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クレヨンしんちゃん-嵐を呼ぶ閃乱!超(ハイパー)忍大戦!!

作者:蜥蜴石
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第一話-春日部 IN THE SHADOW-

『忍』。

それは遥か昔、戦国の世にあった、あらゆる闇の仕事を引き受けていた存在。

いつしか人々の心から消え去り、おとぎ話のように語られるだけになった現在も、『忍』は存在していた…。



これは現代に生きる善と悪…異なる二つの『忍』の道を往く少女達と幾多の危機を乗り越えてきた『嵐』を呼ぶ幼稚園児の出会いから始まる物語…。


春日部市・かわのそば公園にて…。

「…暇やなぁ…。」

どこまでも広がる青空をボーーーッと眺めながら、木陰に座っていた所々が破けた黒いセーラーの制服の上からでも解るくらいに豊満な胸、緑のショートヘア、眠たそうな半開きの金の瞳は蛇か何かの爬虫類を彷彿とさせる感情の起伏がまるで感じられない無表情な少女・日影は関西弁口調でポツリとそう漏らした。

(町中駆け回ったはええものの『例の物』の情報なんて中々聞かんなぁ…)



ことのあらましは三日程前…



此処は某所の有名観光地のとある天守閣跡地、文化遺産保護という名目で行政が立入禁止にしてしまった…だが御存じだろうか?町で一番目立つこの場所こそが悪の忍達が秘密裏に集う魔窟だということを…

『秘立蛇女子学園』(通称:蛇女)

財政界の大物や大企業の幹部などからスパイや暗殺といった『裏の仕事』を請け負い、どんな非道な違法行為に走ることさえも厭わない忍…『悪忍』の候補生達を立派な悪忍にして世に輩出するための闇の教育機関である。

『悪は善より寛大である』の精神の下、例え悪忍と敵対する存在である正義の忍『善忍』だろうが、蛇女の者と戦ったことがある者だろうが…どこの誰でも入学自体は拒まないがその代わり、想像を絶する厳しさを極めた修業の日々が容赦無く生徒達に襲い掛かり、加えて下忍が上忍に対しての『下剋上』の様な校則まで存在するため、毎日が血の雨が絶えぬ阿修羅地獄の様な環境だ。

「「「「『極・秘伝忍法書』???」」」」

「ああ、そうだ。」

蛇女の一室にて、蛇女の制服である黒いセーラー服を身に纏った五人の少女達が居る…茶髪がかった黒髪ロングヘアをポニーテールにしてる日焼けした健康的な肌に立派な巨乳、蛇女の最も優秀な悪忍候補生の選抜メンバーの一人にしてリーダー格の少女…秘立蛇女子学園二年生・焔は部屋に居た四人にその様な謎のワードを告げた。

「なあ、焔さん。それって一体なんなんや?」

「名前から察するに…『秘伝忍法書』の様なものでしょうか?」

蛇女の選抜メンバーにして三年生である日影、ヘアピンをした柔らかなクリーム色のロングヘア、バインバインなデカイおっぱいを持つお嬢様風の少女…選抜メンバー・二年生の詠が順番に焔に質問を浴びせていく。

ちなみに詠が言う『秘伝忍法書』という物は、善忍や悪忍…無論、焔達も肌身離さず所有している『秘伝忍法』と呼ばれる大自然の力…即ち、森羅万象あらゆる自然に存在する獣『秘伝動物』の力を借りた強力な術を発動させる事が出来る巻物の事である。

「それの説明に関しては…春花、未来。」

「はぁい♪」

「任せて!」

焔は極・秘伝忍法書の説明について、二人の少女…頭にピンクの大きなリボン、ロールをかけた亜麻色の髪、垂れ目に蠱惑的な甘い声、選抜メンバー1の爆乳を誇り、どことなく女王様を彷彿させる雰囲気(オーラ)を漂わせる少女…三年生・春花と前髪を切り揃えた黒髪ロングヘア、左目には眼帯、小柄な体格と幼い印象を受ける声が子猫を彷彿させ、そして他の選抜メンバーと違い悲しいくらいに無いド貧乳が特徴の少女…一年生・未来へとバトンタッチする。

