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アラベラ
第一幕その三
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第一幕その三

「昨日彼女はどうしていたのかな」
「お母さんと二人でオペラを観に」
「王立歌劇場か」
「ええ」
「残念だった。僕はその日当直だったんだ」
 彼はオーストリア軍の将校であるのだ。
「残念だ。昨日もし自由だったら」
「けれど今日は大丈夫なんでしょう?」
「うん。けれど今日は昨日じゃないよ、残念ながら」
 彼は嘆きながらそう言った。
「もう決して戻りはしないんだ、僕と彼女の仲も。いや」
 彼は嘆きながら言葉を続けた。
「そんなものは最初からなかったのかも知れないな。僕が一方的に思い込んでいただけで」
「マッテオ・・・・・・」
 ズデンコは声をかけようとするが相応しい言葉を見つけることができなかった。だがそれでも言うしかなかった。ようやくその言葉を思いついて言った。
「大丈夫だよ、姉さんは君を愛しているよ」
「いつもそう言ってくれるけれど」
 マッテオはそう言いながらズデンコを見た。
「姉さんに手紙を書いたんだろう?三日前に」
「うん」
 マッテオはそれに答えた。
「じゃあ大丈夫だよ。気を確かに持って」
「けれど彼女はいつも僕に冷たい。あの時は返事の手紙だって来たよ」
「だったらいいじゃないか」
 実はその手紙はズデンコが書いたものである。姉の筆跡を真似て書いたのだ。
「しかし態度は変わらないんだ。これはどういうことだい?」
「それは」
 ズデンコは返答に詰まった。真実を言うことはできなかった。
「女ってそういうものだよ。気持ちとは裏腹に態度は意地が悪くなるものなんだ」
「そういうものだろうか」
 マッテオにはそれが理解できなかった。
「僕にはとてもそうは思えないんだけれど」
「それは君がまだそうしたことに慣れていないからだよ」
 ズデンコはそう言って彼を宥めた。
「それに姉さんはとても恥ずかしがり屋なんだ。口に出して言うなんてとても」
「君はいつもそう言ってくれるけれどね」
 マッテオは悲しい目をして彼女に言った。だが彼は目の前にいる小柄な少年が実は少女であるとは夢にも思ってはいない。
「けれど本当なのかい?君が僕のことを心から心配してくれているのはいつも感じているよ。本当に有り難い。けれど」
「けれど・・・・・・?」
「彼女が僕を愛してくれているというのは信じられないんだ。君が僕を安心させようとして言っているんじゃないのかい?」
「違うよ」
 ズデンコはそれに対して首を横に振った。
「どうしてそんなことを思うんだい?僕を信じられないの?」
「いや」
 覗き込む彼の目を見てマッテオはそれを否定した。この時彼は気付かなかった。その目が友を気遣うものではないということに。
「けれどもう疲れたんだ。今日のうちにはっきりさせたい」
「今日のうちに」
「そう
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