つぶやき |
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少し遅れそうです。週一投稿が出来ず、申し訳ありません。 仕事が31日まであり、夜は忘年会の連続で忙しくて書いてる暇がありません。 年内に次話は投稿しますので、もう少々お待ちくださいませ。 寒いですが、皆様もお身体にお気をつけて。 ではまた |
なんとなんと、恋姫の新作が発売決定。三国別売りダウンロード限定で。 愛紗さんメイン復活なようです。 しかし乱世じゃないらしいのでなんかもやもやする…… 白蓮√か董卓√はよ! と言いたい…… 全部買いますけどね! はい。 ではここからは自分の物語の話を。 年内に官渡終わらせようと頑張ってみましたが……無理でしたorz 毎年の年末は仕事忙しくて休みが無く、忘年会やら何やらで夜に書く暇もございませぬ。 多分、あと五~七話は掛かる予定。 一応ですが、官渡の戦いは物語の中核の位置付けです。はい、ど真ん中です。 まだ半分……絶望的です(作者的な意味で) クリスマスネタは多忙な為、書けるかどうか分からないです。 作者は風邪引いてましたが、読者様方はお体にお気をつけて。 ではまたー |
こういったモノが盛んらしく、こっちでも上げときます。 ぜーんぜんアップ出来てないあの三人、ただし本編仕様で行きたいかなと。 【1】まずは自己紹介をどうぞ! 「公孫賛、って言ってもなぁ……真名で行っていいのかな?」 「いいのでは? 私は星と名乗っておきましょう」 「ふむ……なんですかね此処は……あ、牡丹です! こちらが美しくて素晴らしくて凛としててかっこよくて可愛くて誰もに愛される白蓮様です!」 白蓮「おい! なんでお前が私の紹介してるんだよ!?」 牡丹「白馬の片腕ですから!」ドヤァ 星 「白馬なのに片腕……くっ……」クスクス 牡丹「おいこら表出ろ白いの」 白蓮「私も白だけど……」 牡丹「うぁっ、違うんです白蓮様! 決して白蓮様に言ったわけでは無くてこのどうしようもなく腹黒い意地悪で意気地なしのへたれ龍が喧嘩を売ってきた事に対して言っただけでめっそうもありませんいやでも白蓮様のお心を乱してしまったのには変わりありません最悪です私は一回脳髄を洗った方がいいんでしょうそうしなければならない気がしてきましたいえいえ絶対そうなのですそうして白蓮様の綺麗な心のように驚きの白さに「うるさい! いい加減! 黙れ!」あひゃ! ありがとうございます!」 白蓮「まったく……ってなわけで、私は白蓮だ」 星 「普通の自己紹介ですな」 白蓮「よし、星。お前の明日の仕事二倍な♪」ニコッ 星 「」 【2】 好きな食べ物は? 白蓮「なんだろう……はんばぁぐ、かな。秋斗が考えて店長が作った奴。あれが一番思い出深いし」 星 「メンマこそ至高の食べ物でしょう。店長が作るメンマが一番ですとも」 牡丹「……白蓮様が飲みかけのお茶と白蓮様がご飯食べた後のお箸です!(食べ物ならなんでも好きです!)」 白蓮「……は?」 星 「っ……くくっ、牡丹、多分思ってる事と言ってる事が逆だ」ふるふる 牡丹「え? うわ……ちがっ、違います白蓮様! 私は毎日あなたの食べた後を舐めまわせて幸せだなんて欠片も思ってな――――」 白蓮「よし、明日と明後日はお前寝ないで仕事しろ、な♪」ニコッ 牡丹「」 【3】 ご趣味は? 白蓮「馬に乗る事」 星 「白蓮殿と牡丹をからかって遊ぶ事」 牡丹「……白蓮様と一緒に馬で駆ける事、です」 星 「秋斗殿の言葉なら……だうと」 白蓮「嘘だな。もうこの際だ。正直に言え。怒らないから」 牡丹「……ホントに?」 白蓮「ああ、私は嘘をつかないさ」 牡丹「……白蓮様が居ない間に寝室に忍び込んで『バキューン』したり『ズギャーン』したり、後は――――」 白蓮「よし、お前を曹操の所に送ろう♪」ニコッ 星 「……っ……くくっ……バカ」 牡丹「」 【4】 意中の人はいますか? 牡丹「白蓮様です! 当然です! 心の中引っくり返しても白だけが大好きです! 愛してます!」 星 「まあ、言うに及ばず。牡丹が必死に隠してる大馬鹿者、ですかな」 牡丹「おいこら! 私は別にあいつの事なんかこれっぽっちも気にしてません! そりゃはじめて真名呼んでくれてうれしかったーとか笑い合ってるとちょっと疲れがふっとぶーとか無茶ばっかりしてるからそろそろやめて帰ってきやがれとは思ってますが全然これっぽっちも気にしてなんかいません!」 星 「そろそろ素直になるべきだと思うが……どうしたのです、白蓮殿?」 白蓮「……いないorz」ズーン 牡丹「じゃあ私が立候補します!」 白蓮「おお、本当か!? 気持ち悪いから却下だけどな♪」ニコッ 牡丹「orz」ズーン 星 「……っ」指差し笑い 【5】 パートナーをどう思いますか? 白蓮「う……またこの手の質問か。好きな人もいない私じゃあ恋人なんかいないのに……ましてや夫なんて……」 牡丹「命賭けても守り抜きます」 星 「……一生賭けて守り抜きたい宝物、ですな」 白蓮「お、お前ら、いつの間にそんなモノ出来たんだ?」 牡丹「なに行ってるんですか?」 星 「やれやれ、これだから白蓮殿は……」 白蓮「えっ? え? なんだよ?」 牡丹「ねぇ、星。教えてあげるべきでしょう?」 星 「そうだな、くくっ、この方も大概鈍感だ」 白蓮「うぅ……早く教えろよ!」 二人「「私達のぱぁとなぁはあなたしかいないでしょう?」」 白蓮「」 星 「共に戦うあなたがソレでなくてなんだと言うのです?」 牡丹「私達の主はあなただけですからね!」 白蓮「……ばか」ぐすっ 星 「おやおや、涙する程の事でもないでしょうに」 牡丹「では、そろそろ店長のお店に行きましょう!」 白蓮「……ごめん、財布の中身少ない」 星 「秋斗殿を連れて行けばタダですから、四人で楽しく飲みましょう」 牡丹「癪ですけど、あいつも呼んであげるべきですよ」 白蓮「……よし、じゃあ行こうか!」 【6】 バトンご指名 フリーで。 ってなわけでこんな感じのをやってみました。 お楽しみ頂けたら幸い。 |
事前に語る感じで。 彼女が盛大にイロイロと否定します。 現実主義な感じで一つ、その他の√ではどう思っていたかを表すカタチで一つになるかと。 マンガの『マギ』等でも論に上がっているモノですが、受け付けるか受け付けないかは読者様方にお任せします。 道筋やら何やらが違うので原作の一つの√を切り離して考えて頂く事になるかと。 さて、お気に入りして頂いてる方にだけ秘密の情報開示でも。 この物語は恋姫ですが、物語の設定上『虚数外史』というカタチを取っています。 “天の御使いがいなければ” そんな想いで生まれた外史という設定。 それでも噂が立ってしまう理由を一つ。 恋姫外史は御使いが居てこそ生まれたモノで、原作があってこそ出来上がったモノです。 だからこそ、御使いが作ったメイド服が既にあったり、沙和の部隊が海兵隊式だったりしてたりします。 ただ、御使い否定の外史でもあるので、問題点がちらほらと。それらは後々です。 ループモノや異世界モノに於ける少数派意見をこれから取り上げたりもするので、不快に思われる事があるかもしれません。 それでも、少しでも楽しんで頂けたら幸い、です。 ー追記ー 土曜と言いましたが、切った方がいいと判断したので七千くらいですが明日あげますねー。 |
睨む視線は厳しく、此処から一歩も動けないのではないかと思わせる程。 ギリギリと歯を噛みしめて、俺に行かせまいと目の前で両手を広げる少女が居た。 一寸だけ俺の衣装に呆気にとられていた彼女は、すぐにはっとしたように睨んで言葉すら零さない。 「……三つ数える前に視界から消え去りなさい。この全身白濁幼女趣味男」 「……仕事終わったし、言われた通りに来ただけなんだが?」 「お生憎様。今日は私達だけで“ぱぁてぃ”を楽しんでいるの。あんたみたいな性格も頭も心も見た目も真っ黒な奴が来たらせっかくの気分が台無しになるでしょ」 噛み付くように言い放たれた。 いつも通りの暴言。出会えばこうなる事くらいは分かっていたが……それならこちらもいつも通り返すだけである。 「……白って言ったり黒って言ったり……脳内桃色被虐趣味猫娘は目まで悪くなったのか」 「あら、白濁が何を差してるかも読み取れないの?」 「人体がどんな物質で構成されているかも知らないなんて……教えてやろうか?」 「はぁ!? あんたなんかに教えて貰わなくても――」 「分からないだろ?」 「うるさいっ! 疾く、帰れ!」 唸る姿はまるで番犬のよう。ネコミミだけど。 桂花の仮装はケットシーのようだ。普段着るはずの無いミニスカート。しかし“赤と黒”の服とはまた……一緒に楽しもうって事だな。 少し内股気味だから、宴会場から抜けて手洗いに向かうつもりだった、と。 「じゃあ俺が帰ったら桂花は宴会場に戻るってわけだ」 にやりと口を引き裂いて言うとまた睨みつけられる。 「そ、そうよ! だから早く帰りなさい!」 「いやしかしな、華琳に仕事の報告もした方がいいだろうし……ああ、桂花が代わりに聞いてくれるか」 「そんなの明日でいいでしょ!」 「いや、急ぎで判断した方がいいだろ? 帰ってすぐ煮詰められるし」 これで逃げ場はない。一層もじもじとし始める彼女は悩んでいるようだ。 どうせかぼちゃジュースでも飲み過ぎたんだろ。限界まで持つかな? 「う……うぅ……聞いてあげるから早く言いなさい、手短に!」 「いや、やっぱり華琳と話した方がいい案件だと思うんだ。