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色を無くしたこの世界で
第二章 十三年の孤独
第45話 空の街【ヒンメル】
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出た後どうするのか考えよう。アステリ、その黒の塔って言う場所にはあとどれ位で着きそうか分かるか?」
「ごめんなさい。正確には……」
「そうか」

 濁すように答えたアステリの言葉に神童が落胆したように呟く。
 その一言に少しの不安を感じ取ったのかアステリは「でも!」と椅子から勢いよく立ちあがると、強く言葉を続けた。

「確かにこの先にあの塔はあるんです! 言葉では上手く言い表せないけど……気配と言うか、そう言うのを感じるんです!」

 「だから!」と言葉を続けようとしたアステリの肩を叩くと、天馬は優しそうな表情で「大丈夫」と囁く。
 穏やかに自分を見詰める瞳にアステリはハッと我に変えると、「ごめん」と静かに椅子に腰を下ろした。
 それからも話し合いは続けられたが、これと言った収穫は無く。結局その日は体の疲れを癒そうと言う結論に至り、各々自由な時間を与えられた。



 その日の夜。天馬は宿泊する事になった空き家の外で空を見ていた。
 この世界に初めて来た時に見た、沈むような黒色では無い。自分達が見慣れた色のついた夜空とどこか似ている空の様子に、天馬の混乱しっぱなしの心は和んでいた。
 
「うわー、まんまるだ」

 空に輝く白く丸い月に向かい腕を伸ばすと、天馬はそう言葉を発した。
 以前、アステリはモノクロ世界には時間の概念が無いと言っていたが、やはり昼や夜の区別くらいはあるのだろうか。
 それともこの街だけが特殊なのか?

「天馬、こんな所にいたんだね」
「アステリ!」

 いつの間に宿から外に出てたのだろうか。アステリはその水色の瞳を細め微笑むと、天馬の隣に腰を下ろし尋ねる。

「何してたの?」
「空を見てたんだ。アステリも見てよ、あの月! まんまるでキレイだよ」
「わあ、本当だ。まんまるだね」

 空に浮かぶ白い月を見詰め笑うアステリに天馬は「だろ?」と笑い返すと、少し間を開け話し出す。

「あのさ、さっき白竜が言ってた事なんだけど……あんまり気にしないでね。アイツ、態度こそああだけど、悪い奴って訳じゃないんだ」
「……ああ、もちろん分かってるよ」

 天馬の言葉に、アステリは先程より少しだけ乾いた笑みを浮かべると、目の前の風景に視線を戻し言葉を続ける。
 
「白竜くんの言い分はもっともだった。キミ達があまりに良い人達だから、ボクも甘えていた。彼の言葉で思い出したよ。ボクとキミ達が違う存在だと言う事を」

 発する言葉と寂しそうに月を見上げる横顔に、天馬は言葉を詰まらせた。
 「それは違う」と否定すれば良かったのだろうか。だが事実。自分達人間とアステリ達イレギュラーとでは違う部分が多い。
 その証拠に、先日のスキアとの戦いで自分達は多かれ少なかれ怪我を負ったと言うのに
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