「私と春花様が資料室で書物の整理をしてたらこんなものが出て来たよ。」

未来はテーブルの上に如何にも年代物かつ古臭い印象を感じさせる巻物を一同に見える様に置いた

「まぁ、随分ボロボロですわね?」

「これは明らかに私達の時代よりも遥か大昔のものね…。」

「『春花』様なだけに『遥か』ですね?わかります!」

「プフッ!み、未来…お前ッ…!」

「あははははは!嫌ですわ!未来さん…わ…笑わせないでくださいよぉ!!」
春花が真面目に説明する中、彼女の発言を聞いた未来がしょうもないダジャレを抜かしたため、ツボにハマったのか?焔は笑いを堪えながら震えだし、詠に至っては爆笑していた。対照的に日影だけは『今のダジャレの何が面白かったんだ?』と言わんばかりに表情を全く変えずにキョトンとしていた。

「蛇女に下品な女は不要よ。」

「すみませんでしたァアアアアアアアアアアアアアア!!」

愚かな後輩(未来)によって勝手にダジャレのネタに使われた春花本人はというと、某ガミラスの総統みたいな台詞と共に青筋と全体的に引き攣った不自然な笑みを浮かばせながら、自分の得意武器(エモノ)であるカラフルな色をした劇薬や毒薬が詰まった試験管を取り出したため、未来は即座にその場で土下座して謝った…何故ならば、春花は選抜メンバーの中で、ある意味最も怒らせてはならない超危険人物であることをよーく知っているからだ。

「コホン…話を戻すわね?この巻物にはこう書かれてあったわ。」

春花は気を取り直して巻物を広げ、解読した文章を次の様に読み上げた。

「えっと…『『極・秘伝忍法書』…それ即ち『超秘伝忍法書』さえも霞む程の絶大なる『力』そのものなり、それを手に入れた者は天を裂き、地を裂き、人を裂き、この世を裂き…ありとあらゆる戦場を蹂躙し尽くす禁断の忍法なり…だが、しかし忍の端くれたる拙者の力を以ってしても実物を見つけ出すどころか…武蔵国は春日領のどこかにあるという情報だけを掴んだのがやっとであった…。』」

「ハハッ…!素晴らしい…もしその通りの代物なら、秘伝忍法書の力があれば私達は無敵の悪忍軍団になれるじゃないか…!!」

焔は巻物の文章を聞き、気づけば高らかに笑っていた。当然だろう…彼女も如何なる手段を問わぬ悪忍とはいえ忍の端くれ、力と戦いを求める焔が世界をも揺るがす絶大なる力に魅せられるのは道理と言えよう。

「まだ続きがあるわ…『…なのにあの馬鹿頭領!折角拙者が一年掛かりでここまで調べたのに報酬が無いとはどういう事だ!?チクショーメー!!地獄を味わせてやる!!泣いたり笑ったり出来なくしてや………天正二年(1574年)、晴れ。』…以上が解読した文章よ。」

「「いやこれ後半おかしいわァアアアアアアアアアアアアアア!!」」

春花が巻物の解読文章をやたら迫力を込めて読み終えたと同時に焔と詠が盛大にツッコんだ。当然だろう、前半がまともな情報なのに対して後半が全て頭領なる人物に向けた個人的な恨みと殺意しか篭ってないのだから。

「明らかに私情丸出しだよな!?何!?金銭問題で揉めてたのか!?コレ書いた忍!金くらいちゃんと払ってやれよ!頭領ッ!!」

「頭領さん逃げてェエエエエエエエエエ!!殺されちゃいますよォオオオオオオオオ!!」

「これ書いた日って晴れやったんか…あれ?これ作文???」

「ちなみにこの巻物は未来が一晩で現代風に翻訳してくれたのよ♪」

「あたし、頑張りました!」

…と、未来の変な翻訳のせいでこの後もズッコンバッコンなツッコミ合戦が開始されてしまったのは言うまでもなかった

だが悪い意味ばかりでもなかった。巻物に記されていた『武蔵国・春日領』なる場所は未来がW○ki○ediaを使って調べたため、すぐさま判明した…



そして時は戻り現在、日影が今居るこの場所こそが蛇女選抜メンバー達が目的としている極・秘伝忍法書がどこかにあるとされている『武蔵国・春日領』…今の埼玉県・春日部市なのだ。

「焔さんの思いつきだけでこんな遠いとこに行くとは思わんかった…おかげでわし、疲れたで…。」

日影達五人は散り散りに別れて極・秘伝忍法書の手がかりを得るため調査をしているが、日影自身はというと昼間の誰もいない公園で明らかに一人だけダラダラとサボってる様にしか見えない。