呼んで来てくれないか?」 「私を伝令代わりに使うって言うの!?」 「だって入ったらダメなんだろ?」 「あんたなんかを今の華琳様に会わせるわけないじゃない!」 「いや、仕事だし仕方ないだろ。それよりどうした? もじもじして」 「う、うるさいっ! なんでもないわよ!」 どうやら限界が近いらしい。顔が赤いぞ。とどめと行こうか。 「ちなみに店長の店を汚したらどうなるか……分かってる、よな?」 最低でもひと月はおやつ抜きだろう。桂花がそれを我慢できるかと言われたら、否。 「気付いてて、こんのっ……くっ……後で覚えてなさいよ!?」 「知らん。俺は何も見なかったし聞かなかった」 「絶対! 後で! かぼちゃ塗れにしてやるんだから!」 普段走らないのに駆けていく。その捨て台詞は無いと思うが。大声出すと漏れるぞ。 ため息を一つ。 まさか桂花と初めに出会うとは。可愛かったけどさ。 また歩みを進めて宴会場に向かう。 しかし……意向を組んで立食パーティにするあたりが華琳らしい。季衣と流琉にしてもだ。出来る限り現代のカタチを作り出してみたいんだろう。 思考に潜る内、大きな扉に辿り着いた。中からは楽しげな声が聞こえる。はてさて、どんな様子になっているのか。 扉を開けると……ピタリ、と声が止んだ。 † 彼も仮装してくるらしいと季衣ちゃんと流琉ちゃんが言っていたから、どんな服を着てくるのか楽しみにしていた。 朔夜ちゃんは狼。銀色の毛並を作って貰うのに苦労したらしい。 詠さんは帽子が違う。きょんしぃ? だったかな。前が見えないからと札を胸に付けている。ただ、“ひらがな”で名前が書かれているので少し幼く思えた。 風ちゃんはひらひらの服を着て弓を背中に背負って、“えるふ”の格好そしていた。彼からの意見を参考にしたんだろう。 稟ちゃんは……華琳様に戯れを行われていつもの如く倒れてしまった。断罪! とかとらんざむっ! とか言ってたけど、あの格好はなんだろう? 桂花さんはお手洗いに行った。けっとしぃと言う猫らしい。赤と黒は“あの二人”の色だから、きっと思い入れがあったはず。 天和さん、地和さん、人和さんはなぁす服。白衣の天使とも言うらしく、白い鳥の羽を背中に着けている。 季衣ちゃんと流琉ちゃんは犬の仮装。南蛮の子達に似せているから、少し肌の露出が多い。 真桜さんは…… 「フゥーハハハ!」 何故か白くて長い特殊な服を着て高笑いと決め動作が絶えない。“まっどさいえんてぃすと”ってなんなんだろうか。稟ちゃんもさっきまでマネしてたけど、意味があるのかなぁ? 凪さんは灰色のキツネの様相。曰く、“じゃっかるよりも凶暴”、とのこと。 沙和さんは……ぱりっとした服を着ている。名前は分からない。クイとメガネを上げる姿と教鞭が絵になっている。罵倒の言葉が聴こえてきたのはきっと気のせいだ。 霞さんは……速さが足りない、と特殊な服を着ながらはしゃいでいた。彼が話していた世界最速の人のマネだと思う。 春蘭さんと秋蘭さんは少し際どい服を着ている。白と黒の“ばにぃがぁる”。“しるくはっと”なる帽子を被って“すてっき”を振っていた。華琳様と一緒に来る前に息がはずんでいたけど……ふしだらな事じゃないと思いたい。 皆、普段着ない服。こすぷれ、と言うらしいが、確かに楽しい。 はろうぃんの本来の意味とは大きく外れているけど、楽しかったらそれでいい。それが私達の流儀だ。 だって……彼が話してくれる特殊な日は……。 扉が開いた。静寂に支配される。開いた人の方に皆が目を向けていた。 黒。彼の色。彼を表すいつもの色。でも……なんだろう。どうしてこんなに自然に見えるんだろう。どうしてこんなにも、しっくり見えるのだろうか。 彼も皆の姿に呆気にとられていた。 「……秋斗、その服は?」 華琳様が尋ねる。いつもならするはずの挨拶も忘れるほど、彼の服の事を聞きたかったのか。 「仮装するって言ってもなにもなくてな。だから、“仮装になる服”を選んできた」 答えになっていないとばかりに睨みつける華琳様は、少しばかり頬が赤い。だって、どうしようも無く自然だ。あの服を男の人が着ると、こんなにいいモノなのか。手足が綺麗に見える。全体的に完成されていて美しい。 きっと――――の服なんだろう。だから彼は、今この時だけ…… 「随分久しぶりに着たし生地が違うけど……クク、これ着て仕事してた時が懐かしいよ」 「あなたの故郷の服ですか?」 月ちゃんも頬が赤い。この服は……私達には甘い毒だと思う。 「ああ。ネクタイは服屋に行けばあった」 「それがあなたなりの仮装ってことね?」 「まあそういうこった」 袖から見える白が気になる。一挙手一投足に目が行ってしまう。 ねくたいを緩めて欲しい。上着を脱ぐ動作も見てみたい。 「うん、皆似合ってるなぁ……コスプレパーティになっちまってるわけだが。そうなると俺がめちゃくちゃ浮いてるか……コレじゃ従業員っぽい」 「“執事”として雇ってあげてもよくてよ?」 「へぇ、覚えてたのか。しっかし、お前さんが……それとはな」 華琳様の衣装は吸血鬼。それも絶対に着ないようなフリフリの“ごしっくどれす”。“ついんて”は螺旋を描かず、真っ直ぐに降ろされていた。 「ふふ、どう? 跪きたくなった?」 「クク、執事は跪かんよ。そうなると俺は狼なわけだ」 「秋兄様はっ……私の兄なので問題ないかと」 堪らず声を上げた朔夜ちゃんのしっぽが揺れる。彼と同じというのは、少し、羨ましい。 微笑みを返された朔夜ちゃんは……ゆでだこのようになって堕ちた。 私は心を強く持たないと。 心配で駆け寄ろうとした彼の服を掴んで、華琳様は目を細めた。 「……って言ってるけど?」 「おい、朔夜が倒れたんだが……」 「風に任せておけば問題ない。ほら、もう起きたじゃない。跪くか否か……答えなさい」 「……マイマスター、なんなりとオーダーを」 そういえば、彼が語ってくれた物語の一つでは、吸血鬼の執事は狼らしい。 朔夜ちゃんが起き上がったから、彼はホッと息を付いて華琳様と話を続ける。 まだ、彼は私の方をしっかりと見てくれない。否、見ないようにしてるだけ。顔が赤いから……抑えてるみたい。気付いたらしい。私の思惑に。私が考えている事に。 「ふふ、なら私の義妹(いもうと)にも跪きなさいな」 「……魔王が妹の吸血鬼ってどんなだよ。ってか月、その角危なくないか?」 「あ、これは布で作ってあるので柔らかいですよ?」 「おお、ホントだ。ふにふにしてやわらけぇ」 「では秋斗さん。私にも忠誠を誓って貰いましょう」 月ちゃんの服は黒。肩から流した布に角が二つ。中は可愛らしい服。華琳様が夜の王で、月ちゃんが魔の王。二人とも今日は黒の主として居たいらしい。 にこやかな笑顔で月ちゃんが言うと、彼が固まる。苦笑して、片方の膝をついて 仰々しく彼女の手を持った。 「人の身なれど、忠誠を誓いましょう。魔の王、曹『 』様」 月ちゃんが人の敵なら、彼は裏切り者だ。 なら、私はどうか。私も同じく、裏切りモノかもしれない。 「では、私も命じましょう。彼女の元に向かいなさい」 その言葉で、やっと彼が見てくれた。ゆっくり近づいてくるけど、彼の顔が赤くなっていく。 みんなも気を効かせてくれてるらしく、それぞれの話に戻っていった。 視線を繋いだまま、縮まった距離で私の鼓動が速くなる。 「とりっく、おあ、とりぃと」 「ハッピーハロウィン、雛里」 笑顔を向けあう。今日この日は、私に似合ってると言ってくれたから、教えてくれた通りに言葉を投げてみた。 聞いた通りの返しと共に、私の帽子を外して頭を撫でてくれる。 私の姿はそのまま。彼の外套に似た黒を肩から下げているくらいでいつもの通り。そのまま。 “魔女っ娘”……と、彼が言っていた。 初めて出会った時もそんな事を考えたらしい。だから、この日の私はそのままでいい。皆のように可愛い服を着てみたい、とは思うけど、初めての『はろうぃん』だけは“魔女っ娘”で居たかった。 「さすがに魔女っ娘で居てくれるとは思わなかったよ。さて、お菓子は何が欲しいかな? 下で少し買ったけど……」 手に提げていたカバンを置いて、膝をついて中を探し始める。 いたずらを思いついた。 恥ずかしいけど……これならいたずらも出来て、甘いモノも貰える。 一歩、一歩と近づいていく。 気付いているのかいないのか。きっと彼は、私がお菓子を貰おうとしているとしか思ってないだろう。 「お菓子じゃない甘いモノが欲しいです」 言うと、彼は首を傾げた。 漆黒の瞳は綺麗で、濁り無い。 彼の首に手を回して、 “私にとって甘いモノ”を頂いた。 顔を離し、恥ずかしくて俯くと、 「あわわ……“とりっく、あんど、とりぃと”……でしゅ」 彼はいつもみたいに苦笑を一つ。 「やっぱり雛里には敵わないなぁ」 ――その言葉も、私にとっては甘いモノに入るみたいです。 その後、皆と一緒に“ぱぁてぃ”を楽しんだ。 皆の前で私だけが甘いモノを奪ってしまったから、彼は大変な事になっていたけど……やっぱり楽しそうだった。 酔ってしまう人もたくさん出た。 一番酔っていたのは月ちゃんで、脱ぎます! とか言い出して詠さんがかなり焦っていたけど。 行事の後は酔っていない皆で片付けて、店長さんの計らいで娘娘に泊まる事になった。布団を用意してあったのは、華琳様がこうなる事を見越していたかららしい。 真ん中に華琳様と月ちゃんを。川の字になって……皆で床についた。 「こんな日をこれからも沢山作っていきましょう。じゃあ、おやすみ、皆」 華琳様が願いを込めて、部屋の中は黒に染まる。 おやすみなさいの返事を聞いて目を瞑る。 男だからと部屋を出て行った彼は相変わらず。きっと店長さんと語らっているんだろう。 「ふふっ、はっぴぃはろうぃん」 今日も幸せだったから、皆に伝えたかったから、彼にも伝えたかったから、誰にも聴こえずとも小さく零した。 ―――――――――― 読んで頂きありがとうございます。 去年は書けなかったので、今年は書きたかったのです。 雛里ちゃんはマントだけ着用。魔女っ娘ひなりんが好きなんですごめんなさい。 ではまたー |
