第1部
ロマリア〜シャンパーニの塔
諍い
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「これはあたしが格闘場で稼いだお金だょん♪ すごいでしょ♪」
シーラの話を聞いて、ナギの様子が豹変した。言葉を失い、金貨のほうを凝視している。ついでに荒くなっていた呼吸を整え、こう言った。
「その金貨、全部オレにくれ!!」
「…………」
「…………」
「…………え?」
シーラ、ユウリ、そして私までもが、一瞬沈黙した。けれどすぐにその沈黙は、金貨の所有者によって破られた。
「ナギちん? いまどきそんな冗談誰もウケないよ?」
「いやギャグじゃなくて!! それくれ!! 武器買うから!!」
そのあまりにも潔い申し出に、私はむしろ心地よさを感じた。
「寝言は寝てから言え。何でお前ごときに全ての金をやらなきゃならん」
「あっ、ユウリちゃん!! あたしのお金だよそれ!!」
ひょいと金貨を拾い上げたユウリを、シーラが珍しく憤慨した様子で奪い返そうとする。だがユウリはシーラに渡そうとせず、きっぱりとした声でこう言った。
「これは旅の資金にする。つまりリーダーである俺が保管しておく」
「ええっ!?」
私は思わず声に出して驚いた。いや、私だけではなく、遥かに衝撃を受けた二人も茫然としている。
これにはナギだけでなく、シーラまでも敵に回した。そりゃあそうだろう。ばくち好きのお父さんが珍しく大勝ちして大金を手にしたと思ったら、お母さんに全部没収されるようなものだもの。
「好き勝手に動き回るお前らに金を持たせるわけにはいかないだろ。ここはリーダーである俺が責任を持って管理する」
……なんか嫌な言い方だ。それじゃまるで私達が聞き分けのない子供みたいじゃない。
普段はユウリになかなか意見することができない私だけれど、今のその発言にはさすがに容認出来なかった。
「ユウリ、いくら旅にお金が必要だからって、一枚もくれないのはあんまりだよ! それに、ナギが武器をほしがるのは旅を少しでも楽にするために大事だからだと思うし、そもそもシーラのおかげで金貨が手に入ったんだよ? もうちょっと私たち仲間のことも考えて欲しいよ」
「……………………」
「ミオの言うとおりだ! なんでいつもオレたちが我慢しなきゃなんねーんだよ!! そもそもなんでシーラが稼いだ金をあんたが取り上げてんだよ!!」
「ユウリちゃん、あたしが飲んだお酒代ならその袋の半分で充分足りると思うよ!?」
私たちの訴えを聞いて、ユウリの眉間にしわが、かつてないほど深々と刻まれる。相当不機嫌になっている証拠だ。
「要するに、お前らは俺の意見を誰一人として聞き入れないということだな?」
沈黙。それは三人一致で肯定を表していた。
「……わかった。そんなに金が欲しいのなら使えばいい」
どさっ、と重い音が部屋に響き渡る。
「そのかわり、お前らだけで盗賊退治
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