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くらいくらい電子の森に・・・
第八章
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といっても、顔の動きに合わせてサラリと動くストレートの長髪が、実は結構好きなんだ。ハルがこんなに可愛く見えるのは、携帯の液晶が高画質というのもあるのだろうな。…ごめんな、ビアンキ。
「映像を切り替えてくれ」
紺野さんの無情な一言で、銀髪の美少女は二人のおっさんに取って替わられた。高画質液晶をもってしても美しくなりえない二人のおっさんは、魚眼レンズ的なアングルで撮影されているらしく、見るも無残に湾曲している。二人のうち、比較的若い方が左側に手を伸ばし、何かを押すような仕草をくりかえす。そのうち首をかしげて、隣の男と2、3言交わしてからカメラの前を離れた。
「…やっぱりな」
紺野さんがハンドルを切りながらつぶやく。
「警察?」用心深く珈琲豆を抱えなおして、柚木が訊いた。
「たぶんな。あのままあそこでダラダラしてたら、やばかったんだぞ」
「紺野さん、殺したの?」
「ははははそんなわけあるかっ!」
竹中直人の怒りながら笑う男みたいな顔で、間髪入れずに返してきた。
「…ニュースで言ってただろ、社内のトラブルがどうとか。あいつはMOGMOGの営業担当の1人だ。社内でトラブルが発生するとしたら、俺達とのことしかないだろ。しかも俺、昨日あのメール貰ったあと、ビックリしてついケータイ入れちゃってよ。多分最後の着信は俺なんだよ…しかも留守電、かなり喧嘩腰」
「やばいじゃん」
「もっとも、俺には後ろ暗いところは一切ないし、今来たあいつらだって参考人への事情聴収程度の気持ちだとは思うんだけど、念のためだ」
「じゃ、念のためラジオつけて」
「それもそうだな」
やがて、雑音交じりのポップスが流れ始めた。なんか流行ってるけど、僕はあんまり好きじゃないタイプの曲。最初不安そうな顔をしていた柚木は、やがてごきげんな感じで口ずさみ始めた。オフライン待機中のビアンキも、つられてふんふん言い始める。そんな感じで何曲かが終わると、やがて首都圏ニュースが始まった。
『昨夜未明、会社員の武内昇さんが、何者かに刺殺された状態で…』
朝と状況は変わらないらしく、犯人を逮捕したとか、そういう続報はないらしい。注意を逸らしかけたその瞬間、ラジオはとんでもない続報を付け加えた。

『携帯電話の着信、社内での事情聴収、現場に落ちていた遺留品などから、同じ会社の男性を重要参考人として捜索していますが、現在行方が掴めていません』

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「……遺留品!?」
全員が、同じことを叫んだ。僕と柚木の視線が、紺野さんの後頭部に集中する。紺野さんはバックミラー越しに、ぷるぷると首を振った。
「そんなわけあるか!だってお前ら、一晩一緒にいただろ!?」
「私、眠ってたし」
「僕も。現場、近所なんでしょ。僕らが寝てる間に、ちょっと出てサクッと……」
「そした
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