ハロウィンネタ前編 ―――― 「とりっく! おあ! とりぃと!」 大きな声と共に開かれた扉。仕事がまだ終わっておらず執務机に向かっていた秋斗は訝しげに眉を顰めてその方を見やった。 ブチ柄のケモノ手足とイヌミミにしっぽを付けた季衣。そしてその後ろでは、もじもじと恥ずかしそうに身体を揺らす……ゴールデンレトリバーさながらのたれ耳とふさふさのしっぽを付けた流琉が居た。 いきなりなんだ、と思った後に、自分の主に零してしまった話を思い出した。 「あー、そういや前にハロウィンの事、華琳に話したっけか……」 夏祭りも終わり、次の楽しい季節行事を組み立てるに当たってイロイロと吐かされた秋斗であったが、今回の事は聞いていない。 だから、内密で計画されていたのだ、と思い到る。 「そいやーっ!」 「おっと!」 呆けていると、季衣が突っ込んできた。 頭から突撃されたが、咄嗟の判断で彼女の軽い身体を流して受け止める。 速度と力を殺せるように一回転。くるりと回った後に、ストン、と着地。 「ちょ、ちょっと季衣!」 「とりっく!」 咎める流琉に、どや顔で振り向いた季衣であった……が、彼が意地の悪い笑みを浮かべている様を見逃してしまう。 「じゃあ、お菓子は無しな」 「ふぇっ!?」 「トリックされたから無し」 「そ、そんなぁ……」 苦笑する彼は意地が悪い。本来の意味をしっかりと理解していなければ騙される。 流琉の方をちらりと見やると……手でバッテンと作っていた。 「あうと、ですよ兄様。私はちゃんと知ってますからね?」 前々からカタカナ言葉を少しずつ皆に教えていたからか、最近はこのように返される。 ダメか、と目で問いかけると、首を振られただけで諦めるしかなかった。 「……お菓子なんざ用意してないんだが?」 「主催者の意向に従え、と言伝を預かってます」 ――やっぱりか……あいつめ。いや、店長とも手を組んでやがるな。 常備してある琥珀飴も無い。城自体に無くなった為に発注はしてあるのだが、届いてない事からどういう計画か気付いてしまった。 「……悪戯とお菓子両方持ってく気なんだな?」 「え、えっと、娘娘に向かえ、との事です。それと、全員が悪戯を仕掛けるわけでは無いですよ?」 ぐしぐしと季衣の頭を撫でながら言うと、目を逸らして流琉が告げる。 気持ちよさそうに撫でられている季衣は、 「悪戯するのは絶対にボク達だけって華琳様に言われたんだー♪」 楽しげに語る。 なるほど、と思惑を読み取って頷いた秋斗は楽しげに顔を綻ばせた。 「さすがは華琳。よく分かってるようで」 「あの……どうして私達だけなんでしょうか?」 不思議そうに尋ねる流琉。秋斗は言っていいモノかと悩んだが……まあいいか、と説明を始めた。 「ハロウィンで悪戯していいのは子供だけだ。お前さん達はまだ字を持てないから……ってむくれるなよ、季衣」 「子供じゃないし!」 「クク、真っ先に悪戯した奴がよく言う」 「むぅ、兄ちゃんだっていっつも悪戯してるのに」 彼女がむくれて不足を示すと、流琉が溜まらず笑みを零した。 「ふふっ、兄様は中身が子供だから」 「……否定出来ないなぁ」 「じゃあボクが兄ちゃんのお姉さんだねっ」 「季衣、兄ちゃんって呼んでる時点でダメだと思う」 「細かい事はいいの! ってかそろそろ行こうよ!」 グイグイと手を引かれ苦笑を一つ。 「いや、先に行っててくれ。俺も何かしら仮装してから行くよ。それとな二人共、良く似合ってるぞ。ちょっとばかし肌とか出し過ぎな気もするけどな」 静寂。後に、ボン、と音が聴こえた気がした。流琉の顔が真っ赤に染まる。 季衣が騒いだから忘れていたが、彼女は結構きわどい格好をしているのだ。 もう寒い季節なのにビキニ的な衣服。実は普段の方が際どいのだが、どうやらこちらの方が恥ずかしいらしい。 「じゃ、じゃあ先に行ってますからっ」 「あーっ! 待ってよ流琉! 兄ちゃん後でねーっ!」 慌ただしく駆けていく二人を笑顔で見送り、彼はため息を一つ。 「仕事終わらせてから行くしかないな。ま、少しくらい遅れても大丈夫だろ」 また執務机に座りなおして、すらすらと書簡に筆を走らせていく。 彼女達がどんな衣装に着飾っているのかと思いを馳せ、楽しげに表情を綻ばせながら。 ~ぶれいくたいむ、店の一コマ~ 娘娘は何時にもまして大盛況であった。 普段の給仕たちは侍女服でお出迎えするのだが、彼の思いつきを取り入れた季節行事の時は何かしらコスプレをしているのだ。 夏祭りの後は浴衣で数日。運動会季節だと零した時は体操服とブルマにエプロンを掛けて。そして今回はハロウィンという事で、様々なコスプレをしている。 そんな中、店長は一人いつも通りのクッキングファイター。もとより料理をする時はこれしか着るつもりがない。料理人のこだわりであった。 忙しく手を進める中、上階の宴会場に次々と料理が運ばれていく。 「徐晃様はあの方々を見たらどんな反応をするでしょうかね……」 ぽつりと零した。邂逅を見てみたいが店長も忙しいので見れない。 クスリと笑って、 「まあ、鳳統様の思惑に気付いて釘づけになるのでしょうけども」 呆れてから、彼は中華鍋を器用に扱う。 楽しい時間まであと少し。店長はいつも通り願うだけ。皆の笑顔をさらに輝かせる料理を、と。 ~ぶれいくたいむあうと~ 後編に続きます |
場面転換毎に先だってアップ 恋姫二次を描く息抜きで。 ――――――――― 1 立ち並ぶビルの高さは土地の発展を表し、行き交う人々の服装は裕福さとセンスに溢れ、仕事にとスーツ姿で走り回る男達は今日も今日とて生活の為に。 ヤマブキシティ。それがこの、カントーで一番発展している街の名であった。 現在建設中のビル、“シルフカンパニー”は技術の粋を集められた高層ビルになる予定。技術者達の、技術者による、技術者の為のビル……そんな謳い文句があるとか無いとか。 このように何処か他の街とは一線を画すヤマブキシティで一人、とてとてと歩く子供が居た。年齢は……五歳くらいであろうか。 赤いジャケットを羽織り、ジーパンを履きこなし、これまた赤い帽子を被る姿は、中々どうして、幼いながらも様になっていた。 ただ、彼の首さえ見なければ、であるが。 さわさわと風に靡くカフェモカの毛並みは、良く手入れがされているのか艶やかで美しい。普段ならばピンと張っているはずの耳も、少年と共に居る安心からか愛らしく垂れ下がっている。子供のようで、まだ身体の大きさは小さい。 すやすやと眠るそのポケモンの名前は……イーブイ。様々な進化の可能性を秘めている非常に珍しいポケモンである。 優しく毛並みを撫でながら、その少年――レッドは街を進む。目指す場所はたった一つ。この街に来てからは毎日、“色々な勉強”が終わってからその場所で遊んでいた。 黒服のガードマン二人が門の前に立つ大きな洋館。 その少年を目に居れた二人は、仕事中の厳めしい顔さえ崩して柔和に微笑んだ。 「やぁ、レッドくん。いつもご苦労様だね」 「ははっ、今日はイーブイを肩に乗せているのか。本当に仲がいい。お嬢様がヤキモチを妬くのも分かる」 二人はサングラスを外し、しっかりと目を合わせた。彼らの雇い主の言いつけである。レッドと話す時は目を合わせて話せ、というなんともわけの分からないモノであったが、雇われの身ならば主人の言いつけは絶対。 ただ、直ぐに意味が分かった。何故なら…… 「こんにちは、ガードマンのお兄さん。今日もご苦労さま」 彼に太陽のような笑みを向けて貰うには、自分達の心を覗かせないとダメだからだ。 レッドは頭の回転が速く、それでいて尚、純粋に過ぎた。 彼らの主も相応に特殊ではあったから受け入れられたが、他の者ならば眉を顰めたであろう。 レッドの純粋無垢な眼は他者の心をある程度見抜く。感情の動きを察知し、敵対心持つモノを貫き、狼狽えさせる。言うなれば、ポケモンのような少年であった。 彼らでさえ最近やっと、主の言いつけで共に遊んだからこそ、こうして普通に接せられるようになった。 一度打ち解けてしまえば早い。レッドにとっては、彼らはポケモンと同じく友達なのだ。 「今日は庭で待っておいでだよ。行っておいで」 一人がポンポンと頭を優しく二回叩き、もう一人が小さな出入口の鉄格子を開ける。これが日常。 「いつもありがとう、じゃあ、行ってきますっ」 ぶんぶんと手を振って駆けて行く彼。庭に脚を踏み入れた途端に、肩で眠っていたイーブイは目を覚まし、飛び降りて共に駆ける。 その背を見送り、ガードマンの二人は満足げだった。 「お嬢様は……レッドくんと出会えて本当に良かったなぁ」 「違いない。旦那様は忙しいし、奥様からは化け物なんて言われてたんだ。心が歪んでしまう前に、あんないい子と出会えたのは……もう、運命だろうな」 「はっ、気障なセリフだな。だが、悪くない」 「そうさ、悪くない。子供の内くらい幸せに過ごすべき。そう思うだろう? 俺達みたいな奴等にとっては、な」 「……そう、だな」 打って変わって哀しげに表情を落とした二人。もう見えなくなった彼の背を追い掛けるように視線を庭に投げた。 轟、と一陣の風が吹いた。彼らの黒いスーツの裾をはためかせる程の強い風だった。 翻ったスーツの端には、赤い一文字のアルファベットが縫い付けられていた。 レッドのイニシャルと同じ、“R”の一文字であった。 ――――――――― 設定は似せてますがポケスペでは無いです。 マサラから始まらないのでレッドのメインポケモンはイーブィに。 現在ヤマブキシティに住んでいます。 |
