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遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン8 最速加速の大怪風
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『さーてと、アンタが青木のおっさんに勝ったとして、そーすっと決勝の相手は、と。お、なんだロブか。こりゃ考えるまでもないな』

 外の状況など知る由もなく、いよいよ裏デュエルコロシアムも決勝3分前。ここに来る前に聞いてきた、上司からの最後の話を鳥居は思い出していた。

『通称後ろ帽子(バックキャップ)のロブ、ロベルト・バックキャップ。こいつなあ……アタシの記憶通りのデッキ、今でも使ってんだろうなあ』
『はあ?』
『ああいや、すまん。ただ、アイツは強いぞー。せめてライフが8000ぐらいありゃあもう少し持ちこたえられるんだろうがなあ。一応アタシは相性有利だったから勝ち越せてたんだが、それでも割と綱渡りだったんだよな。ただ鳥居、案外アンタとは馬が合うかもな。特に共通点があるわけじゃないんだが……なんつーか、アタシの勘だ』
『いやそこでめんどくさくなって説明放棄はやめてくださいよ』

 お世辞にも役に立つ情報だったとは言い難い。それでもあの女上司が、どこにも根拠のない自信だけはやたら満ち溢れためんどくさいアラサーがそこまで言うだけの実力のある相手だということだけは彼も理解できた。

「鳥居浄瑠さーん、スタンバイお願いしまーす」
「はーい」

 呼びに来たスタッフに促され、そこまでで回想を中断する。しかし椅子から立ち上がったろうとしたところで、体中に疼くような痛みを感じその場で固まる。休憩といってもほんの数分のこと、ここまでの2連戦による疲労、そして受けてきた火傷と打撲はまるで治癒しきっていない。

「ふぅーっ」

 固まっていたのは、ほんの数秒のことだった。軽く息を吐いて再び動き出したその時には、すでに体の不調など感じさせない滑らかな動きを取り戻している。彼は幼少期から仕込まれ続けたプロのエンターテイナーであり、観客が待つ舞台にはたとえ墓の中からでも立ち上がるのだ。

「今行きますよ」

 頬を両手で張ることで気合を入れ直し、改めて入場口へと歩き出す。明かりの下に出る少し前から聞こえてきた司会の声に歩みを速め、ほとんど飛び出すようにして最高のタイミングで観客とスポットライトの前に姿を現した。

『さあ、今日もいよいよ最終決戦、長かったデュエルもお開きの一戦だぁ!だけど今夜は一味違うぜ、まさかまさかの大番狂わせ、ここに集まったお前らは今、裏デュエル界の伝説の生き証人になったんだぜ!なにせここまで勝ち進んできたのは全く無名の新人……!』
「『やあやあやあ遠からん者は音に聞け、近くば寄って目にも見よ。とは申しますが、こちらにいらっしゃる皆様にそのようなことを申し上げるのはいささか野暮というものでしょう。今宵皆様のお目にかけますは大いなる海、偉大なる空に続く魔界劇場の第三幕にしてそのフィナーレ!提供は私、鳥居浄瑠が全責任を持
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