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ベッドの横に

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第六章


第六章

「あなたをどうしてもね」
「一緒になりたかったから。ああして」
「御免なさいね、騙して」
「それは確かに嫌ですよ」
 真吾にしてもだ。そうされていい筈がなかった。しかしだ。
 彼は優しい笑みを浮かべてだ。妻となっている彼女にこう言った。
「けれど」
「けれど?」
「僕のことが好きなんですね」
「そうよ。誰よりもね」
 こう言うのだった。
「はじめて見た時からずっとね」
「ずっとですか」
「私、一人の相手としか付き合えないから」
 そうしたタイプだというのだ。
「だからね」
「わかりました。けれど」
「けれど?」
「それなら最初から言ってくれたらいいんですよ」
 こう妻に言うのであった。
「最初から」
「そうすればよかったの?」
「そうですよ。僕も」
「あなたも?」
「女の人の家にあがるって」
 彼が言うのはこのことだった。
「好きな相手の部屋だけですから」
「そうだったの」
「はい、だから朝も戸惑いながらも受けました」
 弥栄子のその強引な言葉をだというのだ。
「だからだったんですよ」
「じゃあ私最初から」
「そうですよ。好きですよ」
「ううん、何かこれって」
「変なはじまりになっちゃいましたね」
「そうね」
 二人でだ。ベッドの中で苦笑いだった。
「どうもね」
「そうですよね。けれど」
「けれど?」
「今はこうしてですね」
 真吾がだ。弥栄子を見ながら言った。
「こうして二人で」
「そうね。最初はお芝居だったけれどね」
「それでも今は」
「本当にね。二人でね」
「そうなってますよね」
 笑顔で話す二人であった。そうしてであった。ふたりはそれからもだ。同じベッドの中で共に寝るのだった。笑顔を浮かべ合って。


ベッドの横に   完


                  2011・1・31
 
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