私がポケモンの二次創作を書くとこうなります。 ―――――――――― 彼の思い出は赤から始まる。 其処には自分の名と同じく、轟々と燃える赤が揺れていた。草原も、家屋も、木々も、人も……赤く、赤く彩られていく。 記憶にある彼が考えていた事は何であったのか。 ポカンと口を開け放って、子供が泣き叫ぶ声にも、隣人が苦痛を訴える叫びにも心動かされず、ただその炎を見つめて、 ――綺麗だなぁ。 そんな事を考えていた。 逃げて! 叫びと共に圧された背中の感触だけがやけにリアルに残っていた。 火が回っている事にも気付かず二回で留守番をしていた自分を救う為に、母が助けに来て……落ちてきた天井に押しつぶされる前に、外へと逃がしてくれたから。 その時は泣き叫び、助け出そうと近寄ろうとした。 来ちゃダメ! 叫ばれて彼の脚は一瞬だけ止まった。それでも、母を放っておけるはずは無く、近付こうとした。 どうにか近くに居た人に止められて、年の割には聡明だった彼は母が助からないと悟ってしまった。 泣き叫んだ。何度も、何度も母を呼んだ。救えないと分かっていても、助け出そうとした。 されども大人の力に勝てるわけが無く、あがいてもあがいても、彼はそこから動けなかった。 燃える木材の下で、安心させるように穏やかに笑う母を見た時に、彼の心は壊れたのかもしれない。 炎に包まれた熱さに耐えきれず張り上げられた断末魔を聞いた時に、彼の心は歪んだのかもしれない。 母の命を燃やしているような炎が綺麗だと、思ってしまった。 母が最期にくれた贈り物だと、思ってしまった。 記憶が曖昧な彼は、それから数時間、自分を止めた誰かが絶対に此処を動くなよと言い残して慌てて他の人を助けに行ったから、火を見つめて過ごした事しか覚えていない。 何も感じなかった。何も心が動かなかった。 救援されて数日経っても、目に焼き付いた炎だけを考えて呆然と過ごしていた。 火災の原因が人と人とが争った末に起きたのだと聞いても、なんら、心に浮かぶ感情は無かった。 ただ一つ心が動いたのは、避難場所の隣街でポケモン達が自分になついてくれた事。何故か懐き、じゃれてきて、触れ合う内に、楽しいと素直に感じられた。自然、という大きな存在に所属する彼らだけが、炎と同化した母と同じモノだと感じていたのだろう。 そんなある日、田舎町である為に孤児院も無く、ポケモンセンターで寝食を行っていた彼はとある光景を目にする。 ――どうして戦わせるんだろう。こんなに可愛くて、暖かい子達なのに。 繰り広げられていたのはポケモンバトルという決闘。 膝の上で眠るポッポを撫でながら、純粋に、それまで考えた事も無かった事実に彼は頭を悩ませた。 楽しそうに“バトルしようぜ”と言う人間たちに疑問を持った。後に、自分が戦わせたポケモン達を見て心配そうに駆け寄る人間たちが、さらに不思議だった。 だから、彼はそれから数日後に差し出された手を取ったのかもしれない。 コラッタが二匹、すやすやと隣で眠っていた。ポッポが膝の上であくびをしていた。自分の居場所だとでも言うように、オニスズメが頭の上で目を光らせていた。 どれもが野生では無く、ポケモンセンターに預けられた他人のポケモンであった。主が戻ってくると彼の元を離れ、また別の、リハビリ中のポケモン達が彼の元に集っていくのが彼の日常である。 一人の男は、なんとも面白いモノを見つけたというように、窓で哀しげに眉を寄せてバトルの様子を見つめている彼に近付いて行き声を掛けた。 「なぁ坊主。ポケモンと共に生きたいか?」 「……うん」 「そいつらが生きる世界を守りたいか?」 「……うん」 「なら、俺と一緒に世界を変えよう」 「世界を、変える?」 「ああ、そうだ。世界を俺達のモノにしてやればいい。人を支配すれば、ポケモン達だって守れるからな」 言葉の意味を理解するには、些か彼は若すぎた。 それでも彼にとって、その誘いは甘美な響きを持っていた。 「……バトルなんかさせなくても良くなる?」 ふと、男の瞳に陰が差す。哀しみなのか、怒りなのか、彼には分からなかった。 「それは坊主次第だ。俺が変えた後は、坊主が変えたいように変えればいい。方法などいくらでもある」 「……おじさんの話、難しい」 「おじっ……コホン、まあ、俺と来るなら坊主が変えたい世界のカタチが見つかると思う」 彼はじっと、膝の上に座るポッポを見つめた。恥ずかしそうに見上げてくるくりくりとした瞳に見つめられて、彼の頬が緩まる。 「分かったよおじさん。ボク、おじさんに着いて行く。ポケモンが傷つかない世界に出来るなら」 見上げた瞳には決意の色。煌々と光り輝く瞳は、男が直視するには眩しすぎた。 それでも目を逸らさず、男は彼の瞳を覗き込む。 「……契約成立、だな。坊主、名前は?」 「レッド」 「そうか。ほら、お前ら。レッドの門出だ、祝いを込めて見送ってやれ」 ビシリと張りのある声で男が言うと、レッドの周りに居たポケモン達は、寂しそうな目をしながらも何故か一列に並んだ。 おお~、と彼は素直に驚いた。どうだ、と自慢げに笑う男は子供のようだった。 一匹一匹の頭を撫でながら、レッドは微笑みを残していく。 「バイバイ、皆!」 最後にふりふりと手を振って向き直り、そのまま手を男に差し出した。 「おじさんはこれからボクのお友達だよね? だから握手」 「まずおじさんと言うのをやめろ。まだそんなに年は行ってない」 手を握り返すこと無く、咎める声には不満だけがあった。レッドと話している男の方が子供のように見えるだろう。 「おっちゃん」 「それもダメだ」 「……まだ名前も聞いてないから分かんない」 口を尖らせたレッドに、男はニッと歯を見せて笑って見せた。レッドはその笑みを不思議そうな眼差しで見つめた。 「これから一緒に暮らすんだ、友達というより家族だろう」 「家族? お母さんと同じ?」 「それも……レッド次第だ」 「また難しい。おじ……むぅ、はやく名前教えて」 くしゃり、と頭を撫でられた。名前は教えてくれなかったが、悪い気分はしなかった。 漸く手を繋いで貰い、そのまま引かれて、レッドはゆっくりと歩きだした男に倣って進む。二人共が何も聞かず、何も言わなかった。 ポケモンセンターを出て少し行った所で漸く、レッドの手を離して向き直り、今度は男の方から手を差し出した。 「サカキ、俺の名前はサカキだ。これからよろしくな、レッド」 「……うんっ!」 それがレッドの心に刻まれている、サカキとの初めての思い出であった。 ―――――― ロケット団シナリオ。触れてはいけない所に触れる悪いクセ。 こんな感じです。 |
なんとなく思いつくままに書きました。 ―――――――――――― 大変だ大変だ……そんな声が聞こえそうな足取りで駆ける少女が一人。白銀の髪を流し、普段は走らない彼女。 何事か、と扉を開ける者は多かったが、訝しげに首を傾げてその背を見やるだけ。 「秋斗さん! つ、月が欠けて行ってます! さっきまであんなに綺麗だったのに……」 一つの扉を開いた月は、開口一番に慌てて叫んだ。 蝋燭が照らす薄明りの中、本を読んでいた秋斗は視線を向け、 「へぇ……今日がその日なのか」 ぽつりと口にした。 のんびりとした彼の声に驚く。月は首を傾げて見つめた。 「どうして……月が欠けているんですよ?」 何か恐ろしい事が起こる前兆ではないか、と身体を震わせた。 くつくつと喉を鳴らして本を閉じ置き、窓に近づいた彼は目を細めて夜天に浮かぶ白を眺める。 「あー、やっぱり月食か」 「月食?」 近づき隣に並ぶ。見上げた白は、さっきよりも欠けていた。 「見るのは初めてなんだな?」 無言で頷いた月に対して、秋斗は緩く息を付く。 「月が食われるって書いて月食。月ってのは日輪の光を受けて輝くんだけどな――――」 つらつらと説明される内に、彼女の顔は驚愕に染まっていく。 現代では常識な事でも、この時代では非常識。例え名だたる天才であろうと、この世界をカタチ作る星が丸いなど、誰も信じはしない程に。 何故そんな事を知っているのか、とは聞かず、本当なのかとも尋ねられなかった。 「――――ってなわけで、別に凶兆ってわけじゃあない。まあ、お前さんの真名だし、不安になるのも仕方ないよなぁ」 「……へぅ」 その説明を聞いてしまえば、大騒ぎした自分が恥ずかしい。 彼から見た自分はさぞや滑稽に映っていたのでは無いかと、火が出そうな程に顔を赤く染め、月は両手で覆い隠した。 恥ずかしすぎて頭がクラクラし始めた月は、へにゃり、と膝から力が抜け、彼に抱きとめられる。 「おっと」 そんな彼の行動が、さらに恥ずかしさに拍車をかけた。 熱が昇った頭は暴走し始めた思考が渦巻く。 そうして……彼が言った『月が食われる』という言葉が頭に響いた。 ――月が食べられる……月が食べられる日なら、私を食べるにも最適な日なのかな? じゃ、じゃあ彼は……このまま……私を…… 乙女の思考暴走はかくも難しいモノである。 