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アラベラ
第一幕その三
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なんだ。今日は懺悔の火曜日。大きなパーティーがあちこちで開かれるね」
「うん」
「そこでは愛の告白もある。全てを決めるには相応しいだろう?」
「言われてみればそうだけれど」
 ズデンコはここで彼の瞳に不吉なものを感じていた。
「君を信用するよ、何があっても」
「何があっても?」
「ああ、だから言うよ。今日もし駄目だったら諦める。明日人事部にガリチアに転任させてもらうよう申し出るよ。丁度士官に一人欠員があるんだ」
「そうなの」
「そこで彼女のことを完全に忘れる。けれど」
「けれど?」
 ズデンコは問うた。
「それで駄目だったら・・・・・・ピストルしかない」
 彼は俯いて暗い顔でそう言った。小さい声だった。
「それで全てが終わるからね」
「マッテオ、そんなことは」
「もう決めたんだ」
 彼は悲しい顔で微笑んでそう言った。
「君には本当に感謝しているよ。けれど僕は自分の気持ちを否定することはできない。だからそう決めたんだ」
「変える気はないんだね」
「残念だけれどね。だから・・・・・・頼むよ」
「うん」
 ズデンコはそれに頷いた。頷くしかなかった。
「じゃあね。今日は非番だけれど何かと準備があるからこれで」
「ええ」
「アラベラのこと、よろしく頼むよ」
 そして彼はそこから立ち去った。後にはズデンコだけが残った。
「どうしたらいいのかしら」
 彼女は一人途方に暮れていた。
「彼に会いの言葉を贈ることも姉さんの筆跡を真似て手紙を書くこともできるのに。けれど彼自身に私が言うことはできはしないのね。何て残酷な話なの?」
 彼女は椅子に座り嘆いていた。
「そして彼は私のことに気付いていない。私を男だと思い込んでいる。そんな私がどうして彼に言えるのかしら」
 マッテオは人を疑うことを知らない純朴な男である。軍にいるせいかそうしたことには疎いのだ。
「私が手紙を贈ってももうどうにもならない。彼はきっと死を選ぶわ。あの人ならきっとそうする」
 結果はわかっていた。マッテオの性格は何から何まで全てわかっていた。
「姉さんは彼を愛してはいない。けれど彼は姉さんを愛している。それはどうにもならない。そして私も・・・・・・」
 解決する方法は見出せなかった。彼女は一人途方に暮れていた。そこで扉が開いた。
「御苦労様」
 高く澄んで清らかな声が部屋に入ってきた。
「明日また同じ時間にお願いしますね」
 そして一人の美しい娘が中に入ってきた。
 長い金髪を背中に垂らしている。それはまるで金の絹の様に広がっている。そして白いまるで雪の様なドレスを包んでいた。その肌もまた雪の様であった。白く汚れのない白であった。
 顔もまた同じ色である。高い鼻に小さく紅の色をした唇がある。
 目は大きかった。それは澄んだ湖の
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