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小出しにしていって

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第四章

「もうお掃除したわ、お風呂もおトイレもね」
「智秋元々綺麗好きだけれど」
「今回は特になのね」
「最初が肝心だから」
 それ故に、というのだ。
「もうお部屋の隅から隅までね」
「お掃除したのね」
「戦場を整えたのね」
「そう、だからね」
 今度で、というのだ。
「わざと飲み過ぎるから」
「正確に言うと飲み過ぎたふりよね」
「それをするのよね」
「そう、とにかくね」
 ここで、というのだ。三度目で。
「勝負かけるから」
「そうなのね、じゃあね」
「頑張ってね」
「今度こそね」
「決めるのよ」
「この日の為に少しずつ進めてきたから」
 それ故にとだ、智秋自身も言う。
「やるわ、ここで」
「健闘を祈るわ」
「朗報待ってるから」
 同僚達もその彼女を言葉で押す、その背中への押しを受けてだった。
 智秋は優斗と一緒に食事に言った、そしてここでわざとかなりの量を飲んでみせた。ただ酔ったのはあくまでふりだ。
 それでかなり酔った動きをしてみせてだ、優斗の介抱を受けたのだった。
「大丈夫かい?」
「はい、一応」
「一応って。帰られるかな」
「多分」
「多分じゃ駄目だよ」
 親切で真面目な優斗は智秋のその返事にすぐに返した。
「そんなのじゃ」
「そうですか」
「家まで送るよ」
 優斗は智秋にこう言った、実はこれも智秋の読みの中にあった。
「そうするよ」
「すいません、それじゃあ」
 酔ったふりの中でだ、智秋はここでも優斗の退路を断った。ここで一人で帰られると言うと実際に彼が帰りかねないからだ。
「お願いします」
「タクシーで帰ろうか」
「はい」
 こう応えてだった、そのうえで。
 二人で家に帰った、智秋のその部屋に。そして。 
 部屋の鍵は自分で開けた、ここで優斗は安心して帰ろうとした、だが。
 智秋はここでだ、その優斗にこう一言言った。
「気分悪いです」
「えっ、大丈夫?」
「ちょっと、まずいかも知れないのです」
「じゃあどうすれば」
「ベッドに」
 酔いがさらに回ったふりをしての言葉だ。
「ベッドで休めば」
「ベッドだね」
「はい、ベッドに行けば」
「歩けるかな」
 優斗は玄関に入ったところで自分に背を向けてしゃがみ込んでしまった智秋の背中を見つつ言った。智秋は既に靴を脱いでいる。
 白のブラウスからブラが透けていてだ、青い丈の短いスカートの後ろのラインも見えている。ストッキングに覆われた脚も。 
 優斗もそれは見ていた、だが。
 彼は抑えていた、それで最後まで抑える為に早く帰ろうとした。しかしそれでも智秋はその彼にこう言った。
「無理かも」
「そ、そうなんだ」
「玄関で少し休んで」
「それは駄目だよ」
 優斗は智秋の今の言葉はすぐに否定した。 
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