…が、これでも三・四時間前から捜索をしており、今はしばしの休憩を取っていた。



(セミの幼虫や、気づけばもう夏や。)

日影が何気無く近くの木を見ているといつの間にか夏が近いせいかセミの幼虫が木にしがみついていた…季節の変わり目をしみじみと感じてる時だった。

「妙にでっかいのもおるなぁ。」

…気のせいだろうか?もう一匹…人間の子供くらいはあるだろう大きさのセミの幼虫も居た。普通の年頃の少女ならばこんなバカみたいにデカいセミにいきなり出くわしたら『ぬわー!』とか『ゲェーッ!』とか『ギエピー!』とか大袈裟な悲鳴を上げて逃げ出すだろうが、何時如何なる状況だろうが動じる事がほとんどと言っていいくらい無い上、若干天然でもある日影は平然と見つめていた。

「お?」

大と小のセミの幼虫の背中が割れると羽が現れ、抜け殻を破り、成虫と化した二匹のセミはタイミングをピッタリ合わせながら同時に飛び立った…。

「ほっほ~い!」

…一匹、否、一人は当然そのまま飛べるはずも無く、地上に着地するに留まったが。

「おー。うまいもんや。」

「いや~。それほどでも~。」

日影はデカいセミ…否、セミの着ぐるみを着た幼稚園児くらいだろうか?幼い男の子の見事なセミっぷりに思わず拍手を送り、男の子はというと顔を赤らめてニヤケていた。

「セミの特徴をよく捉えた出来の着ぐるみやなぁ、あんたが作ったん?」

「そうだゾ!夏ももう間近、それに向けてセミごっこ用のお古をかんちょーしたんだゾ!えっへん!」

「…それって、『新調』ちゃう?自分に浣腸してどーすんねん?」

「そうとも言う~。」

「そうとも言うんか。」

日影は何気無くその男の子に話し掛けた…それがキッカケか、二人は初対面同士とは思えないくらいの息の合った(?)ゆる~いボケとツッコミの応酬による漫才を繰り広げていた。

「なんやおもろいボウズやなぁ、あんた名前は?」

「オラ、野原しんのすけ、5才、おねいさんは?」

「わしは日影や。」

「ほうほう、日影ちゃんかぁ!」

一風変わった遊びをしていたこの男の子…野原しんのすけに興味を示したか、日影は彼に軽い自己紹介をした。

「オラはここでセミごっこしてるけど日影ちゃんは何してんの?」

「わしはあれや、ひなたぼっこや。」

「ひなたぼっこ?ここ、木があるから全然お日様の光が当たらないゾ。」

休憩中の日影はどうやらひなたぼっこしてるらしいが、先程までしんのすけがセミごっこに興じていた木が木陰を作ってるため、日光など彼女には全く当たっておらず、ただ涼んでるだけにしか見えてない。

「わしにはこれくらいがちょうどええんや。」

「ほうほう。」

「なにもメモらんでも、なんも参考にならんて。」

「ところで、日影ちゃんはなんで自分のこと『わし』って言うの?なんだか年寄りくさいゾ。」

「あんたも自分のこと『オラ』言うとるやん、それと同じや。」

「おお、なんだか今と同じやり取りをどこかでした覚えあるけど…ま、いっか。」

「そうか、まあ別にええけど。」

日影はよくわからないひなたぼっこの理由を話したがしんのすけはこれまたよくわかってないのに彼女の発言をメモしたり、某暗黒世界で会ったボクッ娘少女にもした質問をしたり…お互いにイマイチ噛み合わないが何故か話は不思議と成立(?)していた。

「おーい!しんのすけー!!」

ここで、恐らくしんのすけの友達だろうか?彼を呼ぶ声が聞こえてきた。

「…もしかして遊ぶ約束あったんちゃうか?」

「おお、こってり忘れてたゾ!」

(こってり…?ああ、すっかりのつもりや、多分。)

「じゃ、そーゆーことで~。」

「そーゆーことでー。」

どうやらしんのすけは日影と漫才している間に前もってしていた約束を完全に忘れてたらしい、彼女に別れを告げながら、待たされてお冠になってる友達の方へと走り去った…。

「…今回の件は、なんだか退屈せぇへん気がするで。」



しんのすけが去った後にポツリと漏らした日影の言葉がその後、現実になろうとはまだこの時点では誰もが予想だに出来なかった…。 
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