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人理を守れ、エミヤさん!
英雄猛りて進撃を(下)
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た。
 結わえられた青みのある黒髪を風に靡かせ、真紅の槍と紅蓮の盾を手に、まるでダレイオス三世の行く手を阻むかの如くに悠然と構えている。

 イスカンダル!

 ダレイオス三世は、宿敵の征服王に似ても似つかぬ戦士を見て、しかし極大の殺意を抱いた。
 赦せぬ、自らを神の子などと佞言を垂れ、己の国を簒奪した下賤なる獣。白痴のような妄想を謳い、軍を率いた辺境の王に過ぎなかった蟻一匹。
 ――そんなものに幾度も敗れた我が身の無能。

「     !!」

 音もなく血を吐く狂王。喉を引き裂き絶叫する。
 赦さぬ、断じて! 吾を敗者へ貶めた者よ、吾に仇為す敵対者よ! これに見よ、これこそが吾が『不死の一万騎兵(アタナトイ・テン・サウザンド)』である!

 狂王の下に集いし群体の不死、史実として存在した一万の精鋭。伝説となり、不滅性と不死性が強調されたダレイオス三世が擁する無二の矛、盾、軍!
 この不滅の軍勢を以って貴様を捻り潰してくれる!

 ダレイオス三世が右手の戦斧を掲げた。

 動く死体、骸骨の軍勢が、悪魔的な喚声を上げる。そのおぞましさは、まさに地獄の獄卒。悪の化身。ダレイオス三世は前方の敵一騎に向け、不死の一万騎兵を差し向けた。
 さあ、蹂躙してくれるぞ!



「――なんだ。それだけかよ?」



 不敵に笑む、無敵の勇士。迫り来る軍勢を前に、臆する様子は微塵もない。
 手の中でくるりと朱槍を回転させ、左手の赤い盾に叩きつける。戦の作法、出陣の儀礼――かつて盾を叩く槍の音を聞いた時、並みいる修羅のケルト戦士は戦慄した。

「出せるものがあるなら今の内に出しときな。後から負け惜しみを聞いてもつまんねぇからよ」

 不死の兵。不滅の死体。……余りに鈍臭くて欠伸が出そうだ。かの偉大なる征服王、その雄飛の足掛かりとなった大王よ、狂っているとはいえ正面からの突撃とは芸がない。

「んじゃ、往くぜ。まずは挨拶代わりだ。凌げねえなら影の国(あっち)でしごいて貰えや。死なねえからって気ぃ抜いてたら、笑えるぐらいあっさり逝っちまうぜ?」

 嘯くや否や、呪いの朱槍を放り、足に引っ掛け宙に蹴り上げる。
 自身も後を追って跳躍し、魔力を吸い上げ不気味に光る魔槍の石突きを、振り抜いた足が完璧に捉えた。

「  突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)  」

 真名解放。飛来する波擣の獣の頭蓋の一片。権能を秘めた神獣の欠片。溜め込んだ魔力を炸裂させ、一際強く赤く煌めいた魔槍はその内に秘める千の鏃を解き放つ。

 降り注ぐ千の棘。雨の如くの死の誘い。

 ――その悪夢のような光景に、見入られたように空を見上げる不死の兵。
 貫かれ、穿たれ、息絶えた不死兵は。
 死んだ。殺された。死を遠ざけ
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