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冥王来訪
第一部 1977年
霈 その2
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翌日、早朝に改めてベルンハルトと岳父アーベル・ブレーメは屋敷を再訪した
館の主人とアーベルはベルンハルト達を置いて10分ほど室内で密議
興奮した様子で、部屋から出てくると外で待っている二人を呼んだ
「二人とも来給え」
屋敷の主人が椅子に腰かける
そして彼らを食卓に案内した
「まだ朝の6時前だ。軽く飯ぐらい喰ってからでも遅くはあるまい」
食卓には湯気の立ったソーセージと厚く焼いたパン、そして豆のスープが並んでいた
全員が座ると、
「朝早く呼んだのは、昨晩の話を彼に伝えるためだ
いくら保安省に近い、経済官僚とはいえ、売国奴共のことは見逃すことは出来んよな」
彼はアーベルを一瞥する
「さあ、喰え。冷めてしまうぞ」

「で、保安省の連中をどう抑えるのですかな」
コーヒーを飲みながら少将は尋ねた
「まずは穏便な方法で行く。まさかクーデターなんて大それたことをやる必要はない
あまり焦り過ぎるのは良くないぞ。シュトラハヴィッツ君」
灰皿を机に並べながら
「多少時間は掛かるが、中央委員会に根回しをしなくてはならない」
彼はそういうと少将にタバコの箱を手渡す
少将は軽く会釈をすると、数本のタバコを抜き取り、彼に返した
館の主人は、タバコの箱を回し終える
そして、もの言いたげな表情をしている少将の方を向いて、彼に発言を促した
「と言う事は」
男は眉一つ動かさず、聞く
覚悟したかのように、男は言った
「《おやじ》に、隠居してもらうのさ」
その場にいる全員の表情が凍り付く
彼は真新しいゴロワーズのタバコを開けながら、続ける
「その為に、軍には協力してもらいたい。前線の君達にこの事を話したのは訳がある」
そういうとシガレットホルダーを取り出し、両切りタバコを差し込む

覚悟したかのように、ベルンハルトが尋ねた
「つまり穏便な方策が、駄目であった時……」
屋敷の主人は、タバコに火を付ける
「みなまで言うな」
ゆっくりとタバコを吹かす
そして天井を仰いだ
「まずは、《表玄関》から入って、茶坊主共を掃除しなければなるまい。駄目だったら《裏口》から入る方策を用意して置けば良い」
「ですが……」
彼は、青年の方に顔を近づける
「ベルンハルト君。君は、政治家には向かんな」
そういうと笑いながらアーベルの方へ顔を向けた
「君が惚れ込むのも分かるよ。
こんな好青年を鉄火場には置いておけんな」
吸っていたタバコを右手でホルダーから外しす
ホルダーを左手にはさんだまま、思い付いたかのように手を叩いた
「なあ、身を固めなさい
年頃のお嬢さんを何時まで待たせる気だね」
ベルンハルトの目が泳ぐ
白く美しい顔の頬は赤く染まり、気分は高揚している様だ
「自分はまだ……」
男は新しいタバコをホルダーに差し込みな
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