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ロックマンX~5つの希望~

作者:setuna
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第七話 アクセルSIDE4

 
前書き
アクセルSIDE3の続き。 

 
アクセルが帰還した時、ルインは仮眠を終え、ゼロはもう帰っていた。
メンテナンスも終え、指令室でアイリスから渡されたハーブティーを飲んでいる。

アクセル「やあ、ゼロ。今回は早かったね」

ゼロ「ふん、口の減らない奴だ」

アイリス「まあまあ、はいアクセル、ルナ。あなた達にはホットミルク」

まだ子供の2人にはハーブティーは口に合わないだろうと判断して、砂糖をいれた甘いホットミルクを渡した。

アクセル「ありがと」

ルナ「ふう~…やっぱアイリスの作ったホットミルクは美味いな」

一口飲んで言うルナに、ルインは思わず苦笑した。

ルナ「そういや、エックスは?医務室か?」

ルイン「エックスなら出掛けてるよ~」

ハーブティーと茶菓子のクッキーを口にしながら答えるルイン。

アイリス「エックスなら…」

アイリスが答えを言い切る前にモニターに映像が映る。

エックス『こちらエックス。…?アクセルじゃないか。エイリアは?』

アクセル「エイリアなら食堂に行ったよ。ダグラスと話があるんだってさ」

エックス『そうか』

モニターに映るエックスの背後には大破したビルやボロボロの鉄材が無残な姿をさらしている。
アクセルはそれにいたく興味をそそられた。

アクセル「エックスは何してんの?」

エックス『レスキュー部隊で活動中、被災者の救助に当たってるんだ』

アクセル「はあ?」

素っ頓狂な声を上げる。
ハンターがレスキュー?
あれは基本的に非武装タイプのレプリロイドの仕事ではないか。

エックス『俺にも出来ることがある。そういうことだ。』

アクセル「戦えないのに何やってんのさ?怪我しないうちに帰ってきた方がいいんじゃない?今のエックスに何が出来るっていうの」

ルイン「アクセル!!何てことを言うの!!」

ルインが叱責するがアクセルの発言はある意味当然かもしれない。
戦えないハンターなど意味がない。
ハンターはイレギュラーを処分するために力を授かった。
その力がない今のエックスは…。
だがエックスから放たれた言葉はアクセルの胸を突くものであった。

エックス『アクセル、君が言っているのは“力の正義”か?』

静かでありながら厳しさを秘めた声で問い掛ける。

アクセル「え…?」

エックス『力があれば何でも出来ると考えることは、力こそ全てを支配するという意味だ。それは多くの犠牲を生み出してきた。あのシグマも同じことを考えていた。“自分達レプリロイドは優れた存在、人間など不必要だ”と』

アクセル「そんなつもりで言ったんじゃないよ!!シグマなんかと一緒にしないで!!あいつは悪い奴じゃないか!!」

エックス『………』

今度はエックスが黙る番であった。
2人が現実空間で一緒にいれば争いになっただろうか?
エックスとアクセルの視線は互いに厳しい。
アクセルには世界の“悪”に例えられたことが酷く耐えられなかった。
しかし数多くの戦いを制したエックスにはアクセルの視線など大したものではない。
アクセルから視線を外し、アイリスの姿を見つけると口を開く。

エックス『アイリス、レスキュー部隊の増援を頼む。これ以上被害を広げないためにも』

それだけ言うとエックスは通信を切った。

ルナ「あ~らら…エックスが怒っちまったなあ…アクセル?不満か?」

アクセル「だってシグマと同じなんて…」

ゼロ「お前の考えを極端に言えばの話だろう」

アイリス「アクセル、エックスは戦いが嫌いなの。力が必要だと認めていても、それが絶望にも希望にもなることを誰よりも知っているから…シグマの暴走を目の前で見たから尚更……あなたを認められないなんて言ってるわけじゃないわ。」

アクセル「…分かったよ。」

不承不承、頷くアクセルにアイリスは微笑むとクッキーを差し出す。
アクセルはドライブルーベリーとドライクランベリーが入ったクッキーをかじる。
焼きたてのクッキーの甘さにアクセルの機嫌も浮上する。

