暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン4 荒波越える五星たち
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「うし、いよいよ大仕事だぞ鳥居君」
「……えらくノリノリですね、糸巻さん」

 時刻は夜。ようやくオフィスに帰ってきた鳥居が目撃したのは、鼻歌でも歌いそうな勢いで待ち構えていた女上司の姿だった。安物のタイヤ付きチェアの上に乗ってくるくると回る三十路の上司に警戒を隠そうともせず近寄ると、糸巻が机の上に置いてあった1枚の紙を手に立ち上がる。

「まあ、近頃こんなデカい話とは縁がなかったからな。できるなら今からでもアンタと潜入担当代わってもらいたいぐらいだよ」
「俺もそうしたいんですがね。で、それはなんなんです?」
「おう、単刀直入に言うぞ。今日のコロシアム出場者一覧だ、極秘情報だから間違ってもゲロるんじゃないぞ」
「えぇ……どこで拾ってきたんですかそんなの」
「その話は後だ。それよりほら、少し情報アドをくれてやるからよく聞いとけよ」

 当然の疑問をばっさりと一蹴し、7人の名前が書かれたトーナメント表を見せる。覗き込んだ鳥居を片目に、手にしたボールペンで一番右端にあった鳥居の名前を丸で囲む。

「まず、出場者は7人。トーナメント方式だから全3回戦だな。で、これがお前だ。本来この対戦表はシードのこいつ以外ランダムにくじで決まることになってるが……まあこんな表が出てくるんだ、最初から枠の決まったイカサマの茶番だろう。ともかく、お前は1回戦から勝ち抜きで最大3回戦うことになる」
「3回戦ですか。どこもそんなもんなんですかね」
「どこも大体こんなもんだな。今回のお客さんはそれなりに名の売れた映画スターとかアイドルもいるから、主催者側も大事な金づるの次の仕事に支障が出ない範囲で終わらせたいんだろ。まあそんなことはどうだっていい、問題なのは対戦相手だ。まず最初のこいつ」

 そう言って、鳥居の隣の枠に書かれた山形仁鈴(にすず)、という名前に線を引いて消去する。

「ぶっちゃけこいつはアタシも知らん。まあ、つい昨日逃がしてやったチンピラの頭領だろうな。無名は無名どうし潰しあって、少しでもマシな奴だけ勝ち残ってこいってことだろ。だけどな、いいか鳥居。お前仮にもデュエルポリスの実技試験抜けてきたんだろ?チンピラごときに負けたら承知しないからな」





 そんな会話を思い返しながら、目の前の相手と相対する。お決まりの開会式や仕組まれたくじ引きを終えて向かい合った確かにその男は鳥居よりも背が高く、体格もいい。筋肉で膨れ上がった上腕に刻まれた、黒々とした鮫のタトゥーのせいでさらに威圧感も割り増しに見える……だが鳥居の眼はそれが実戦的でない、見せびらかすための筋肉でしかないことも見抜いていた。おまけに部下に対して威張り散らすことは日常茶飯事でもこうして観衆の前に出てくることには慣れていないのか、その巨体からは隠そうとしても隠し切れな
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