暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
File1−裏デュエルコロシアム
ターン1 古生代不知火流、参る
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していった手つかずの書類の山を見て、1人残された彼は今度こそ深く大きいため息をつくのであった。
 一方、意気揚々と飛び出していった糸巻は。意外にもその表情に先ほどの笑顔の色はなく、それなりに険しい顔で手元のデバイスをのぞき込んでいた。賊は今、通報地点におよそ3分と30秒間留まっている。彼女の予感が正しければ、既に目的は達成できている時間だろう。
 ……この付近の住民は、決闘者(デュエリスト)の恐ろしさは身に染みてよくわかっている。台風が近づいているからといって、海辺に出向き仁王立ちでそれを受け止め向きを逸らそうとする馬鹿はいない。むしろ強盗の真っ最中に通報できただけ、このコンビニの店員には根性があるといえるだろう。

「と、なると。こっちか」

 コンビニへの最短距離を行くルートから外れ、街灯もない入り組んだ路地にふらりとその身を翻す。その直後、コンビニで停滞していた赤い光点も動きを見せた。追っ手を攪乱しようというのかジクザグに路地を走りながらも、まるで昆虫が光に誘われるかのような確実さで同じく走る彼女に向けて近づいていく。
 そして、2つの光点の位置はついに路地1本を挟むのみのところまで近づいた。そこで彼女は1度足を止め、制服に無造作に突っ込んであった煙草を1本取り出し火をつける。それを口にくわえ一呼吸おくと、風のない空に立ち上る紫煙が月光に照らされたなびいた。その軌跡を見つめながら、タイミングを見計らって声をかける。

「……よお、強盗クン。なかなかどうして、いい夜じゃないか」

 建物に囲まれる影の世界から、月光の照らす元へ。まさに彼女のいる通りに飛び込もうとしていた人影が、不意を突かれ完全に硬直した気配が闇の中から伝わってきた。その初々しい反応から十中八九場慣れしていない、それも今回が初犯ぐらいのつまらないチンピラだろうと予感を確信に変える。固まったまま動かない人影に近づき、残り5メートルという地点でまた足を止め向かい合う。

「だ、だ、誰だアンタは!?」

 ようやく聞こえてきた声はまだ若く、多めに見積もっても成人したかどうかといったところだろうか。早くも声に余裕がなく、先ほどの評価に小心者と内心で付け加えておく。

「アタシか?しがない公務員、ゴミ処理業者のおばちゃんだよ。定時はとっくに過ぎてるけどな」
「な、なんだと!?いいか、それ以上近寄るとな……な、なんだ!?なんで実体化しねえ!?」
「『BV』だろ?」

 強盗がその唯一の拠り所らしき左腕にはめた機械、通常モデルよりやや大ぶりのデュエルディスクを起動したところで、さらに先回りして忌々しいシステムの名を怒りを込めて吐き捨てる。今度こそチンピラがフリーズしたところで、気を落ち着かせるために煙を強く吐き出しながら畳みかけた。

「あいにく、アタシの
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