ゼロ「(ガキだな…)」

単純なアクセルにゼロはクッキーを口に運びながら、呆れたように心中で呟いた…。

アクセル「あ、そうそう、話の続き…」

唐突に話題を変えた。
アクセルが逃げ出した理由を4人に話す。

アクセル「僕の仲間、レッドアラートには、腕利きのレプリロイドばかり揃っていたんだ」

ゼロは彼らについては、エイリアとアイリスから少し聞いていた程度で詳しくは知らないので、そのまま口にする。

ゼロ「…レッドアラートの殆どが犯罪者で構成されていると聞いているが?」

アクセル「そっ、そんなことないよ!!基本的には、悪いことはしない主義!!……そりゃ時には悪いことした奴らもいるけど…」

反射的と言っていいほどの速度で、必死になって反論するが、後半は言い訳めいて小さくなった。

ゼロ「…それで?」

話が逸れたと先を促せば、アクセルは俯いてしまっていた。

アクセル「でも、本当に悪いことなんてすることはなかったのに……突然みんな変わってしまったんだ!!」

ルイン「変わった?…変わったってどういうこと?イレギュラー化とは違うの?」

アクセル「……違うと……思…うけど…」

ルナ「…突然ってのは、どういうことだ?」

話が逸れる前にルナがアクセルに聞き返す。

アクセル「レッドの言うことを聞かなくなって……イレギュラーハンターや罪もないレプリロイド達まで襲い出したんだ!!」

その時のことを思い出しているのか、彼は拳を握り締める。

アイリス「アクセル、彼らは突然変わったと言うけど、変わる前に何があったか教えてもらえないかしら?」

アクセル「ある日レッドから、コピーしたDNAデータを渡すように言われて……。それまでは一度もそんなこと言われたことなかったのに……」

彼の、意味深げな言い方に、ゼロは鋭く眼を細める。

ゼロ「……まさか?」

僅かに間を置いて尋ねた彼に、、アクセルは頷いた。

アクセル「そうなんだ…。それからしばらくして、みんながどんどんパワーアップし始めたんだ……」

ゼロはDNAデータについての知識はほとんどないが、会話の内容から“そのこと”を察するのは自然な流れだった。

ゼロ「……DNAデータを利用したのか?」

アクセル「多分ね…詳しいことは分からないよ。レッドは何も教えてくれなかったから……。でもこれだけは確かなこと、僕はいつの間にか利用されていたんだ!!この能力のせいで!!」

唇を噛み締め、きつく拳を握る。
肩は微かに震えている。

ルイン「…アクセル」

哀しみを大いに含んだ声に、何と言えばいいか判らず、複雑な心境で彼の名を呼ぶ。
聞こえていないわけはないのだが、気付いていないかのように彼は続けた。

アクセル「みんなは自分達のパワーアップのことばかり考え、僕はひたすらデータ集め。最初はみんなの為と思っていたんだけど………やり方がどんどん非道くなっていって、耐えきれず逃げ出したんだ……。……それと……」

ゼロ「…うん?それと…何だ」

言葉を止めたアクセルを、ゼロが優しく促せば、彼ははっとしたように首を振った。

アクセル「アハハッ……な、なんでもないよ!!」

笑って誤魔化す。
ゼロは少し訝しんだが、追及はしなかった。

ルナ「ところでアクセル」

アクセル「何?」

ルナ「DNAデータでパワーアップする技術は確かに存在するけど、それを知っているのは極一部のレプリロイド工学員くらいなんだ。レッドアラートにそういうことが出来る人材がいるとはとてもじゃねえが思えねえんだけどよ?」

アクセル「うん、そうなんだ。レッドアラートにはそんなことが出来る奴なんかいないんだ。」

ゼロ「…どういうことなんだ……?」

ルイン「一体レッドアラートで何が起こっているの…?」

ルナ「…こうしていても始まらねえよ。とにかく今は前に進むしかない。ほれ、アクセル」

アクセル「え?わっ!!?」

ルナがアクセルに手渡したのは黒を基調としたルナのバレットと同型の銃とハンドボウガンのような銃である。

ルナ「黒い銃がディフュージョンレーザー。ホーミング性能のある拡散レーザーが放てる。連射もバレット程じゃねえけど利く。そしてそのハンドボウガンみてえな銃はウィンドブーメラン。文字通り、ブーメランを発射する銃だ。ディフュージョンレーザーはアリクイック、ウィンドブーメランはカラスティングの能力を参考にしたんだけどストンコングの能力を参考にするのは無理だったから能力をコピーしてくれ」

アクセル「分かった。ありがとう」

礼を言うとアクセルはミッションに向かう。




































灼熱の溶岩が渦巻いているコンビナートで、アクセルとルインは走っていた。

アクセル「それにしても暑いね~…」

ルイン「そうだね。でもコンビナートだから仕方ないよ」

メットールを両断しながらルインが苦笑した。
2人はアクセルはホバーを、ルインはダブルジャンプを利用して突破していく。

ルイン「アクセル、ここのボスについて何か知らないかな?」

アクセル「…多分ハイエナード。炎の攻撃が得意で、分身も使えるんだ」

ルイン「分身?」

アクセル「うん…。本物と全く同じ戦闘能力を持ってて、見分けがつかないんだ」

ルイン「…何か、区別する方法はないかな?」

隣を走るルインに聞かれ、アクセルはと首を捻る。

アクセル「本体が大きなダメージを受けたら、分身もほんの少しだけ動きが止まるけど……区別はちょっと…」

ルイン「そっか…」

2人は転送用カプセルに入ると広い所に出た。



































アクセル「ここは…」

2人は用心して進むと肉食獣を模したレプリロイドが喘いでいた。

ルイン「あれがハイエナード?」

ハイエナード「ウゥ…くっ、苦しい…」

アクセル「そうだけど…」

目は麻薬中毒者のように血走り、呼吸には気管が詰まったような音が聞こえる。
しかし纏うオーラは得体が知れず不気味である。
ハイエナードがアクセルとルインに振り向いた。

