

口に出すのも嫌々ながらも、それでも一応否定しておかねば何か色々ダメになりそうだったので、レンは膝を抱え込みながらボソボソ喋る。

「男だよ、僕」

「あ、あはは、ホントなんです」

二人の少女(一人♂)の言葉に、今度は男がしばし絶句した後、先刻に倍する勢いでまくし立て始めた。

「じゃ、じゃあ………それ、あの都市伝説のML9000番系かい!?す、すごいな……!十メガ出そう!売ってくれ!ぜひ売ってくれ!!」

「え!?買ってくれるの!?」

「こら」

眼の色変える少年の頭にチョップをかまし、ユウキは身を乗り出すようになっている男に向き直る。

「ごめんなさい。ボクもこの子も、初期キャラじゃなくてコンバートなんだ。悪いけど、お金には替えられないかな」

「そ……そうか…………。ま、気が変わったら連絡してくれ」

男はそう言うと、透明なカード上のアイテムをレンに押し付けてきた。キャラ名や性別、所属ギルド名などが記されたそのカードは、眺めているうちに発光、消滅してしまったが、おそらくシステムウインドウ中のアドレス帳か何かにデータが追加されているのだろう。

名残惜しそうに立ち去る男に、レンがそういえばという感じで言葉を発した。

「ねぇ。女性()男性()は分かるけど、Lって何?」

「あぁ、ロリってことだよ」

ブッ飛ばすぞこの野郎。










数分後、なんとか気を持ち直した少年を引きずるようにしてユウキは歩いていた。彼女も彼女で、すれ違うプレイヤー達からの視線が痛い訳ではあるが、少女はそこんところが鈍感であった。

「ほーらー、レンー。シゲさんの言ってた場所に行くよー」

「もーやだー、帰るー」

………訂正、あんまり持ち直してなかった。

ズルズルという音を伴いながら歩く両者の向かう目的地は、黒峰重國に事前に言われたとある酒場である。どうやらそこに重國の手の者がいて、そこで装備に関する融通をしてくれるらしい。

どんなMMOでも、初心者(ニュービー)熟練者(ベテラン)から過剰な援助を受けるのは決して褒められた事ではない。この世界にはゲームを楽しみに来たわけではないが、それでもゲーマーとして譲れない一線というものはある。当の老人は、あくまで情報を渡すだけと言っていたが、それもどこまで信じられるか。

時々道行く人に道を聞き、何とかその酒場まで行こうとするのだが、ほとんどの人が知らないと言うほどのシケた店らしい。それだけ渡される情報が重要だという事だろうか。

いずれにせよ、期待は膨らむ。

やっと行き着いたときには、ログインしてから二時間が経過していた。

裏路地で浮かび上がる切れ切れのネオンを前に、ぜぇぜぇ肩で息する二人組はそうとう怪しい。

はっきり言って、超浮いていた。

店の外観は、何と言う様式なのかは分からない。そう、あえて例えるのならば、古き良きアメリカの西部劇映画に出てきそうな木造建築だ。今にも、胸の高さの小さなオープンドアの向こう側から、リボルバー片手のテンガロンハットおじさんが鼻歌でも歌いながら出てきそうな気配が漂ってくる。しかしそのくせ、店の屋根部分には、屋号がデカデカと記されているネオンが据えられているのだから、イマイチ店主の趣味が分からない。

「ここ…………だよね」

「うん。そのはず、だよ」

二人で顔を見合わせ(ユウキは笑いを堪えつつ)、大きく頷く。

ギィ、と。

古びた木材特有の軋んだ音を立てながら、しかし滑らかに西部劇的ドアは回転した。

VRMMOにおける《屋内からの音》というのは、《聞き耳》などの特殊なスキル等を使わない限り、全体的にほぼシャットアウトされる。例外なのは、戦闘音、叫び声(シャウト)、ノックに対する応答ぐらいである。

それらを無効化する方法は簡単だ。要は、その完璧無慈悲なまでの遮音効果を発揮するドアを開け放ってしまえばいい。

かくして、ドアを開け放った少年少女の耳に、ワッという騒音が炸裂した。

なかなかの裏道(当社比)にあり、外観もなかなかのコア度を誇っていたにもかかわらず、その実態はかなりの盛況のようだ。プレイヤー運営ではなく純粋なNPC酒場らしく、人がぎっしり詰まった狭い店内の中で、店員と思しきNPCが休む暇もなくフル回転しているのが伺える。