どうやってそうなったかは分からないが、結論に達した月は……ぎゅう、と目を閉じた。 「そ、その……今から食べちゃいますか?」 「はい? 何を?」 急な話題転換に疑問符を頭に浮かべまくった秋斗が聞き返すも、暴走した月は止まらない。思い浮かぶのは彼を慕う少女の事。 「雛里ちゃんはどうするんですか?」 なんで雛里が出てくる、と思考に潜れば、せっかくの月食なのだから誰かと何か食べ物をつまみながら見るのもいいのではないかと提案しているのだ……そんなズレた考えに行きつくのは、色気より食い気な秋斗にとってはいつもの事。 「んー、雛里も一緒に食べたらいいんじゃないか?」 一緒に! 内心で叫んだ月は驚愕に目を見開いた。 「一緒に、食べちゃうんですか……」 言葉が足りない。足りなさ過ぎる。 擦れ違いはもはや取り返しのつかないレベルに達し始めている。 「……? 月は嫌なのか?」 「……雛里ちゃんに悪いです」 ――三人で食べる事の何が悪いんだ? むしろ皆も呼んだ方がいい気がする。華琳とか特に。いや、それも悪いのか? でも雛里に悪いって事は、雛里と二人で食べて来いとも取れるし……。 わけが分からないよ、と白いあのキャラの声が秋斗の頭に響く。 何かがおかしい……漸く気付いた。月と雛里の仲は悪くない。何か食い違いが起きている。考えれば早い。彼女に聞けばいいだけである。 「なぁ、月。お前さんはどうしたい?」 彼はいつも通り、相手に結論を委ねた。 「わ、私は……」 俯き、ぎゅっと手を握った彼女は彼の腕の中。 体温が上がる。これから言う事を考えて、彼女の顔はまた、真っ赤に茹で上がっていく。 「私は――――」 「おい徐晃! 外を見てみろ! 月が変な欠け方をしてるぞ!?」 ガチャリ、と扉が開き、現れたのは春蘭。 秋斗も月もそちらを見た。 はた目から見れば二人はどう見えるか……それはもう、盛大な勘違いを与えてしまうことだろう。 目をまぁるく、呆然とした春蘭は、すーっと無言で身体を下げていく。 彼女にしては珍しい事に、空気を読んだ。二人には悪い事に。 パタリ、と扉が閉じられた。後に、大きな、とても大きな叫びが廊下に響いた。 「華琳様―――――――――っ!」 次第に遠くなっていく声と足音。聴こえなくなれば居づらい沈黙が包む。 月の頭は既に冷めていた。 「ごめんなさい」 「ちょっと行って来る」 言葉は同時。 彼がしなければならない事は何か、二人共が分かっていた。 次の日、彼は寝不足からかふらついていた。 ―――― 落ちが投げっぱなしなのはお許しを。 本編書かないとってなったので。ごめんなさい。 ではまたー |
どうもです。 なんやかやで100話に到達致しました。 読んで下さっている読者様方、ありがとうございます。 今回の話でいろいろとフラグが立ちました。 大きな一つは五将軍フラグ。へし折れるか回収出来るかは後ほど。 『魏武の大剣』『魏武の蒼弓』『神速』『黒麒麟』が現在の魏の二つ名持ちです。 秋蘭さんは今回の話の地の文で開示。 ちなみに、明は幽州の戦と徐州での戦で二つ名が出来ております。まだ開示はしておりません。 どんな感じかは後々、です。 まだ半分に到達しておりませんが、これからも完結まで、 楽しんで読んで頂けたら幸いです。 |
明日の投稿になります。 また一週間を破ってしまい申し訳ありません。 |
18時、次話投稿します。 劉表陣営が動く事によってどうなるか、お楽しみくださいませ。 |
最低でも四日は上げられそうにないかと。 申し訳ないです。 |
ちょっと私用で今日まで次話が書けておりません。 本当に忙しいのです。 なんとか時間を作って書きたいですが、仕事を持ち帰らなければならない始末。 やはり生活が第一でして、季節の転換期は体調が崩れやすい。まだ崩していないですけども毎年崩すのでそろそろ怖い。 最近寒いですが、皆さまもお身体にお気をつけてください。 取り敢えず、一週間以内投稿は難しいかもしれません。 遅れたらごめんなさい。 ではまた |
勢いでやった。後悔はしていない。 ―――――――― 漸く涼しくなったと肌を撫でる風が教える。 夜天には優しい光を届けてくれる満月。一年を通して、一番明るい夜なのではないかと、秋斗はそんな事を考えて、手に持った団子を口に運んだ。 「月が綺麗ですね」 見上げて零された一言。 秋斗はくくっと喉を鳴らして、嬉しそうに目を細めた。 「『俺……死んでもいいや』」 目を見開き、膝の上で座ったまま顔を上げて悲哀の眼差しで見つめてくる雛里は、どうしてそんな悲しいことを言うんですか、と無言で責める。 「お前の為なら、っていっても怒るよな?」 言葉を続けてくしゃくしゃと頭を撫でると、恥ずかしそうにあわわと呟いて俯く。 ふと、雛里は軽々しくそんな言葉を口にする彼では無いと気付いた。 しかしながら思考を巡らせても、分かるはずが無かった。 「今回発案のお月見、というモノにも驚きましたが……今の発言もお月さまに関係しているんですか?」 問われて、幾分かの静寂の後に、月を見上げながらまた笑う。 「うん。雛里が言った言葉がさ」 そのまま続けて、秋斗はつらつらと説明していく。 大陸の外では言葉が違う国もあり、ある言葉を月が綺麗ですねと訳した一人の文学者の逸話。 もう一つ、同じ意味合いの別の国の言葉を、他の文学者が死んでもいいわと訳した逸話。 二つ合わされて、雛里は予想してみた。それがどういった言葉を元にされているのか。 もしかして、というのに思い至り、 「しょ、しょの言葉は……」 顔を紅くして噛みながら、うるうると潤んだ瞳で見上げてくる。 優しく微笑みかけながら、またくしゃりと、秋斗は彼女の頭を撫でた。 「言わせんな恥ずかしい……って感じだ」 言ってほしくてわざわざ尋ねたというのに、いつものようにぼかす彼に、雛里はむーっと唇を尖らせた。 「……ちゅ、ちゅきが綺麗でしゅねっ」 くるりと身体を反転させて、見上げながらもう一度。今度は意識したからか噛んでいたが。 「ああ、そうだな」 悪戯っぽい笑みを浮かべながら躱す。また、雛里はうるうると瞳を潤ませて彼を見上げた。 頭を撫でて、彼はすっと、彼女の額に口づけを落とし、 「あ、あわわぁ……」 恥ずかしくて胸に顔を埋める雛里にまた苦笑を零す。 「言葉にしなくても伝わるだろ?」 気恥ずかしさから、ポリポリと頬を掻いての一言。 ジト目で見上げる翡翠の瞳は見えない振り。彼は一度だけ月を見上げて、彼女を抱きしめて耳元でその言葉を零した。 耳元で囁かれた一言を受けて、雛里もぽつりと同じ言葉を返した。 雛里はまたくるりと身体を反転させて、彼に背中を預けた。 二人で見上げるは真月。夜天の主たるに相応しい、綺麗な綺麗な白銀の輝きであった。 ~後ろの一コマ~ 「月が綺麗ね」 と華琳。 「月が綺麗だわ」 「月が綺麗よ」 「月が綺麗なのですよー」 「月が綺麗、です」 「月が綺麗ですね」 と、軍師五人。 「月が綺麗やなぁ」 「月が綺麗だ」 「うむ、月が綺麗だ」 と、将軍三人。 「月が綺麗だね」 「うん、月が綺麗」 と、親衛隊二人。 「月が綺麗なのー」 「月、綺麗やわぁ」 「月が綺麗」 と、三羽烏。 「月、綺麗だなー」 「ちぃと同じくらい月が綺麗ね」 「月が綺麗です」 と、三姉妹。 皆の真ん中で佇む少女が一人、顔を真っ赤にしてふるふると震えて、 「へぅ、へぅ、へぅ~~~~~~っ!」 その言葉が口にされる度に、口癖を零す。 にやにやと、誰もが意地の悪い笑みを浮かべていた。 詮無きかな。字は同じでも、読み方が違った。 団子や酒を持って語られた言葉はその少女に向けて。皆が見ているのは空に浮かぶ輝きでは無く、一人の少女であった。 性質の悪い悪戯だと思いつつも、沙和と秋斗が完成させた綺麗な服で着飾られているので何も言えず。 御月見をするなら、夜天の主の真名を持つ月をしっかりとドレスアップしよう、などと秋斗が発案したからこんな事になったのだ。 華琳がそれで遊ばぬわけが無く、褒めちぎって可愛らしい姿を堪能するのは当然であった。 「ちなみに、秋斗から聞いた話なのだけれど……『月が綺麗ですね』には“愛してる”の意味を持たせる事も出来るらしいわよ?」 最後に華琳から爆弾発言を受けた月は…… 「へぅっ!」 引きつけを起こしたような口癖を上げて、恥ずかしさから立ってはいられずに、近寄ってきた華琳に抱きかかえられ、彼女から愛おしげな視線を向けられたのを最後に気を失った。 ―――――――― 読んで頂きありがとうございます。 はい。今日は中秋の名月です。 なのでこんな短編を即興で書いて見ました。 月ちゃんをいじりたかっただけです。 |
