暁 〜小説投稿サイト〜
Episode.「あなたの心を盗みに参ります」
本編
本編2
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「なに?」
「俺、婚約決まったんだ」

 どきりとした。心臓を直にぎゅっと握られたのかと思うくらい、胸が締め付けられる。

「うん……昨日お父さんに聞いたよ」
「おお、そうだったのか」
「よかったね。おめでとう」

 顔は見えていないけど笑顔を作って、明るい声を出すように努めた。アオイは、今どんな顔をしているのだろう。

「お前は?そういう話ないのか?」
「私は……お父さんには、お見合いしろって言われてるけど」
「うん」
「……あんまり、したくない」
「そっか」

 声色は、お互い変わらない。それ以上のことは、なにも聞かなかった。

 私は、アオイのことが好きだ。いつから好きだったのかは、もうわからない。ただ、ずっと好きだったのを、私は全く気づいていなかったのだ。

『えっ、お見合い!?』
『そう、親に言われててさ……今度、初めて相手の人と会うんだよ』

 初めてそう聞いたとき、言葉の意味はわかるものの、あまりにも飲み込めなかったのを覚えている。

『で、でも、私たちまだ高校生だよ?』
『うん。まあ、早いに越したことないんじゃないか?』

 笑ってそう言うアオイを見て、私は一瞬ポカンとしてしまって、返事ができなかった。
 アオイの言っていることが、よくわからなかった。
 結婚って、早い方がいいものなの?親に言われたからって、こんなに早くしないといけないものなの? ……嫌じゃないのかな。

『アオイは……その、好きな人とかいないの?お見合いなんてしちゃったら……』
『いないよ』

 いつもより少し強めの声だった。私の言葉を遮って、それ以上言うなというように。驚いてアオイの顔を見上げると、なんだか辛そうな笑顔を浮かべていた……気がする。

 というのも、そんな表情をしていたのは一瞬で、すぐにいつものへらっとした笑顔に変わっていた。そのあとも、いつも通り他愛のない話をしていたように思う。

 だけど、それから私は、お見合いの話を聞く度になんとなく辛い気持ちがして、すごく寂しくなった。お見合いがうまくいかなかったと聞いたときは、妙にホッとしていたし、うまくいきそうだと聞いたときは、胸が苦しくてどうしたらいいかわからなくなった。そうなったとき、やっとアオイのことが好きなんだと気づいた。

 そのうち私の両親も、私にお見合いの話を持ちかけてきた。どうしても嫌だった私は、両親の話をちゃんと聞かないではぐらかした。その話はしたくないとでもいうように、話がお見合いのことになると、すぐに自分の部屋に逃げた。……でも、お見合いなんてしたくないと、面と向かって言うことはできなかった。私がしないとしても、アオイがお見合いをやめてくれるわけではないからだ。

「ごめん、もう切るね。警察の人とも、少し
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