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アドリアーナ=ルクヴルール
第二幕その五
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いる。顕著に見られる例では貴族と平民では栄養の関係から平均身長まで大きく異なっていた。
「ああした話は極力無視するようにしていますがね。関わりあいになるとろくなことがありません」
 宮廷では陰謀が渦巻いていた。ルイ十四世の時代にはそれがもとで『火刑法廷』という血生臭い魔女狩りめいた騒動も起こっている。この時もルイ十五世の好色がもとでそうした話は絶えなかった。
「アドリアーナも注意したほうがいいですよ。出来るだけ首を突っ込まない。さもないと命がいくらあっても足りませんから」
「はい、よく心得ておきますわ」
「そうです、そうしたほうが身の為です。では私はこれで」
 ミショネはサロンを後にした。途中アドリアーナの方を何回も振り向く。
 しかし彼女は彼の気持ちには気付いてはいない。彼はそれを哀しく思ったが口には出さずその場を後にした。
 そしてサロンには誰もいなくなった。アドリアーナ以外は。彼女はそれを確かめると蝋燭の火を全て消した。
 中は月の光だけが差し込めている。青白い光がぼうっとサロンの中を照らしている。
 アドリアーナは立っている。そしてマウリツィオに言われた扉に近付いた。
「もし」
 彼女は扉を叩いて呼んだ。
「お返事を。お開け下さい。マダム」
 中にいるであろう女性に声をかける。マダムと言ったのはあくまで自分の直感からだ。
「御安心下さい、私は貴女の味方です、マウリツィオの名にかけてそれは誓います」
「マウリツィオの」
 中にいる公爵夫人はその名に反応した。そしてそっとアドリアーナに尋ねた。

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