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魔法薬を好きなように

作者:黒昼白夜
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第15話 モンモランシーへの治療

話すのをしぶっていたモンモランシーだが、ポツリポツリと話し出した。

昔、自城から遠方の貴族の城で階段から落ちた拍子に、目に大けがをしたことがある。その時は、すぐに治療ができなくて数時間ばかり、片目のままでいたらしい。どうも、ここらあたりが原因らしい。トラウマみたいなものか。

「それが原因? とすると、今回のは、俺にも責任の一端があるわけか」

「あの話ぐらいで、こんなふうになるなんて思っていなかったは……」

「だとすると、家の領地に伝わっている魔法薬が効くかもしれない」

「家でなくて領地?」

「まあ、風土病と思ってくれればいいよ。その魔法薬は水の流れを正常にする魔法薬の一種なんだけど、かなり強力なんだ。だけど、原材料が原材料なので、他のところにはだしていない魔法薬だよ」

「原材料って」

「いや、原材料は聞かないほうがよいと思うよ。なんせ魔法薬には変わった原材料もあるのは知っているだろう?」

「そうだけど」

「段差が怖くなくなって安定してから、それでも教えてほしいなら、教えるけれど」

「それで、その魔法薬って、どれくらいで手に入りそうなの?」

「原材料は、トリスタニアの家にあるから、俺が直接とりにいけば、多分、調合は、夕食前には終わるけど、副作用として、飲んだ直後の2,3日は眠気が強くでるから、魔法薬に慣れるまでは、就寝前か、それとも授業を休むのかな」

「それでも、効くのなら、今よりマシね」

「効くと思うけど、まずは今日の授業を休んで、食事は部屋で取れるようにメイドに言っておくから、部屋で横になっているといいよ。遅くても、夕食前には一度くるから」

「期待しているわよ」

「期待をしてもいいと思うよ」

原材料は、自領にいる翼竜人からの小水をベースにした魔法薬だ。一番よいとされる赤ん坊の小水を固定化で保存してあるから、それをまずは1週間分までもってくるつもりだ。翼竜人は薬草をよく食べているから、その小水は天然の魔法薬製造種族って感じだな。
ただし、亜人の小水を飲むなんて趣味は俺には無いから、原材料の99%が小水ってモンモランシーが知ったら、どう反応するだろうかねぇ。

モンモランシーも本気で寝込まなきゃいけないほど、悪いわけじゃないから、1カ月使うことは無いだろうが、さて何日で治るかな?



俺は食堂でメイドをつかまえて、モンモランシーの分の食事を部屋に届けてもらうのと、教師に授業を休む旨を伝えるようにしてもらい、朝食ぐらいはとらせてもらう。するといつもの女子生徒たちから

「あら、今日、モンモランシーは?」

「部屋まで行ったけれど、調子が悪いんで寝ているそうだ」

「そういえば、昨日は、なんか元気なかったものねー」

「なんとなく、俺もかんじていたけど、やっぱりまわりからも、そう見えていたんだ」

「ええ。けど、本人は言われるのは嫌でしょうから、聞かなかったけれど」

なるほど。それで、昨日の女子生徒は俺に言ってきたのか。

「まあ、静かに寝かせておいた方が良いと思うから、見舞いにはいかない方が良いかな。あっ、それに俺は、ちょっと首都に買い出しにいってくるから、授業には出ないから」

「あら、そして噂の恋人のミス・ベレッタと会ってくるのかしら?」

「いや、残念ながら、授業が終わるかどうかぐらいには、こちらに戻ってくる予定だから、さびしけど会えないねぇ」

「それって、のろけかしら」

「好きにとってくれ」

って、食事より、話すのに時間がかかるなぁ。



朝食後は、トリスタニアにむかって、家においてある原材料をとってくるだけだ。魔法衛士隊として前線にでていれば、精神が病むかもしれないと思って用意はしてあったが、まさか魔法学院で使うとは思っていなかったので、自室で保管しておいたものだ。
ティファンヌ宛の手紙を家のメイドに預けて、送ってもらうことにする。以前は、こんなこともできなかったから、多少は彼女も喜んでくれるんじゃないかな。内容は、残念ながら平日に会えるのは来週になりそうということだけど、平日に会えることもできるのだからな。

魔法学院にもどったのは比較的早かったが、モンモランシーが睡眠の魔法薬を飲んでいるとしたら、水のメイジとして感覚的に90分単位で睡眠のリズムをきざんでいるのは知っているはずだから、4時間半ぐらいで調整しているだろう。だから昼食をとって薬を飲んだとしたなら、5時半ぐらいに行った方が良いだろう。