だが、と少年は店内を見渡しながら思考する。

こんな、ありふれた、それこそどこにでもあるような酒場でも、ファンタジックなALOとはだいぶ趣が違うように思える。

言い方は悪いかもしれないが、あえて直球かつ抽象的に言い表そう。

なんかギトギトしてる。

いや、SF的設定で、さらにはガンゲーだ。潤滑油やら機械油やらでそうなってしまう事もむべなからぬかもしれないが、それにしてもこの酒場はいささか度を越しているようにも感じる。足元がコンクリート剥き出しだからだろうか。

もっと端的に言えば、ゴキブリとか平気で出てきそう。

レンはそこまでの思考を脳裏にしまい込み、隣で同じ思いをしていたであろう、こっちは露骨に顔に出している従姉に口を開く。

「んで、そのメッセンジャーさんとは、ここのカウンターで待ち合わせでいいんだっけ?」

「え?……あ、あぁ、うん。そうだったね」

苦労して、人が作る壁の中をゆっくりとだが進み、厨房からの油脂で浅黒く変色したカウンター席に辿り着いた。これほどまで賑わっているというのに、カウンターは人が少なく、どことなく静かだ。おそらくそれは、この店が狩り終わりの一杯を飲むプレイヤーパーティーを狙って作られているからだろう、とレンは適当な予測をつける。

よくは知らないが、個対個がその気になれば可能であるALOとは違い、GGOではソロプレイヤーは少ないのではないだろうか。実際、先程大通りですれ違うプレイヤー達の殆どは最低でも二人組を構成していた。

とりあえず何か頼もうかと卓上のメニュー表を取り上げるより早く、すぐ隣から声が上がる。

「お前達が、レンとユウキか」

「「――――――ッッ!」」

気が付かなかった。

気配が薄いとか隠れていたとか、そういうチープな次元ではない。その男は、瞬きした一瞬の間に隣席に音もなく座っていた。

男、とは言っても、声の感じからの推測だ。都市部での戦闘に特化したものだろうか、コンクリートみたいな灰色のフーデッドコートのフードを目深にかぶり、さらに俯きがちだ。顔の委細など判るはずもない。武器はと目線を落とすが、コートが身体全体をすっぽりと覆っているため判別不可能。

声もなく固まっている二人に対し、聞こえなかったと判断したのかその男は言う。

「もう一度訊く、お前達がお館様から密命を受けた者か」

お館様?とレンとユウキは顔を首をかしげ、やっと眼前の男がシゲクニの言っていた人物なのだと気が付いた。

「え、えぇ。えと、あなたがボク達に何か授けてくださるんですよね?」

不気味な感じは拭えないのか、レンより男にほど近いユウキが若干引き気味な言葉で尋ねる。

回答は行動で返された。

カウンターの上をスーッと滑ってきたのは、無骨な茶封筒。しっかりと糊付けまでされている代物だ。

「これは?」

レンが尋ねるが、男は彫像のように固まって答えない。開けて中を見てから言え、という事だろうか。ふむ、と鼻息一つレンがべりべりこじ開けてみると、中からは二枚の薄っぺらな紙切れが滑り落ちた。

茶封筒から出たにしては驚くほどカラフルな長方形の紙だ。そこには――――

「「船上パーティーの………チケット?」」

豪華客船の写真もついている。この紙切れはどうやら、金持ち達が集まってパーティーでもしようか、みたいな金の無駄遣いとしか思えないほどの大きな船上パーティーの招待用チケットらしい。

そこまでどうにか理解した両者は、詳しく問いただそうと横を向く。

しかし、一瞬前までそこにいた幽霊のような男は、まるで幽霊そのものであるかのように綺麗さっぱりと消えていた。

呑んでいる気配すらなかったのにも関わらず、座っていた席には一杯のグラスとそのお代であろう一枚の通貨が鈍く光っているだけであった。 
 

 
後書き
なべさん「はい、始まりました!そーどあーとがき☆おんらいん!!」
レン「また長くなりそうな展開だなぁ…」
なべさん「うん」
レン「そ・こ・は!否定しろよ!!」
なべさん「え~っ、だって嘘ついたらピーッするじゃん」
レン「違う。ピーッした後にピーッするんだよ」
なべさん「……そこは否定しろよ」
レン「はい、自作キャラ、感想を送ってきてくださ~い」
――To be continued―― 
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