偽物語の例のアレです。 途中まで思い浮かんだモノを。描写的にアウトかセーフか分かりません。 続きは……ご想像にお任せします。 ―――――――― 茶髪を後ろで纏めてチョロリと跳ねっ返らせた……胸がお世辞にもあるとは言えない少女――――牡丹は、部屋でのんびりと寛いでいた。 なんでもない休日である。普段ならば白蓮のストーカー、もとい、影ながらの護衛任務をしているはずなのだが、護衛する白蓮が居ないのではそれも出来ない。 一つの湯飲みをマジマジと見つめ、お茶を入れて飲もうとして結局止めたり、寝台の掛け布を身体に巻いてぐへへと厭らしく笑ったり……のんびりと寛いでいるとは言っても、大して暇では無い様子。 そう、此処は白蓮の部屋である。 入るのに許可、などというモノは取らなくていい。彼女は片腕であり護衛。白蓮の部屋に危ないモノが仕込まれていないのか確認するのも仕事であるのだ。 白蓮の湯飲みでお茶を飲むか悩んでいたのも、毒が塗られていたら大変だから。 白蓮の掛け布でぐるぐる巻きになっていたのも、毒針でも仕込まれていたら大変だから。 (断じて、白蓮と間接キスであるだとか、白蓮の匂いが染み込んだ毛布に包まれて抱きしめて貰っている気分に浸っているとか、そういう事では、無い。どちらも今日の昼には洗いに出すと言っても、確認は大事だろう……って感じの事を、牡丹なら墓穴を掘ってると気付かずに説明しそうだ) (なるほど……クク、間違いありませんな。秋斗殿には聞き取れない早口で捲し立てるでしょう) こそこそと話す二人。気が緩み切っているのか、牡丹は気配すら察知出来ていないようだ。 白蓮の部屋の服入れに、白と黒の二人は忍び込んでいた。もちろん、服は全て別の所に出してある。そして当然の如く、白蓮はこの事を知らない。 部屋の中心で騒ぐ声は黄色い、というよりは桃色であろう。白蓮様……と何回名を呼んでいることか。ぐへへところかげへへと笑う彼女は何を考えているのだろうか。 秋斗は若干引きながら独り言を思わず零す。 (それにしてもあの顔……なんだよあれ、悪い顔って言うよりゲスい顔じゃねーか。ゲスッチダヨーってか?) (む? ゲスっち?) 南半球どころか七十二な牡丹には関わりの無い話であった、とため息を一つついた秋斗は、説明しても分かるはずも無い為に適当に誤魔化す事にした。 (いや、なんでもない。ちょっと変な電波を受信してな) (またわけの分からない事を……まあいいか。それより秋斗殿、本当に白蓮殿が此処に来るので?) (ああ、計画通りに理由は説明せずに指示を出してある。牡丹には酷だろうが、これも白蓮の為だ。ちょっとお灸を据えて、且つ白蓮との仲もより良くなるだろう) (今の状況を目にしてもまだ仲良くとは、どうやって……いえ、楽しみにしておりますよ) (おう。クク、牡丹にとっては嬉しいはずの贈り物だし、白蓮にとっても牡丹の新しい面を見れる機会。危なくなったら止めればいいさ) 明らかに、誰が見ても悪い顔をした秋斗に対して、星は訝しげに眉を寄せるも、すぐに同じような笑みを浮かべた。 悪戯が大好きな彼らにとって牡丹と白蓮は格好の的。元来素直な二人である為に、仕掛けに嵌ってしまうのは詮無きかな。 掛け布に顔を埋める牡丹はまだ、二人の思惑を知らない。 待つ事幾分。突然、牡丹の動きがピタリと止まる。さーっと顔を蒼褪めさせた彼女は、 「や、やばいですっ! 白蓮様の足音がっ!」 声と共に目にも見えない早業で掛け布を整え、全ての位置を自分が来る前に戻していく。 緊張と期待に胸を弾ませる秋斗と星は、どうにか全て終わらせて椅子に座った牡丹を、それぞれが服入れの隙間から覗いていた。 そうして、牡丹にとってある意味最高で最悪の時間が始まった。 † 秋斗に言われて部屋に戻ってきたはいいが、何も変わりない。牡丹が私の部屋にいる以外は。 説明はされている。私を見つめる瞳の意味も知っているし、一応その想いをしっかりと受け止めてもいる。だが、些かやり過ぎだ。 とぼけたら、私は秋斗に言われた手段を使わざるを得ない。 「お、おおお帰りなさい、白蓮様っ!」 分かり易い……素直すぎる牡丹では秋斗や星みたいに誤魔化す事は、やはり出来ないらしい。 「……牡丹、何してたんだ?」 「白蓮様の部屋に異常がないか確かめてました!」 無駄に元気のいい声は私の耳に良く響く。ああそうだ、それは間違いないだろう。 「ふーん……秋斗から、牡丹が休日に私の掛け布で遊んだりしてるって聞いたけど?」 「……あ、の、バ、カ~~~~っ!」 別に名前出してもいいよな。これは正しい事だ。疚しい気持ちが無ければ、秋斗に非は無いはずだ。 ――とりあえず確定、か。牡丹は私の掛け布でよからぬ事をしていたんだろう。秋斗や星の言う通り……く、くんかくんか……していたんだろうっ。恥ずかしいけど、言えばさせてやるのに、とは言わない。変態みたいだから。いや、言わなくても変態だ。私は……変態だったのか…… 無駄に落ち込んで行く思考。牡丹の暴走癖がうつったようだった。引き摺られそうになるもどうにか振り払い、じとっと牡丹を睨んでみる。 「隠れてこそこそ何かをするような奴には……罰を与えないとダメだな」 「っ! い、いえ、何も疚しいことなどしていませんそうですはい私は別に白蓮様の掛け――――」 「言い訳、無用だ、牡丹」 「――――ごめんなさい……」 三つ言葉で睨んだ。絶望に瞳を落ち込ませて、牡丹は俯いた。 とは言っても、今日は特別な日だから機会をやろう……というのが秋斗の提案。 私はそれに乗ったが、これが何を意味しているのかは分からない。秋斗は贈り物、兼、罰だとか言ってたけど。 無言で俯く牡丹に近付く。私が片手に持っているモノには、気付いてもいない。 ――本当にこれに意味あるんだろうな、秋斗? 「では罰を与える……よりも、いつも世話になってる礼もある。そこで私と賭けをしないか?」 「か、賭け、ですか?」 不思議そうに私を見上げた牡丹。うん。私にもわけが分からないからあまり深くは聞かないでくれ。 「そうだ。コレで勝負しよう」 すっと手に持って上げてみせたのは……歯を磨く道具、ハブラシ。リンゴ味の“歯磨き粉”もある。どちらも曹操の所の李典が秋斗の入れ知恵で開発したモノだ。作り方は極秘らしいので秋斗さえ知らない。 「それは……私のハブラシ、ですか? 歯を磨く道具で何を勝負するんですか?」 ああ、こんな勝負は私にもわけが分からない。あのバカは何を考えているんだ。 「そうだな牡丹。こいつはハブラシ。確かに歯を磨く道具だ」 「そうですよ。私のハブラシです。もしかして、私がそのハブラシで歯を磨くのが勝負なんですか?」 「それが勝負じゃあないんだ牡丹。お前が磨けとは言わない。磨くのは私だ」 あ、これって言い方やばいかもしれない。ほら……牡丹の顔が真っ赤に染まっちゃったじゃないかっ。 「そ、そそそ、それはまさか私のハブラシを使って丹念にこしゅこしゅと練り込むように白蓮様御自らが美しくて輝いていて白馬の如き白き歯をもっと白く磨き上げるという事で間違いないですか!?」 早口過ぎて聞き取れなかったけど、どうせ私が牡丹のハブラシで“私”の歯を磨くと思ったんだろう。 「違う。そんなことしない。私は私のハブラシでしか自分の歯は磨かない」 しゅんと落ち込む牡丹。『当たり前だろうが、この変態』と言っても喜ぶだけだから言ってやらない。 「じゃあ何を……」 問いかけてきた牡丹に、すっとハブラシの先を向ける。なんか……傍からみたらかっこ悪い絵図にしか見えないんだろうな。星とか秋斗が見てたら大爆笑だっただろう。 「いいか牡丹。私はこれで歯を磨く。でも私の歯は磨かない。“お前の”歯を磨くんだ」 「はい……はぃぃ?」 呆けて見つめる牡丹と同じく、私にもこの意味は分からない。秋斗の考える事には大抵意味があるはずなんだけど、今回ばかりは全く持って、これっぽっちも意味が分からない。 だから、問答無用で、適当に押し通すっ! 部下を信じるのは、太守の務めだからっ! 「他人に歯を磨かれるのは初めてだろう? 初めてを誰かにされるのは、お前の主たる私であっても抵抗がある……はず。その抵抗を見せなければお前の勝ち、抵抗したら私の勝ち。お前の忠誠心を試すいい勝負、だと思うんだ。お前が勝ったら御咎めなし、私が勝ったら罰則を与える」 まるで新手の優しい拷問。羞恥心に耐える、なんてモノに近いのではないだろうか。 でも、秋斗……お前牡丹の事分かってるだろ? こんなモノではこいつは…… 「ふふっ、いいですよ? 抵抗なんかするわけないです。むしろ望む所って、あのバカがいたら言いたいくらいですよ」 あ、やっぱりこいつ気付いてる。これが秋斗の発案だって。顔が凄みのある笑みに変わった。着々と仕返しの算段を立ててるに違いない。逆にいじり返されるのは目に見えてるけど。 「あのバカとか、星とかに歯磨きされるのは絶対に嫌ですけど、白蓮様にでしたら何されても恥ずかしくありませんからねっ」 わざわざ言い聞かせるように言葉を紡いだ。自分にか、此処には居ない二人に対してか。でも牡丹、秋斗にも星にも、押し切られたら結局は許しちゃうのがお前じゃないか……とも言わない。 「じゃあ勝負開始でいいな。ちなみに、時間制限は……ん、これでいいな」 机の上の絡繰りを設定。小休憩の時間をいつもこれで決めてる。半刻にも満たない時間で鳴るだろう。 寝台に腰を下ろして牡丹に厳しい目を向けた。 「じゃあ、ここに座れ」 「はいっ」 楽しげに私の隣に腰を下ろす牡丹。本当に……どうすればいいんだ、これ。 とりあえず言われた通りに歯を磨いてやろう。もう私の負けでいいからさ。 首の後ろに手を回し、じっと見つめてくる牡丹の目を見据えて…… 「あ、あーん」 「ふふっ、あーん♪」 心底楽しいのだろう、分かり易い声音は弾んでいた。もう引き返せない。 ――私は、こいつの歯を磨くっ! 心を引き締めて脳内で叫ぶと何故か気合が入った私は……白いモノをかけた固い棒を牡丹の中に突っ込んだ。 「……へぁうっ」 先で中央に位置する赤を撫でると牡丹から変な声が出た。目を見開き、ふるふると揺れる瞳は私を見ずに宙を彷徨う。 ゆっくりと……前へ押すと……凹凸が私に伝わる。同じくゆっくりと……後ろに引くと……棒を追うように赤が蠢き、ぬめりと光る。 「……ぁっ……っ!」 