暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
File1−裏デュエルコロシアム
ターン1 古生代不知火流、参る
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ているのだろう。本来この地域は危険区域ど真ん中、本当はもっと人員も予算も回されてしかるべき場所のはずだ。
 ……鳥居には、今の上層部の考えが予想できていた。腕っぷしだけはやたら強いが、書類には常に真面目に取り組まないうえ独断専行の気が強く協調性も薄い糸巻。そして新人の自分。少数精鋭といえば聞こえはいいが、要するにただの厄介払いを兼ねた捨て石だ。おそらく自分たちは遅かれ早かれ「BV」の餌食になり、その知らせを聞いた上層部は犠牲者が出たという名目で政府予算をさらに巻き上げる。そうとでも考えなければこの「BV」戦線の最前線ともいえる町に、戦闘技能のない一般事務員を除くとわずか2人しか実戦部隊を配属しないなんて馬鹿げた話があるはずがない。
 ただ、たとえそうだとしても、鳥居は今自分にできることが糸巻に未提出の書類を催促することぐらいしかないこともよくわかっていた。彼女の素行不良が彼女自身の査定に響く程度なら知ったことではないが、自分の給料までも連帯責任によりその減額の対象となりうることに気づいてしまったからだ。そしてこのご時世、他に仕事の当てもない。

「ハァ……わーったよ。仕方ないなあ、チャチャっと片付けるか」
「もう30回は聞きましたけどね、そのセリフ」

 結局何も思いつかず、抵抗を諦めた糸巻が自分の席にもう1度座りなおす。だが、その手が放り出されたペンを掴むことはついになかった。突如オフィスの空気を切り裂くように、鋭いサイレンの音が鳴り響いたのだ。

「なんだ、強盗か!?」

 これ幸いとばかりに素早く立ち上がった糸巻が、口元に隠し切れないかすかな笑みを浮かべながらも手元のデバイスを操作する。ボタンを押すと同時にホログラムによって彼女の目の前に浮かび上がったこの町の地図には、自分の現在地を示す緑の光点と急行地点である赤い光点がリアルタイムの位置情報をもとに示されている。さっと目を走らせた彼女が、感心するかのように口笛を吹いた。

「へえ、いい度胸してんじゃん。鳥居、お前の行ってきたコンビニだろここ」
「え?あ、ホントですね。随分うちの近くですねえ」
「多分、深夜ならアタシらもいないと思ったんだろうな。でも残念、ちゃーんといるんだな。じゃ、軽くシメてきますかね」
「どっかの上司の残業のせいで、でしょう?どうせその辺のチンピラでしょうし、俺が行きますから糸巻さんは書類やっててください」
「いいや、これは正義のためだ!アタシが行く、そして終わったら流れで直帰する!」
「本音漏れてますよー……じゃあもう勝手にしてくださいよ、どうせ止めても聞かないでしょうし」

 あまり言い争っている時間もないと鳥居が折れ、それを見て我が意を得たりとばかりに逆巻が制服を羽織ったままの格好で飛び出していく。嵐の後のようなオフィス内の惨状と彼女が残
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