暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン8 最速加速の大怪風
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って皆様にお届けいたしましょう!』」

 スピーカー越しの声を半ば押しのけるように、即興で作った声高らかな口上とともにオーバーな一礼。それなりの拍手をもって迎えられたことにやや満足するも、それもスピーカーが再び主導権を取り戻すまでだった。

『……あー、ここまで勝ち上がってきたチャレンジャーに対するは俺たちのチャンピオン!国籍不明、本名不明の大怪人、誰が呼んだかロベルト・バックキャップ……人呼んで後ろ帽子の(バックキャップ)ロブだぁっ!』

 派手なスモークがたかれ、噴出する煙の向こうからスポットライトに照らされて巨漢の影がゆらりと見える。清明かに先ほど鳥居に向けられたものよりも大きな拍手の鳴り響く中、その男がステージに現れた。
 その身長は、2メートルあるかどうかといったところ。がっしりとした四角い顔立ちにくすんだ金髪と碧眼が、彼が生粋の日本人ではないことを強く主張している。決して初戦で彼が当たった山形のように無駄な筋肉による過剰装飾があるわけではないが、しかしよく鍛え抜かれていることがわかる無駄のない体つき。13年前にプロだったことを考えると少なくとも30は越えているはずだが、まるで肉体的全盛期は過ぎ去ったことを感じさせない。もっとも、彼はそこに驚きは感じなかった。彼の身近にも、見てくれといい中身といいまるで年を感じさせない女上司がいるからだ。そしてひときわ目を引くのがその名、バックキャップの由来ともなった前後さかさまにかぶられた帽子。本人なりのファッションなのかはわからないが、少なくともトレードマークであることは間違いない。糸巻から聞いてきた話によると、あの帽子を取った彼の頭を見たものは誰もいないのだとか。

「……」

 寡黙な巨人といった雰囲気そのままに、割れんばかりの大歓声にはピクリとも反応を示さずのっしのっしとステージ中央へ向けて歩みを進めるロベルト。鳥居と向かい合う形で足を止め、40センチ近い身長差のある彼を必然的に見下ろす格好で目を合わせる。

「お前、今日の俺の相手か」
「お手柔らかに。それはそうと日本語、上手っすね」
「この国来て、20年になる。最初に習った相手、悪かった。ほとんど単語。もう癖取れない」

 ほとんど単語、というわかるようなわからないような会話の流れにほんの少し考え込むも、最初に方言でその国の言葉を習うともう標準語のアクセントで喋れなくなる現象と同じようなものだろうとすぐに納得する。随分横着な講師を選んだものだとやや同情するが、意味が通じないというほどではない。

『ここからじゃ何を話しているのかは聞こえねえが、チャンピオンとチャレンジャーがどうやら試合前の舌戦を繰り広げているみたいだぜ!だけど俺たちゃデュエリスト、そろそろカードでしゃべってもらいたい、なあ観客の皆もそう思うだろ!
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