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『自分:第1章』

作者:零那
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『念願のアパレル』

職員は納得せず。
零那は強引に出所。


アパレルとは程遠い世界の殺風景な事務所。
唯一、高級毛皮ミンクのコートが1着、マネキンが着てるのがある。
超綺麗。
逆撫でしても生地が見えん。
触り心地も違う。
素人でも高級って解る。


良くして貰った職員と寮母さんには挨拶した。
他のオバチャン達は、揉めてるの散々見てた。
やから、どうせ、やっとウルサイ餓鬼が出て行った思て安心してるやろ。
職員達も、止めるのは建前。
実際は、問題児が出て行って女相が平和になって良かった思てる。
零那は彼処にズット居る方が病むと思う。


事務所着いて携帯充電さしてもろた。
片付けして溜まってるメールみた。
充電終わって支払いにau連れてってもろた。

唐突に貯金あるんか聞かれた。
現金取られるん?
不安なって、あんまり無いって嘘ついた。
レトルトしかないけど勝手に食べて良いからって言われた。
心配してくれてただけ?

帰りに、ドラッグストアと100円均一にも寄ってもろた。
風呂と洗顔セットが出来た。


事務所帰って、まず何からすれば良いか聞いた。


20代後半の女。
自分と同じくらいのパッキン具合。
今テレビで見る人やったら柳原可奈子系。


でもバッチリ化粧でオシャレ。
化粧具合みると性格はキツそう。
穏やかでは無い。
ただ、面倒見よさそうな、責任感強い気がした。
柳原可奈子、体型だけ。

今日から此の人と一緒に行動。
彩さん。
恵ちゃんが来たら計6人。


次の展示販売に向けて、客も掴まなあかん。
街頭調査。
社員増やすのも同時進行。


自分がせなあかんこと。
書類を渡された。
小、中、高、の欄。
思い出せるだけ、クラスのフルネームを書き出す作業。
次の書類。
名前、住所、電話、アドレス、予備、の欄。

なんか嫌。
此こそ、職員が口癖だった『情報漏洩』やんか。
個人情報そのもの。
書かんで良い方法無いかな。

部長に『殆ど関わり無かったので記憶に無いです』って言ってみた。

『学校何処?卒アル探すわ。』って恐ろしい返しが...


『小学3校、中学2校、高校2校、面倒や思いますよっ!大阪は人数バリ多かったし...』
...って、本社大阪やしっ!!!
調べられるやんかっ!

案の定『大阪やったら都合良いから心配するな』って。


保険屋がノルマの為に同級生廻るのに似てる...
なんかイヤ...


『これ書いてどうするんですか?』

『社員か客にする為の作業や。』

『なら無理です。』

部長は零那をジッ!と見て静かに『何で無理なんか言うてみぃ』って...低い声で言った。

殴られるかと思って歯を食いしばって、倒れんように足にチカラ入れてた。

『まず、うち家庭環境が悪くて、親が再婚してからは小学校も行かして貰えん日多くて、中学も、休みが多かったけど親友は1人出来て、後は友達とは言えんレベルの関係でしか無いです。なので、人脈としては無価値です。』

『...そっか...なら、街頭調査で人脈作れ!』

心なしか、部長の目がウルッとしとる気がする。
ちょっと大袈裟に言ったけど、申し訳ない。
だって数少ない友達の生活に悪影響与えたく無いし。
...鬼の目にも涙?
意外と弱い?
人間性が掴めん。


昼過ぎ。
街頭調査。
補佐と彩さんと零那。
夜7時迄。
厳しい。
アンケート書いてくれる人は、声掛けした半数程。
そりゃ警戒するよね...
自分も通行人なら書かんやろうなって思うわ。

名前や携帯書く欄あるけど、書く人って、よっぽど真面目か、純粋に馬鹿な人位やろ?
コレに書かれた携帯に連絡していくって手法。
その為の街頭調査。
内容は二の次。
明日から逆ナンや思て気合い入れて仕事しろって言われた。
声かけるのは18以上の男。
笑顔で接客!!


