第一部 学園都市篇
断章 アカシャ年代記《Akashick-record》
??.----・error:『Nyarlathotep』
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んどさせようと笑い掛ける。不思議な事に、ごく自然と。
無論、そんな顔色で完全に安心などさせられる訳がない。撫子は、変わらず不安そうな表情だったが。
「……そう? 無理しちゃ駄目よ、後で温かいもの、持っていくから」
「ありがとうございます、ご迷惑をお掛けしてすみません」
「いいのよ。後、少しずつ温めるのよ? いきなりは体に毒なんだからね」
頭を下げ、風呂を借りる。着替えは、撫子の好意で設置されている各借り主用の自分のロッカーから取り出す。
それだけで、酷く疲労した。だが、湯船から立ち上る湯気が僅かに活力を取り戻してくれた。
「…………早く寝たい」
ふらつく体と霞む意識で思ったのは、ただそれだけだった。
………………
…………
……
水滴。切妻屋根の庇から最後に一滴、ポタリと。ベランダの椅子に座り、ガウン姿で夕涼みをしていた褐色肌白髪のサングラスの巨漢へと。
安ホテルの一室、一番最上階のこの部屋は、ある意味ではこのホテルのスイートルームか。部屋の中では、ベッドの上で暇そうに銃の手入れをしている翡翠髪白金瞳の娘。
「――――遅かったじゃねぇか。で、首尾よく運んだのか?」
ピチャリ、と。雫の滴る音。それに、白髪の巨漢は半笑いで問い掛けた。全てを知りながら。
「……話が違う。ただの吸血鬼だとしか聞いていなかったのに、具現階位等と」
それに、何処からともなく現れた――――頭から爪先までびしょ濡れの、赤褐色の髪の美青年……米国海兵の迷彩服と軍靴、紺のTシャツで筋肉質な体を覆い、首に下げたドッグタグを揺らしたティトゥス=クロウは、ペイズリーの瞳を怒りに染めながら。
「お前が逃した魚は、随分な大物だぞ――――なぁ、『セラ』?」
「うっ……べ、別にボクが兄貴に頼んだ訳じゃないじゃんか! 伯父貴が『兄貴に任せとけ』って言うから、仕方なくそうしたんだい! じゃなきゃ、こんなとこでうだうだやってないっつの!」
睨み付けられて一瞬たじろいだ娘だったが、直ぐに鋭い牙を剥いて反論する。それは目の前の青年に対して、というよりは、今も薄ら笑う壮年の男に対しての意味合いが強いだろう。
「何だ、放蕩娘。俺の采配が悪いってのか?」
「少なくとも、良くはないじゃんさ!」
それに異論はないのか、ティトゥスも口は挟まない。元々、無口な性質というのもあるが。
「ああ、ウルセェなあ……折角、黄金の国で休暇だったっつーのに、何が悲しくて糞餓鬼共の面倒を見なきゃいけねぇってんだ」
それを尻目に大瓶のビールを喇叭飲みしながら、男性は実に鬱陶しげに呟いた。
「言われた事しか出来
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