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【旧】銀英伝 異伝、フロル・リシャール
士官学校
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士官学校

「と、いうわけで本日は戦術コンピュータを使用した勝ち抜き戦である。君たち2年生にとっても、戦術理論の科目の上で、非常に重要な意味を持つことは言うまでもあるまい。さて、本日の試験には本学校校長であらせられる、シトレ校長にもお越し頂いた。心証を良くしておきたいと思う者は、せいぜい良い結果を残すことだ。以上、<戦闘開始>!」

 今日は後期の学期末試験の日である。
 3年生としてとっくに期末試験を終えているフロル・リシェールなどは、暇つぶしに今日の試験を見に来ている。この試験では高性能PCを使ったシミュレーションによって実戦と近い条件で、1対1の勝ち抜き戦を行う。その条件は試験直前まで公開されない。ある者たちは小惑星帯での遭遇戦、ある者は地域制圧戦など、その任務条件は多岐に渡る。

「そういやぁ、俺も去年やったなぁ」
「まったくお前ほど不真面目な癖に、この手の試験に強い男はいなかったな」
 フロルの横には、いつの間にかシトレ校長が歩み寄っていた。

「校長だって去年は褒めてたでしょう?」
「褒めるべきところは褒め、諌めるべきところは諌める、それが教育者だ」

 そういうとフロルは肩を竦めた。実はフロルは、この試験の昨年優勝者である。
 もっとも総合的な評価は、その後輩ヤンに勝るとも劣らない散々なものであるが。
 興味のない教科、例えば戦史57点、機関工学演習59点などはかなり悲惨であった。射撃実技65点、戦闘艇操縦実技68点に関しては技術的な障害よりも、むしろその授業態度が理由であろう。戦略論概説95点、戦術分析演習97点など、彼が授業にも真面目に出席し、尚かつ評価が高いものなどの方が少なかったのである。
 シトレはなんやかんや言って、この変わり者、問題児の生徒を可愛がっていた。そこはそれこそ、フロルの人徳というものだろう。そういう男なのである。


「今年の有力馬は誰ですか?」
「マルコム・ワイドボーンだろう。10年に一人の逸材と聞いている」
「ワイドボーンねぇ」
「どうした、ワイドボーンの優秀さはおまえも聞いてるだろう」
「俺は優等生が大嫌いでね」

 フロルは校内で有害図書愛好会を作っていたのである。本来の史実ならば、それはアッテンボローの業績だったが、彼は何より彼自身の<伊達と酔狂>でそれを結成し、活発に活動していたのである。

「じゃあお前は誰が優勝すると思う?」
「俺は、ヤンかラップを押しますね」
「ほぉ、あの二人か。ラップはともかく、あのヤンか?」

 ヤンとラップが親友、と呼べるほど仲がいいのは周知の事実である。
 もっとも落ちこぼれコンビ、というわけではない。ラップは諸事卒なくこなすタイプの生徒であり、今まで問題という問題を起こしたことはない。起こしたとしてもたいて
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