鳳苗演義
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やすい。
「海も近い、山もすぐそこ、町そのものも活気に溢れておる。霊穴もあるようだし、暫く日本でうろうろするのもいいやもしれんな・・・っと、いかんいかん!本懐を忘れるところだったわい・・・」
魂魄の気配はもうすぐ近くまで迫っている。こんな街中を動き回っているという事は既に何らかの形で肉体を得たのだろう。それでもなんら騒ぎが起きていないところを見ると、もう地球を壊す気は完全に失せていると考えて良さそうだ。
そしてとうとう伏羲の視界に”それ”は映った。
「♪〜♪〜♪〜」
「ぅなーお」
清潔感のある白いシャツとハーフパンツに身を包んだ小柄な体躯。
透き通る様に白い肌。艶やかな黒髪は胸の辺りまで伸ばしている。
始まりの人特有のリトルグレイ型の骨格はしていない地球人型の身体。
大きなヤマネコを連れて可愛らしい声で歌いながら歩くその子供に、伏羲は一瞬息が止まった。
(こやつ・・・こやつだ。魂魄が共鳴しておる)
確かに、彼女から女禍と同じ魂魄を感じる。しかし伏羲が固まってしまったのはそれが理由ではない。
彼女の姿に、かつての故郷で過ごした女禍の姿がほんの一瞬被ったのだ。
しかしその考えは直ぐに霧散させた。今はこの少女となった女禍の真意を見極めるとき。
(しかし本当にこの娘は女禍なのかのう・・・?確かに仙人骨はあるし魂魄も全く同質だが、何とゆーかこう・・・変わりすぎとちゃうか?)
・・・実はかつての故郷にいたころの女禍は悪戯好きの活発な女の子だった。あの頃の女禍をそのまま地球人の姿にすればアレでも全く違和感はないのだが・・・
(もしや、自分が女禍だったことを忘却しておるのか?わしが近づいても無反応な事を見るにその可能性も視野に入れておくか・・・)
実際にはあの少女の深層意識からこちらを見ている可能性もあるが、どちらにしろ夢渡りでも使わなければ真相は確かめられない。しばし考えた末、伏羲は魂魄を分裂させることにした。久々に伏羲の姿から二人の人間の姿に解れる。長く伏羲でいた影響か、かつてもっと不健康そうな見た目をしていた王天君も少しばかり健常人らしい姿に変わっている。とはいってもあくまで少しだけだが。
『”王天君”よ、わしはこのまま女禍の様子を見る。お主はその間に・・・』
『アイツの情報を集めればいいんだろ?』
『話が早いの。では頼んだぞ』
『アブなくなったらとっとと俺を呼べよ?』
短い会話と共に王天君は虚空に浮いた四角い枠の中に消えた。
「さて、”太公望”として動くのは一体何年ぶりだろうか?」
そう呟きながら太公望は―――
「と、追跡前に腹ごしらえじゃー!!」
――一直線に近くのたいやき屋へ飛んで行ったのであっ
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