気にせずに前へ後ろへと出し入れを開始。 「……っ! ……ふぁっ……んっ……っ!」 シャコシャコと一定の間隔で鳴る音はどこか爽やかさを感じる。うん、なんか掃除してるって気になる音だ。 ただ……牡丹の様子がおかしい。おかしいんだ。 悩ましげに眉を寄せ、目は焦点が合っていない。漏れ出る声も苦しそうだった。 ――おかしい。私は何をしている? 私はただ、歯を磨いているだけだ。なのにどうして、こいつはこんなに苦しそうなんだ…… やり方が悪かったのかもしれない。申し訳なさが心に浮かぶ。哀しい気持ちも湧いてきた。私はこいつを……苦しめてしまってるんだ。 もっと優しく、丁寧に磨こう。歯茎から舌、はたまた頬の内側に至るまで……優しく、丁寧に、丹念にハブラシで撫でてやろう。 速度を緩め、そっと棒を奥へと滑らせていった。 「ひぁぅっ!」 瞬間、ビクリと身体を少し跳ねさせて、私の腕に身体を預けるがままになった。 危なかったぞ、間違いなく、棒で喉を突いてしまいそうだった。吐き出してしまわれても困る。白いのは口の中に入れといてもらわないと。 危ないから、寝台に寝かせてやろう。絶対に飲むんじゃないぞ? いいか、口に含んだまま、だからな? 綺麗にしてやるんだ。私が、牡丹の中を、白馬のように白くしてやるんだ。 そうして私は……ハブラシで牡丹の歯を磨くという行いに没頭していったのだった。 ゲスだらけなこの職場。 あの子達、疲れてるのよ…… 隠れている秋斗は白蓮さんに対して「よし、そこだ! 行け! もっとやれ!」と内心でつぶやき、にやにやしてたり。星さんは結構ウブな所があるので顔を真っ赤にしながら二人の様子に興味津々、且つ、ちょっとずつ秋斗に身体を寄せて行ってみたり。 そんな甘い事象もあるかもしれません。 白蓮さんはいつのまにやら百合っ子覇王様を凌ぐドエスになってしまっていたようですw 歯磨きはやはりイイモノですよね! ゲスが三人に堕天使が一人、ゲスが三人にSが一人、もういっそゲスが四人でイイ気がしてきたww 見方次第で牡丹ちゃんも天使なんですが…取り敢えず四人とも汚れて色々と達観しているのは確かだ。 なんでしょうこれは…牡丹ちゃんは普通?に悶えているだけで白蓮は普通に歯磨きしているだけなのに 白蓮は完全に善意の独白がドS太守のそれになっている、この状況を楽しんでいる筈のゲスお二人は ちょっと大変な事になってそうですね、下の方が。 ゲスとは書きましたが四人とも好きですよ、根っからの下衆ではなくて「やだエッチ変態」くらいの意味です |
どうも、公開つぶやきではありません。 少しばかり遅れましたが、 8月31日を以って、私の描く物語『乱世の確率事象改変』は一周年です。 このサイト様では違いますが、一区切りのご挨拶を。 前サイト様から見て下さっている方々、新規で読んで下さっている方々、本当にありがとうございます。 読んで下さっている方々がいる、それだけで心が励まされます。 しっかりとエンディングに向けて頑張ります。 敵、味方、原作の勢力……いろいろと思考を回し、心情を読み解き、描いてきました。 外史設定、かなり苦悩しました。 そして……多分、桃香と華琳が一番悩んだ。 今生きる命を一人でも多く救いたくて、戦を根本的な部分から止めようと動いた桃香。 理想を見据えながら現実を見て、天下統一を為して、三国連合を作り上げて戦の種を世から消そうとした華琳。 どちらも正しくどちらも間違い。私はこの言葉が好きですよ。 だから、桃香を劣化させて、貶める事はしたくありませんでした。平和の維持に尽力する彼女を描きたかったのです。 原作の心理をなぞったのは連合参加まで。そこからは根っこは変わらないまでも成長した桃香を描こうとしました。まあ、筆力不足で中途半端かもですが。 皆様から見て私の描く彼女は、今はどうでしょうか? そういう感じに描けていたら幸いです。 そして華琳。 原作の彼女は、恋姫達の誰よりも桃香の事を認めていた、と思います。だからこそ三国連合に落ち着きましたし……。 掲げるモノは認めない、でも人間としては認めているって感じでしょうか。 連合国家と同盟国は似ているようで違います。 同盟は信用と牽制、連合国家は信頼ではないでしょうか。 あの魏のエピローグは、そういった華琳の信頼のカタチが現れて、三国連合になったんだな、と私は感じてました。 だから私にとって、蜀と呉のエンドと、魏のエンディングは重さが違うのです。 しっかりと覇王な華琳様を描きたいですね。 彼女が言っていた 「殴って、殴って、殴りぬいて、そうして降ったモノを私は慈しむ」 やっぱりそんな彼女を描きたいです。 私の描く物語、まだ絶望ばかりです。 絶望にのた打ち回り、それでも諦めないからこそ、人は美しいです。 痛くて、苦しくて、悲しくて……でもその後に、にっこり笑えるからこそ、人は綺麗です。 絶望の中、恋姫達が縋るのは希望ではなく、自分の力と想い。そんな感じになればいいですが……難しいですね、やはり。 そんな物語を描きたいです。 言うならばたかが二次創作ですが、誰か一人の心にでも、僅かな影響を与えられたらな、と思う次第です。 理不尽と絶望が蠢く乱世。救いがあるかはエンディングで。 「彼」と『彼女』と“彼女達”が世界を変える物語、です。 私の仕掛ける罠にもお気をつけくださいませ。 ではまた |
オリキャラのイメージを軽く上げておこうかと思いまして、 明ちゃん(張コウ)私服スタイルらくがきです。 赤髪、金の瞳でイメージして頂けたらよいかと。 ド素人の私のレベルではこれが精一杯なのです。ご容赦を…… 服ってどうやって書けばいいのか…… じっくりレベルアップしていきます。 よろしければなんでもいいのでご意見ご感想を頂けたら嬉しいです。 |
なろう様で依頼があった肝試しフェイズの前編になります。 作品は夏祭り中なのでつぶやきにて投稿。 ――――――――――― 狂骨は井中の白骨なり 世の諺に 甚しき事をきやうこつといふも このうらみのはなはなだしきよりいふならん その話を聞いた後、背筋を駆け抜ける寒気に身を震わせていた。 「――――だから古い井戸に近付く時は気をつけろよ。まあ、井戸じゃなくてもいるわけだが……ほら……狂骨が……お前の後ろにっ!」 「……っ!」 季衣と流琉、そして春蘭と月、凪と沙和と真桜が一列に並んでいた為に、指を差されてバッと振り向いた。 「もう兄ちゃん! 驚かさないでよ!」 「兄様のいじわる!」 「徐晃……あ、後で覚えておけ……」 「ほ、ホントに居るかと思ったのー」 「……大丈夫いない。いないんだ。大丈夫だ、問題ない」 「な、凪? 大丈夫とちゃうやん」 何もいないと分かってほっと息をついて……じろりと彼を睨むモノや混乱するモノ多数。 「ふ、ふん、いるわけないじゃない! そんなの空想よ! く、う、そ、う!」 「そうよ! そんな話聞いたこと無い時点でホラ話だわ!」 腕を組んでいる桂花と詠は強がっているのか腕がふるふると震えている。後ろが気になって仕方ないようで、目を泳がせてもいた。 「ふふ、まあ中々に楽しめる話だったな」 「せや! でも話しとる時の秋斗の顔の方が……クク、おもろかった。ほら、こーんな顔しとったやんな?」 「……っ……ひ、卑怯だぞ霞……くくっ……」 霞が向けた表情に、秋蘭はどうにか耐えようと顔を真っ赤にしていた。 「ふむ、不思議なお話ですねー。聞いたこと無いのにいそうな気がするのですよー」 「狂骨というあやかし。人の恨みから変化するモノは書物でも見た事がありますが、骨だけという事は井戸の底に沈んでいたのか……それとも……」 「使わなくなった、井戸限定なのかもです、稟ちゃん。それよりも、特筆すべきは恨みの強さがどれくらいでなるのか、ではないかと」 「おお、恋人を取られた女の人とかだと凄そうです。白骨では睦事も楽しめないですしー……お兄さんの言葉で言えば……骨ぷれい?」 「風ちゃん、それではしゃぶる、くらいしか出来ないです。それも男の人が」 「さ、朔夜……もう少し柔らかく言葉を包んでください……はっ! つまり骨までしゃぶりつくしてくれという女の切なる願いも狂骨の発生理由!?」 「うーん、逆に男の人を開発――――」 風、稟、朔夜の三人は軍師らしく思考を回していく。かなり間違った方に、であったが。 「ねぇ、骨になったら……声って出るのかな? 歌えないのはお姉ちゃんやだなー」 「……姉さん、さすがに喉が無いから無理だと思う」 「気合でなんとかなるわよ。でも可愛い服を着こなせないのは嫌ね」 何処となくズレた天和の発言を広げていく人和と地和。さすがに白骨が踊る舞台とか誰も見たくはないだろうに。 「人の恨みは怖い、そういう事でしょう、秋斗?」 「まあな。こういう話は大体そんな感じに落ち着くもんだ。しっかし、ちょっとくらい怖がってくれてもいいじゃないか、華琳」 隣からの凛とした声を受けて、不満げな目を向けた秋斗は、膝の上で震える小動物を撫で続けていた。 ぎゅっと抱きついて離れない小動物は……雛里。 夏だから怖い話しようぜ、と秋斗が唐突に言いだして、夜に皆を集めて蝋燭の前で話している。さながら、百物語である。 雛里は始めの一話からずっと秋斗の膝の上で震えていた。 「有り得ないモノを怖がってどうするのよ。それよりも……そろそろ秋斗から離れなさい、雛里」 「……っ……あわわぁ……」 彼の胸に顔を埋めて返事をしない雛里に、華琳のこめかみに青筋が立って行く。 ――正直……華琳の方がよっぽど怖い、なんて言ったらダメだよなぁ……武器が鎌だし、死神っぽい。魔法少女しにかる☆かりん……って感じなら可愛いんだがな そんな事を考えた瞬間、ジトリ、と華琳は秋斗を睨んだ。 「あなた……失礼なこと考えなかったかしら?」 「現実の人間の方が怖いなぁって考えてた」 真実を混ぜて曖昧にぼかす彼はいつも通り。 目も合わさずに放たれた一言は、殺気と怒気を彼女に含ませるには十分であった。 「……へぇ、そういうこと。なら、現実の人間の怖さがどんな場合に体感出来るのか、試してみたらいいじゃない」 あ、やばい……そう、秋斗は感じて、どうにか話をずらそうと瞬時に思考を巡らせる。何処からか鎌を取り出してきそうな雰囲気。 思いついたのは、怖い話に関連したよくある夏の定番。此処に留まっていたら、目の前のドエス覇王に脅されて夜通し苛め倒されると気付いた為に。きっと他の者達も混ざって大変な事になるのは予想に容易かった。 「あー……そういえばさ! 華琳が信じてないなら、肝試ししても問題は無いよな!? 信じてないなら怖くないだろうし、な!」 「肝……試し?」 「うん。まあ、度胸試しみたいなもんだ。夜に一人ないし二、三人で外を歩く。目的地に、ビビらず驚かずに到着出来るかどうかを楽しむ感じだ」 「……」 苦しい逃げであったが、思考に潜り始めた華琳からはもう怒気は感じない。 ほっと一息、秋斗はそろそろ雛里に離れて貰おうと下を向くと……目が合った。 「怖いのは……や、です。したくないでしゅ。いや、でしゅ」 いやいやと首を振って示す雛里は、肝試しをしたくない様子。どうやら本当に怖いらしい。 うるうると子犬のような瞳は懇願の色に溢れ、こちらもやばいと秋斗は動揺を隠せない。 しかし……既に後の祭り。華琳に提案をした後であるならば…… 「ふふ……肝試し……悪くない。私の愛する者達の怖がってる顔もみたい。私に抱きついて来る愛らしい子達を後でたっぷりといじめて可愛がってあげられる。何より、秋斗を驚かせて怖がらせて、いじめる口実にしてしまえば……」 着々と算段を立て始めているのは必然。もう逃げられない。楽しい事といじめるのが大好きな覇王が本気を出し始めたのだから。 華琳の独り言は聞こえていなくとも、どうせそんな事を考えているんだろうなと秋斗はげんなりする。 「雛里ごめん、やっちまった。こうなったら華琳は止まらない」 「うー……」 震えながら秋斗に抱きついた雛里。それがまた、華琳の心を苛立たせているとは知らず。 今日は解散だと華琳が言い放ち、突発的な怪談会は終了を告げた。月と詠はこれ幸いと、秋斗の部屋へと一緒に向かい、いつかのように四人で並んで寝た。 月、詠、雛里、秋斗を除いた全員が、もう一度この部屋に集まるようにと内密に告げられていたとも知らずに。 † 肝試しをやりましょう、と華琳が言いだしたのは怪談話の三日後である今日の夕方。有無を言わさぬその笑みは、俺の顔を引き攣らせるには十分だった。 クジで肝試しの順番を決めよう、と流れるように桂花が言い出した時点で確信した。 ――この肝試し……俺を嵌める為に用意されてやがる。 間違いなかった。俺がクジを引く時、誰しもの目が怪しい光を放っていたのだから。いや……霞が一人だけ別の獲物を狙っている感じだったな。また凪が神速の犠牲になるんだろう。 俺を驚かす、とかそういう事に決まってる。あの華琳だ。開始する前に賭けを持ちかけて来るかもしれない。 敢えて、皆の思惑に乗る事にした。だって悔しいし。やはり俺は負けず嫌いらしい。 クジが仕組まれていたのは予想通り。真桜の持ってきたクジに何かしら細工が仕込まれていない方がおかしいだろ。 一応全員が庭を回る事になっているようで、一番怖がりの雛里を俺と一緒に行かせる事にしたようだ。 霞は当然の如く凪とペア。やはり凪は犠牲になったのだ。俺の犠牲の為の犠牲にな。霞の神速は肝試しでは最大の脅威だ。神出鬼没の遼来来……乱世ならまだしも、平穏な治世では見たくないが。 ちなみに月と詠は昨日別の街に視察に向かい、三姉妹は店長と共に店で働いてるから居ない。 「さて……秋斗、私と賭けをしなさい」 やはり来たか。 華琳は俺に獰猛な肉食獣のような笑みを向けていた。 「どんな?」 「怖がったりしたらあなたの負け。しなければあなたの勝ち。雛里に詳細は聞くから」 「賭けには景品がつきものだが、なんだ?」 「あなたが負けたら私の言う事を一つ聞くこと。あなたが勝ったら……何がいいかしら?」 決めてなかったのかよ、とは突っ込まない。勝つ事前提で話して来るあたり自信の程が伺える。 無茶な注文はしてこないだろうが、雛里が隣でむくれている。華琳が求めるモノを知ってるんだろう。って事は……二人でデートとか、そんなとこか。 なら、俺の注文は一つだ。 「華琳が一日のんびり俺以外の誰かと休むってのはどうだ? 出来れば華琳が怖がる所を見た奴がいいんだが……」 ちらりと周りを伺うと、桂花と春蘭がやたら気合の籠った眼差しをしていた。バカめ。掛かりやがった。 次いで、華琳の纏う空気が厳しいモノに変わる。予定外の反撃になったようで何より。 「いいでしょう。その賭けで成立ね」 ふん、と小さく鼻を鳴らして離れて行った。拗ねたらしい。乱世では見せなかったあんな仕草も、今では普通に出せるようになったのは何よりだ。 桂花と春蘭はこれで無駄に頑張るだろうから、華琳に辛く当たられて、より俺に対する殺気を向けて、気配が読みやすくなる。 問題は霞と……真桜だ。もし、こんにゃくとか背中にいきなり垂らされたらさすがにビビるぞ。 そんなこんなで皆が肝試しへと繰り出す中、俺と雛里は最後に出る事になった。あからさま過ぎだろうに。 隣では雛里が震えている。夜の庭は灯りが無くて暗い。本当に怖いらしい。怪談話が尾を引いてるんだろうな。例え人が驚かすと知っていても、他のナニカが出て来るかもしれない、と。 遠くで悲鳴が聞こえた。三番目に出た春蘭のだった。以外と怖がりだからな、あいつ。一番目の霞か、二番目の真桜にやられたか。 大丈夫。警備は万全だって言ってたから、不可測の侵入者は無い。むしろこの城に来る命知らずはいない。侵入経路には馬岱と真桜が組み上げた凄い数のブービートラップが仕掛けてあるし、あいつとあの子を警備に付けてる以上、気付かないわけが無いからな。 ただ、ビクリと跳ねた雛里は繋いでいる手をぎゅっと握って……俺の服にしがみいてくる。 ――やばいくらい可愛いんですが……もう賭けとかより自室に連れて帰ってもいいかな? 暴走仕掛ける紳士ゲージはまだ大丈夫、なはずだ。 落ち着かせようとして、空いている手で頭を撫でると……またビクリと跳ねて、うるうると潤ませた瞳で見上げてきた。 ――あ、これ終わったら絶対お持ち帰りしよう。うん、決めた。 暴走した心を固めて、 「あわわっ」 抱き上げておいた。俗にいうお姫様だっこ。顔が近いが、どこで誰が見ているか分からんから何もしない。 ぎゅっと首に腕を回して抱きついて来た雛里は、安心したのかほっと息を付いていた。ただ、恥ずかしくなったのか、体温が上がっていた。 「これなら何か出ても直ぐに逃げられるだろ?」 「はひっ……しょーでしゅねっ」 これ以上の追撃は止めてほしい。そろそろ本気で部屋に戻りたい。 ――いかん。暴走するな、落ち着け。平常心じゃないと風とか朔夜とか稟に隙を突かれかねん。いつも通り、最悪の事態を考えておこう。 さすがに幽霊ってのは信じてないが……出た場合の事を想定しておくのも無駄じゃないと思うんだ。 『ここは俺に任せて逃げろ!』なんて死亡フラグを立てるわけにもいかないし、好きな女を抱っこして逃げるのは……ほら、なんかかっこいいし。驚かしてくる輩の心理に不意打ちを仕掛けられるのもある。 思考に潜るうちに、また悲鳴が聞こえた。五時の方向、あれは流琉だな。遅れてバキバキと木が軋む音が聴こえたから、季衣か流琉が怪力を発揮したんだろう。俺なら絶対にあの子達を驚かしたりしない。普通に死ぬぞ。 待つ事幾分、ついに俺達の出立を告げる鈴の音が鳴る。 時間を定期的に知らせるこの装置は、ネジ巻式のアラームみたいなもんだ。料理の時間を測る為にと真桜に作って貰ったモノだが、今や街では誰もが持っている。 また、ふるふると震えだした雛里の背を、大丈夫と示すように二回叩き、俺はゆっくりと脚を進めていった。 ―――――――― 読んで頂きありがとうございます。 こんな感じで如何でしょうか? 実は私、小学生の時以来、肝試ししてないんですよね…… 後編は雛里ちゃん視点と三人称でお送りします。 ではまたー |
お絵かきが苦手な私です。 パソコンで絵なんて書いた事も無いです。なのでノートにらくがきしました。 ふと思い到ったのでオリキャラの明を真正面から書いてみたら……うん、大体イメージ通りに書けた、と思う。 けど真正面からって何処か違和感を覚えたので今度なにかしらのアクションを付けて書き直してみます。 恥ずかしいから公開は無しに。 本編に於いてどうしても挿絵を入れたいシーンが一つ二つあるので、それに向けて練習しようと思いましてー。 小説も、自分がこんなの読みたいなってのが無かったので書き始めたわけで、挿絵もそんな感じで始めるようです。 今週は遅れたお盆で予定が結構ありまして次話はちょいと遅れます。 ではまたー |
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2014年 12月 28日 00時 25分