暁 〜小説投稿サイト〜
渦巻く滄海 紅き空 【上】
四 暮色蒼然
[1/5]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
中忍選抜第二試験の担当試験官、みたらしアンコの案内により第二試験場に着いた受験生達は、目の前の光景を眼にすると息を呑んだ。…一人の少年を除いて。

眼前に広がるのは、鬱蒼とした不気味な森。その奥からはギャアギャアと喧しい鴉の鳴声に雑ざって猛獣のような唸り声が聞こえてくる。


「此処が『第二の試験』会場、第四十四演習場…別名『死の森』よ!」
愉快そうに笑みを浮かべるアンコとは対照的に、受験生達は蒼褪めている。
「…何か、薄気味悪い所ね…」
ナルと同班である春野サクラが、誰ともなしに呟いた。
「フフ…此処が『死の森』と呼ばれる所以、すぐ実感することになるわ」
サクラの呟きが聞こえたのか、アンコはますます笑みを深める。ニヤリとした冷笑だがどこか色っぽさを感じさせる笑みである。
「だーいじょうぶだってばよ!サクラちゃん!怖くなんかないってば!!」
サクラを慰めるように、強がりながらナルが声を張り上げた。
「そう…君は元気がいいのね…」
ナルの態度を見てニッコリ微笑んだアンコは、おもむろに袖からクナイを取り出す。下忍には速すぎるスピードでそのままソレを彼女に投げつけようとした。


その瞬間―――――――体が凍りついた。


(なにっっ!!!)

体の全機能、心臓までもが止まるような凄まじい殺気がアンコを襲った。
声どころか息もできず、殺気の出所も全く把握できない。しかも、彼女以外の人間が平然としていることから、アンコただ一人に向けられたモノだと理解できる。
実際殺気を感じたのはほんの数秒だったが、アンコにとっては未来永劫に続くかのように感じられた。
そのお蔭で手元が狂い、投げつけたクナイはナルに傷一つ負わすこともなく。
気づいた時には受験生である草隠れの下忍に、投げたクナイを返されていた。


第二試験の説明を受け、『死の森』に繰り出していく受験生達の後ろ姿を見送りながら、アンコは先ほどの殺気の出所について思案に暮れていた。
(あれほどの殺気…普通の下忍が出せるような代物じゃない…一体誰…ッ)
殺気の余韻がまだ体の芯に残っており、震える身を抱き抱えるようにしながら彼女は顔をしかめた。
「なんにせよ、今回の中忍試験…嫌な予感がするわ…」
アンコは『死の森』を、一人見据えて呟いた。







「これから俺達は単独行動に移る」

『死の森』に入ってすぐナルトが口にした言葉に、多由也と君麻呂は唖然とした。
これから五日間ナルトと共に行動できると期待していたために、彼らが受けた衝撃は計り知れない。
「どういうことだ」
不満を隠しもせずに、多由也が仏頂面でナルトに尋ねた。
「多由也にはドス達三人を見張ってほしい。彼らは器候補・うちはサスケを狙って木ノ葉忍びを襲う手筈になっている。
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