いやいや、接客?
ちゃうし。
内心突っ込みながら、街頭調査をスムーズにする為なら、確かに男の方が確率は上がるって納得した。

幸い、季節は夏前。
ナンパを逆手に取るやり方もある。
いろいろ考えた。

皆の目盗んで稼ぐことも出来ん。
だったら売るしかない。
買ってくれる人を捜すしかない。
一緒に働いてくれる人を捜すしかない。


なんだかんだ目まぐるしく数日が過ぎた。
だいぶ慣れた。
事務所に帰ると恵ちゃんが♪
でも、部長と不穏な空気。


女相で一緒に徘徊してた時、元彼がガソリンスタンドで働いてるんやけど、用あるから行くって言うから、ついて行った事がある。
30万以上、騙し取られてたらしく、徴収に。
其処で揉めて、キレて、手に負えんなって、従業員が警察に『またなんですけど』って電話してた。

何回もあるん?
なら何で金返さん此奴は捕まらんの?
素朴な疑問。
一緒に連行されて北署で話した。

恵ちゃんの言葉を信用せずに男を庇う警察に怒った。
でも、警察は、証拠書類が無いと何も出来んってキレてきた。
恵ちゃんは嘘付ける性格じゃ無い。
無いことを有るとは言わん。
優しくて頼もしい恵ちゃんやけど、1回キレたら手に負えん。
理性飛ぶタイプ。

昔の自分と同じ。
見てて怖い。
署内には、まともに話し聞かんクズな奴ばっか。
恵ちゃんは、傍の机にあったカッターで深くイってしもた。
倒れたから救急車呼ぶ事態になった。


そんなことを思い出しながら、部長との口論を見守った。
刃物と割れ物を何気に隠した。
話を良く聞くと『辞める』のを引き留めてただけだった。

『ちょぉ待ってや!なんで辞めるん!』
思わず割り込んでしもた。

『来てもお金貰えんし、販売だけ行く言うても無理言われたし、だったらシフト増やした方が良い思て。やけんチャント辞めるって言いに来たんよ。
私から誘ってて悪いけど、借金返済もあるし支払いもあるし、大変やけん...ごめんね。』

『そりゃそっか、生活基盤がチャントせな支払いどころか、体調壊して仕事も行けんなるかもしれんしね!
部長、辞める形とらせたげてください!』

自然と頭下げてた。

なかなかウンとは言わん。
人手不足は承知。
焦ってるのも承知。
でも、恵ちゃんを縛り付けとくのは間違っとる。

『わかった!自分が恵ちゃんの分も働く!必死で人脈増やす!あかん?』

こんな餓鬼みたいなワガママ、頷くワケ無い。
ほな意外にアッサリ。

『死ぬ気で人脈作れよ!やれるんかっ!』

あれ?
意外と良い人?
でも、前言撤回。
出された書類見て絶句。

『誓約書』
辞める為の。
本人宅住所、電話番号、名前。
本籍、拇印。
実家住所、電話番号、親の名前。
『何此』唖然。

条件。
㈱MJ内部情報を何一つ外部に漏らさないこと。
あ、今此処に書いてるけど。
あと忘れた。
最後に脅迫文があった。
それより本籍、実家を書かす了見は!?って感じ。

上、ほんまヤクザちゃうんか。
しかも根性悪いヤクザ。
まぁべつにどうでもえっか。

恵ちゃんは解放されたわけやし。
淋しくはなるけど店行けば逢えるし。
...ちゃう。
行けれん。
恵ちゃんが来てくれん限り逢えん...
帰り際、たまに会いに来てって言った。
『当たり前やん!』ってギューッ!してくれた。
泣きそうなくらい嬉しかった。


半月位経ったんかな?
7時位に事務所帰った。
部長が『息抜きや!出かける準備。』って。
零那は消えかけの眉毛を書く。

行った先は焼き肉店。
ワケ解らん物体。
コリコリ。
うにゅうにゅ。
美味しくない。
被害妄想生まれそうなくらい気持ち悪い。

その後はカラオケ。
散々オヤジの歌聴かされた。
変な甘いカクテルばっか飲まされて気持ち悪い。
マジ散々。

何回も嘔吐して、朝迄ビリヤード付き合わされた。
やったことないし、できん。
やたら馬鹿にされた。

あの長い棒でスカートめくられたり胸突かれたり、セクハラもどきも受けた。
でも零那からしたら、んなもん可愛いモンやった。
彩さんは巨乳やったから谷間に棒突っ込まれたりしてた。
笑って部長のモノ握り返したりしてたけど...。


当時の零那にとって、ビリヤードってのは大人が行くバーに在って、大人の遊びって印象だった。
現代はネットカフェで当たり前の如く在るけど...

部長は何気に巧かった。
やりたいとは思わんかった。
でもあの音は気に入った。
聞いてて気持ち良い。
下手な人の音は聞いてて気持ち良くなかった...

隅っこにあった、丸くくぼんだ青い小さい立方体の物体。
その物体の必要性は解らんままやったけど。


事務所に帰ったのは、朝8時頃。
風呂道具持って、また車に戻る。
初めて、仕事休みって言われた。
皆、夕方まで寝た。

 
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