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殺し屋いじめ

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第三章

「別に悪戯をしてもな」
「何もしないとありますね」
「そんなことは書いていない」
 一切、というのだ。
「だからわし等がそうしたことをしてもな」
「問題ありませんね」
「ああ、ない」
「じゃあやっていいですね」
「面白そうだ、たまにはこうしたことをしてもいいだろう」
「ヤクザ者でも遊びますからね」
「それじゃあな」
 こう話してだ、そのうえでだった。
 彼等は西郷を迎えた、西郷は相変わらず機械の様に無表情で無口だ。しかも動きも機械的に隙がない。
 その彼にだ、修一はというと。
 あるものを差し出した、それは。
「これは」
「間違っても毒はありませんよ」
 こう言って笑顔で葉巻を差し出したのだった。
「西郷さんお好きでしたね」
「プレゼントか」
「はい、そうです」
「貰っていいのだな」
 西郷は無口な調子で修一に問うた。
「そうして」
「どうぞ、遠慮なく」
「わかった」
 西郷は無表情なまま応えた、そして。 
 早速葉巻の先を切り吸いはじめた、だが。
 ここで西郷は思わずむせた、そのうえでこう言った。
「唐辛子か」
「はい、中に入れてみました」
「そうか、唐辛子入りの葉巻か」
「如何でしょうか」
「面白い演出だ」
 表情を変えず言う西郷だった。
「生まれてはじめての演出だ」
「楽しんで頂けたでしょうか」
「契約内容に俺への悪戯のことは書かれていない」
 西郷はこのことを自分から言った。
「だから構わない」
「それは何よりで」
「しかし。この葉巻はな」
 どうだったかと言うのだった、唐辛子入りの葉巻は。
「まずかった」
「そうですか」
「こんなまずい葉巻ははじめてだ」
 何しろむせてしまった、まずいどころではなかった。
「二度と吸いたくない」
「こういうことは二度としませんので」
「そうしてもらうと何よりだ」
 機械的な動きで応えた西郷だった、まずは葉巻だった。
 そしてだ、彼が去ってからだった。修一は会長に楽しげにこう囁いた。
「まだありますから」
「後ろに立ったら殴るあれを応用してか」
「いえいえ、それはまだです」
 悪代官に囁く悪徳商人の様な顔で言うのだった。
「まだあの人には特徴があるではありませんか」
「独特な人だからな」
「はい、それがどれもあまりにも有名なので」
 氏素性はわからないが行動や癖は有名なのだ。
「ここでまた、です」
「仕込んでおいたのだな」
「はい、見ていて下さい」
「では楽しみにさせてもらうぞ」
「それではな」 
 こう話してだ、そしてだった。彼等は西郷を見守るのだった。
 西郷は仕事に赴く、彼はその前に女を買う癖がある。それでだった。
 この時も彼は女を買った、そうしてベッドの中に入る前にある部分にゴムを装着した、妊娠や性病に気をつけてだ。
  付けた瞬時にだった、西郷はその無表情のカミソリの様に細い目に太い眉と確かな鼻が特徴的な顔に汗をかいた。そして女に問うた。 
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