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アラベラ
第三幕その一
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「しかし貴女は」
「申し訳ありませんが」
 アラベラはまだわからないことばかりであったが疲れていたのでもう休みたかった。それで彼に対して言った。
「部屋に入れて頂けませんか?今日はもう休みたいので」
「休む?一人で」
「ええ。勿論」
 彼女はそう答えるしかなかった。
「少なくとも今宵までは」
「そう、今宵までは」
 マッテオはそれを受けてそう言った。
「だが明日からは違うんだね」
「ええ」
 ここで彼女は彼が何故そう言うのか不思議でならなかった。彼女とマンドリーカのことは知らない筈なのに。そして彼女が今日で娘時代と別れることも。
「しかし僕は違うんだ」
「どういうことですか!?」
 彼女は話をしながら彼が普段の彼とは様子が少し異なることに気付いた。
「いい加減にしてくれませんか」
 彼はアラベラの態度に遂に痺れを切らした。
「何をですか!?」
 だが彼女にはまだ何もわかってはいなかった。さらに首を傾げた。
「私には貴方が私に何を仰りたいのかよくわからないのですが」
「アラベラ!」
 彼はここで語気を少し荒わげた。
「何を言っているんだ、とぼけるのもよしてくれ」
「とぼけてなんかいませんわ」
 彼女は少し腹立たしさを感じながらも穏やかな言葉で返した。
「先程も申しましたように私は今帰ってきたばかりですから」
「またそんなことを言う」
 彼は次第に顔を曇らせてきた。
「あの時君は」
「あの時とは」
 彼女はすぐに返してきた。
「さっきのことを忘れたとは言わせないよ」
「ですから私は」
 今帰って来たばかりだと言おうとした。しかしマッテオがそれを遮った。
「もうよしてくれ、僕を惑わせるのは」
「マッテオ、落ち着いて下さい」
「僕をそうさせているのは君だろう、それで何故そんなことが言えるんだ」
 その声は次第に荒く大きくなってきた。やがてホテル全体に響き渡るのではないか、と思える程になった。
「言うも何も私は真実を申し上げているだけです」
「では真実は幾つもあるのか。そんな話は聞いたことがない」
 マッテオはさらに言った。
「真実は一つしかないんだ、じゃあ君は嘘を言っていることになる。そして僕を惑わしているんだ」
「マッテオ、それ以上言うと」
 流石にアラベラも怒りを露にしはじめた。目を顰めさせる。
「じゃあ本当のことを言うんだ」
「何度お話してもわかって頂けないようですが」
 二人はホテルの前の廊下で言い合う。そこで誰かがホテルの扉を開けた。
「どうぞ」
「うん」
「娘は」 
 まずはアデライーデが入って来た。そしてコートをそのままにホテルの中を見回す。そこで言い争う娘とマッテオが目に入った。
「いたわ!」
 そしてすぐにアラベラの下に駆け寄った。
「アラベ
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