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少年少女の戦極時代Ⅱ

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禁断の果実編
  第108話 救出作戦 ①



 ヘキサが舞をタワーへ連れて行った。

 ペコからの報せを受けたビートライダーズ+大人2名は、ガレージの中で誰も言葉を発さなかった。

 もしこれが、舞が強制的に攫われたなどの事態であれば、紘汰はすぐにでも動くだろう。だが、舞は自発的にユグドラシル・タワーへ行った。しかもヘキサに連れられて。その二つの事実が、彼らを足踏みさせた。


 誰一人として動かなかった中で、咲はソファーを立ってドアへと歩いて行った。

「咲ちゃん?」
「あたし、行くね。ヘキサがタワーに舞さんを連れてったの、何でか確かめなくちゃ。トモも捕まったままだし」
「一人で? 無茶だ!」
「だいじょーぶ。あたし、空飛べるもん。上からならきっと引っかからずに行けるはずだから」
「ダメだ!」

 紘汰が咲の前までやって来て、咲の両肩を掴んだ。
 彼の目は本気で「行くな」と訴えていた。最近、紘汰は咲をヒマワリアームズに変身させることに反対を言うことが増えた。

「行くなら俺も一緒に行く。地上から。戦極凌馬に案内させて。俺だって、ミッチが何であっちに付いたか確かめなきゃいけないから」
「で、でも、紘汰くん」
「室井、好きにさせてやれ。進んで死にたい奴を止める義理もない」
「戒斗くん!?」

 戒斗は立ち上がると、不良のメンチ切りのように紘汰を睨みつけた。

「せいぜい室井を守って派手に散って来い。舞を取り戻す絶好の隙が出来る」
「! 戒斗、お前」
「俺も行く」

 声を上げたのはザックだった。

「咲の言う通り、まだ攫われた人たちが大勢いるしな」
「……な、何だよっ、この黙ってる奴がカッコ悪いみたいな流れはっ」

 城乃内まで立ち上がった。

「まったく、とことん面倒な子たちね」

 凰蓮も、弟子が参戦するからか、立ち上がった。

 これでアーマードライダーのほとんどがタワーへの侵入を支持したことになる。
 咲は紘汰を見上げ、紘汰と笑い合った。






 湊が戦極凌馬に連絡を取って、ユグドラシル・タワーに侵入したい旨を告げると、凌馬は10分と経たず現れた。

 黒影トルーパー隊が乗り捨てたらしいカーゴ車を一台拝借し、皆でまず沢芽市の外へ出るべく、凰蓮が運転手として車を走らせる。

 車内の緊張度は高かった。人質救出と、いつ裏切るか分からない凌馬がいるせいだろう。

 咲がヒマワリアームズに変身して、一人一人、タワーの上から連れて行く作戦を提案したが、これは紘汰に強く却下された。

「テレビの電波をジャックした、レデュエという名のオーバーロード。おかしいとは思わなかったのかい? 相手は米国に戦略ミサイルを撃ち返すほどの途方もない力を持ってるはずなんだ。それがなぜキミ一人に苦戦する?」
「それは……」
「レデュエよりもっと強い奴が控えてる、ってことだろ」

 咲は思い出した。貴虎とヘキサと“森”にいた時に会った、白い王。

「そっか、王さまっ」
「王さま?」
「オーバーロード、っていうか、フェムシンム? の王さまが“森”の奥にいたの」
「へえ、オーバーロードの王、ねえ」

 凌馬がとても愉しげな声を返した。
 しまった、と咲は口を押さえたが、遅かった。よりによって一番渡してはならない相手に、ロシュオの情報を渡してしまった。

 そこでカーゴ車が大きく揺れた。

「ひゃっ」
「何だ!?」

 カーゴ車が停まった。

 一番に飛び出したのは紘汰と戒斗。咲も慌てて彼らに続いた。
 車を囲むように大量の、否、膨大な数のインベスの群れがいた。 
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