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『曹徳の奮闘記』改訂版

作者:零戦
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第四十一話




「被害はどうなっている?」

 俺はシ水関にいた。

 前線陣地にはクロエと雪風がいるので心配は今のところ無い。

「兵士の死傷者は全体的に約千五百近くになるわい」

 零が報告する。

「今はロッタと衛生隊が兵士達の手当てをしている」

「分かった。捕らえた将とかはいるか?」

 戦が始まる前に顔良を捕らえたけど、今は野戦病室にいる。

「あ、あぁ。一人おるんやけど……」

 その時、霞が言いにくそうに言う。

「ん? 誰だ?」

「………公孫賛や……」

 ………は?

「なして?」

「ウチと恋が袁紹軍を攻めている時に、後方から公孫賛が助太刀に来たんやけど、恋に一合で負けて捕虜になったんや」

 ………なんと言う意外だ。

「まぁ、よくやったよ呂布」

「………恋でいい」

「いいのか?」

「………王双、優しい」

「……そっか。なら長門と呼んでいいからな」

「………うん」

 恋が頷いた。

「まぁ、今夜の軍儀はこれくらいにしとくか」

「なぁ、長門。今夜は兵士達にも酒を飲ましてくれへんか? そろそろ皆が訴え始めてるねん」

「うむ。儂の隊でもチラホラと聞いておる」

 霞に同調するように零も言う。

 ……成る程。

 兵士達には酒を控えるよう指示していた。

 油断してたらやられるからな。

「………まぁいいだろう。ただし、酒は一人三杯までな」

「助かったで長門ッ!! いやぁウチも飲みたかったからなぁ」

「うむうむ」

 霞は喜び、零は頷く。

「三杯以上飲んだら罰すると言っとけよ」

「はいなッ!!」

 霞と零は嬉しそうに席を立った。

 さて、軍儀も終わったし公孫賛にでも会いに行くか。




―――地下牢―――

「やぁ公孫賛」

「………王双か」

 地下牢のには捕らえた公孫賛がいた。

「済まないな窮屈なところで」

「いや、私は敗軍の将なんだ。勝者には大人しく従うさ」

 公孫賛が苦笑する。

「ところで王双。何しに来たんだ?」

「あぁ単刀直入に言うけど、公孫賛。俺達の仲間にならないか?」

「………随分と突発的だな」

 公孫賛が冷や汗をかく。

「まぁな。公孫賛はこの連合が仕組まれていたのは知っていたのか?」

「………あの阿呆の事だから何かあるとは思っていたけど、仕組まれていたとはどういう事だ?」

 ふむ、そこまでは知らなかったか。なら、説明するか。

 俺は公孫賛に全てを話した。




「………それは本当なのか?」

「あぁ。今は十常侍の張譲を探しているが後一歩のところだな」

「……あの阿呆は……」

 公孫賛は溜め息を吐いた。

「どうだ公孫賛? あの阿呆を一緒に叩かないか?」

「………私の部下の命を保障してくれるなら構わない」

 公孫賛は覚悟を決めたみたいだな。

「間者からの報告では、公孫賛の部隊は劉備軍が指揮しているとの事だ」

「……そうか。なら心配はないかな」

 公孫賛は立ち上がって俺に臣下の礼をした。

「幽州牧、公孫賛は王双殿の配下になります」

「うむ。それと真名は長門だ」

「私の真名は白蓮だ」

 こうしてハム……じゃなくて公孫賛が仲間になった。

「誰がハムだよッ!!」

「スマンスマン」





―――孫策軍陣営―――


「一体何なのよ冥琳?」

 天幕には捕らわれた陸遜と呂蒙以外の将が集められていた。

「………これは先程、雪蓮が王双から渡された物です」

 周瑜は袋から何かを出した。

 天幕に備え付けられた机にコロンと判子のような物が袋から出てきた。

「「なッ!?」」

 判子のような物を見た孫堅と黄蓋は驚きの表情をした。

「母様と祭は何なのか分かるの?」

「………雪蓮。それは『玉璽』よ」

『ッ!?』

 孫堅の言葉に知らなかった者が驚いた。

「な、何で長門がこれを私に渡したのよッ!?」

 孫策は思わず叫んだ。

「………分裂だ」

 周瑜がポツリと呟いた。

「王双は連合軍を外からではなく、内から崩壊させる気だ」

『ッ!?』

 周瑜の言葉に皆は唖然とした。

「そして内から崩壊させる手段として、王双達を裏切った私達が選ばれたのだ」

『……………』

「恐らく、私達が玉璽を持っている事は他の部隊は気付いているだろう。私達が、取るべき道は………」

 周瑜は孫策に目を向けて、孫策は頷いた。

「連合軍からの脱退………ね」

 孫策はそう言ったがこの時、天幕付近に一人の間者がいる事に気付かなかった。





―――曹操陣営―――

「華琳様、間者から気になる報告が来ました」

「気になる報告ですって?」

 曹操軍の猫耳軍師である荀イクが曹操に報告する。

「は、敵将王双が先の戦闘時に孫策に何やら袋を渡していました」

「その報告は私は聞いたわ」

「はい、間者は一か八かの賭で孫策陣営に浸入し、孫策の天幕で将全員が何やら話し込んでいたと」

「ふぅん、それで?」

「確証はありませんが、言葉の単語に『玉璽』と言っていたそうです」

「………何やら面白そうね。桂花、孫策陣営への間者を増やしなさい」

「は、分かりました」

 荀イクはそう頷いた。





 
 

 
後書き
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