ハイエナード「…お前達か?お前達が俺を苦しめているのか?…分かったぞ!お前達を八つ裂きにすれば苦しくなくなるっ!!そうだ!そうだろ!!?そうに違いない!!」

アクセル「…ハイエナード……待ってて。今、楽にしてあげるよ…」

真っ直ぐに構えられたバレット。
瞳には、声音とは裏腹に強い意志と覚悟が宿っている。

ルイン「来る!!」

3体のハイエナードがアクセルとルインに迫る。

ルイン「これがハイエナードの分身…どれが本体!!?」

セイバーの斬撃を浴びせるが、ハイエナードはのけ反るだけだ。

ルイン「アクセル!!分身は私に任せて!!多分本物はあのメカニロイドの上だよ!!」

アクセル「…お願い!!」

メカニロイドの脚部にディフュージョンレーザーを放ち、動きを止める。

ルイン「…はあっ!!」

それを見たルインは分身に斬撃を見舞い、1体の分身を両断した。
メカニロイドの上に移動するとハイエナードが分身を再び生み出す。
3人のタックルを喰らい、アクセルは墜落する寸前まで吹っ飛ばされた。
下はマグマ。
落ちれば即死。
メカニロイドの縁に必死にしがみついた。
目の先には焦点を失い、虚ろな表情のハイエナードがいた。
かつて共に戦った戦士が自分を失って苦しみながら戦っている。
ディフュージョンレーザーを構えると射程範囲内にいるハイエナードにホーミングレーザーが炸裂し、ハイエナードがのけ反る。
そして地上の分身を片付けたルインも加勢した。

アクセル「当たれ!!」

ウィンドブーメランを放ち、ハイエナードの左腕を両断した。
分身がルインに迫る。

ルイン「喰らえ…獄門剣!!」

相手に強烈なカウンターを喰らわせる必殺技を繰り出し、ハイエナードを粉砕した。
次にセイバーからバスターに切り替え、バスターを向ける。

ルイン「スナイプミサイル!!」

動き続ける分身達と本体に向かっていくホーミングミサイル。
ミサイルは直撃するが、致命傷には至らない。
ハイエナードの手から放たれた炎をダッシュで避け、再びアクセルとルインは狙いを定める。
足場がガクン、と動き、突然のことにアクセルとルインはよろけた。
隙の出来た少年に、ガゼルの背から発射されたいくつもの小型ミサイルが、頭上から降ってくる。
ルインはバスターをチャージしてフルチャージショットでミサイルを迎撃するが、分身達のタックルをまともに喰らい吹き飛んだ。

アクセル「危ない!!」

ホバーを使い、何とかルインと一緒にメカニロイドの上まで戻る。

ルイン「ありがとうアクセル」

アクセル「うん。一気に決めるよ!!」

ルイン「OK!!」

フルチャージショットを放つ。
巨大な砲撃はダメージを受けた分身を破壊し、ハイエナードに致命的なダメージを与える。

アクセル「さよなら…」

バレットのエネルギー弾がハイエナードの胸を貫いた。
ハイエナードは間もなく一際大きく叫び爆発した。
主を失ったガゼル型メカニロイドは機能を停止した。

アクセル「ハイエナード…」

胸が痛みを抱き締める。
友を殺した。
バレットを握り締める手が震える。
戦いが熾烈になるに連れて、自分はこの痛みを背負っていく。
アクセルはそう思った。
それでも。

アクセル「僕は戦い続ける。貫いてみせるよ。僕の心を」

ルイン「…それじゃあ帰ろうかアクセル?みんなが待っているよ」

アクセル「うん」

決意を新たにしたアクセルはルインと共にハンターベースに戻るのであった。 
 

 
後書き
ハイエナード撃破。

オリジナル特殊武器。

ディフュージョンレーザー

アリクイックから得た特殊武器。
形状はルナのバレットのブラックカラー。
ホーミング性能のあるレーザーが放てる。

ウィンドブーメラン

カラスティングから得た特殊武器。
形状はロックマンエグゼの雑魚敵ラウンダを銃の形にしたような形状。
どちらも性能は通常のスナイプミサイルやウィンドカッターに近いが連射が利く。 
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