| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

小出しにしていって

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第五章

「こんなところで寝たら風邪ひくよ」
「そうですよね」
「だからせめてベッドで寝ないと」
「わかりました」
「けれど立てないよね」
「ちょっと」
「仕方ない、それじゃあ」
 自分が抑えられるかどうかいささか自信がないがそれでもだった。
 優斗は智秋を助けることにした、そして。
 その肩を担いでだ、そしてだった。
 智秋の部屋の中を進む、智秋の案内を受けて。そうして彼女をそのベッドがある寝室に連れて行って。
 ベッドに寝かした、それで帰ろうとしたが。
 智秋は見逃さなかった、すぐにだった。
 その優斗にこう言った、その言葉が。
「あの、待って下さい」
「待ってって?」
「折角来てくれましたから」
 何とかという仕草でベッドから身体を起こして彼に言うのだった。
「何か食べていって下さい」
「いや、もう充分食べたから」
 二人一緒にいる時にとだ、優斗は答えた。
「だからこれでね」
「そういうことは言わないで下さい」
 起き上がって脚を動かしながらの言葉だ、動かしてみせて優斗に自分の脚を見せたのだ。何気に胸のボタンも少し外して胸も見せている。
「折角ですから」
「折角って」
「それにもう」
「もう?」
「時間遅いですから」
 智秋は今度は時間のことを話した。
「電車もないですよ」
「そういえばそうだね、じゃあカプセルホテルに泊まって」
「お金かかりますよね」
「結構安いから」
「それでもお金かかりますよね、それにカプセルホテルあまり疲れが取れないっていいますし」
「そうでもないよ」
「そう仰らないで。何でしたら」
 智秋は微笑んでだ、優斗を少し流し目で見て自分から言った。
「今日は」
「早坂さん、まさか」
「どうですか?」
 優斗は答えなかった、だが。
 その喉をごくりと鳴らした、そしてだった。
 次の日だ、智秋は同僚達に笑顔で言った。
「完璧にね」
「いけたのね」
「成功したのね」
「課長さん朝早くにお部屋を出たけれど」
「成功ね」
「よかったわね」
「ええ、一晩一緒にいたわ」
 このことも言うのだった。
「それではね」
「そう、遂にそこまでいったのね」
「それじゃあ今度は」
「さらなる一手を打つのね」
「そうするわ、そして」 
 次も手を打って、というのだ。
「ゴールするわ、二人で」
「そうなのね、じゃあね」
「次もね」
「さて、次はね」
 どうするかと言う智秋だった、そうして実際に優斗との関係を深めていった。だがこの日から三ヶ月後だ、智秋は愕然として同僚達に言った。
「ちょっとね、参ったわ」
「参った?」
「参ったってどうしたの?」
「何か今日のあんたおかしいけれど」
「顔青いわよ」
 まずはその顔色から言われた。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