そして6時を目途に、モンモランシーの部屋に行って部屋に入らせてもらった。

「やあ、気分はどうだい?」

「多分、部屋の中は動けるけど、階段はどうかしらってところ」

「魔法薬の調合する前に、身体の毒を消す部分と、頭のところを探らせてほしいだけど、いいかな?」

「肝臓でわかるわよ。予想はしていたけど、それってどうしても必要かしら」

「自分でわかるのなら、しなくても良いよ」

「ふん。残念ながら私ではわからないわよ」

「今日、明日、明後日と3回は確認させてほしい。あとは、飲み続けることになるなら1週間毎におこなうけど、長くても1カ月はかからないと思うよ」

「水の秘薬より強力って、信じがたいけど、確かに精神的なものに関しては、水の秘薬って量を使うから、信じてみるわ」

「じゃあ、肝臓はキャミソールの上からでかまわないよ。細かくみるわけじゃないからね。それから頭の方は全体的に触らせてもらうから、それは勘弁してほしい」

「わかっているわよ。けど、肝臓のだいたいの位置は手で指さすから、毛布の中に手をいれてみてね」

「わかりました」

そうして触診を開始していったが、肝臓は強力な魔法薬を飲んでいるにもかかわらず、元気に動いている。頭の方は髪が少々邪魔だったが、だいたいの感触はつかんだので、それをノートに書き写す。その間のモンモランシーは、文句ひとついわずに、こっちの言う通りに動いてくれた。おかげではかどった。

「これから、自室で魔法薬の最終的な調整をしてくるけれど、これなら今の調合でもかまわないかもしれないな」

「そのあたりは、そっちが専門なんでしょ。原材料を教えるのも治ってから教えるって、こっちでわかるわけないじゃない」

「そうだね。それじゃ部屋で調合して、夕食の合間になじませておくから、また、あとで来るよ」



夕食後、寝る前に飲むようにとモンモランシーへ小瓶で魔法薬を渡して、翌朝彼女の部屋の前へ行って行くと、朝食へ行く気にはなっていた。

「朝食はやっぱり、食堂でとるんですか?」

「ええ、昨日より調子もいいし、階段を実際に降りてみたいの」

「本人にやる気があるんだったら、いいんですけど、無理だと思ったら、言ってください。まわりから目立たないように『念力』で身体を支えますので」

「貴方のその軍杖で、目立たないようにってどうされるのかしら?」

「やっぱり、無理ですかね」

「だと思うわよ」

「なら『レビテーション』で浮かせますよ」

「大丈夫だから。行くわよ」

俺は、食堂までいつでもサポートできるようにと、水の感覚を感じ取りながら行くが、特に問題はなくついたので、人が多い食堂では水の感覚を閉じて、いつもの席まで行った。
席では、他の女子生徒たちから

「大丈夫だった?」

「どう調子は?」

と尋ねられていたが、

「昨日はちょっと調子が、悪かっただけだから。今日は授業にでるわよ。もしも、調子が悪くなったら、途中で退室させていただきますけど」

「そうならないと、いいわね」

「そうね」

そういう風に朝食もすみ、授業や、昼食も終わり、授業後はモンモランシーの部屋に入って、

「体調はどうですか?」

「昨日とか一昨日が、嘘みたいに調子がいいわ」

「まずは魔法薬の調合はよさそうですね。それで夕食は、食堂でとられますか?」

「ええ、もちろん」

「それでは、いつものように夕食前にきますが、その時に今晩飲む分の魔法薬をもってきますので」

「それは、いいのだけど、昨日の触診ってやらなきゃ、やっぱりだめ?」

「うーん。本人が体調が良いと感じていても、しておかないと、変化だけは確認しておかないといけないんですけどね」

「なら、お風呂に入りたいから、そのあとの時間にしてくれない?」

「えっと、大丈夫ならいいですけど、誰かと一緒にいかれた方が安心ですよ」

「それなら、友人と一緒に行くから大丈夫よ」

うむ。今日はほとんど一緒にいたはずなんだが、どこで話したのやら。トイレかな?
まあ、頭をさわると髪の毛が、乱れるから、お風呂に入りたいのなら、そっちになってしまうだろう。

「お風呂って、だいたい、どれくらい入っているつもりですか?」

「今日は短くするから、1時間くらいのつもり」

短くして1時間か。俺が長くて1時間ってところだから、普段はどれくらいはいるんだろうかって、一瞬ぼけたことを考えたが、

「時間できめますか? それとも、お風呂からの帰りに、男女間の寮の間でまっていましょうか?」

「時間で……9時半からね」

「おおせのままに」

その日は、夕食後は、念のため部屋までついていって、部屋の前でUターンとなって、軽く運動をしてから、約束の時間にモンモランシーの部屋で触診をした。



そんな風にして、触診は3日にわたりおこなったが、体調に変化はなかったので、魔法薬を減薬していく。早く薬をやめたいとのことなので、減薬量は2割として、3日間に一度ずつ触診をしていくことにした。触診といっても、肝臓の方は6日間に1回といったところだけど。

それで、虚無の曜日は、俺が1人で化粧品店に行くことになった。
あそこって、男性客は入らないから、めだつんだよな。とほほ。
 
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