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嗤うせぇるすガキども
戦車は愛と正義を否定する 前編
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静止した。

「そのまま首だけ後ろに向けろ」

 少年悪魔は片足立ちのまま、首から上だけ180度回転させて召喚主を見る。
 これは確かに悪魔にしかできない。
 犬が真後ろを向くことができるのは、頸椎をUの字に曲げることができるからである。

「わかったら、僕を「ご主人様」と呼べ」
『……下僕はあるじを御名(ぎょめい)でお呼びするのが習いでございます』

 壊れた人形のようなポーズのまま、少年悪魔はそう答えた。
 召喚主はしばらく考えるそぶりだったが、そういうことなら仕方がないと思ったようだ。

「僕の名は、玖波碧暁だ。わかったか小僧」
『おおせのままに。碧暁さま、……なんなりとお申し付けください』

 まことに名は体を表すという言葉どおりの人間のようだ。痛すぎるという意味で。






 玖波は少年悪魔をともなって、本来なら「ノーブル・シスターズ」しか入ることを許されないクラブハウス、「紅茶の園」こと、ビクトリアン・ホールに入ろうとする。

「玖波様。おまちください」

 その入り口で、彼らをさえぎる女生徒が一人。「ノーブル・ネーム」をニルギリという。

「この場所に出入りできるのは、名を許されし『ノーブル・シスターズ』のみ。
 まして男性がこの場所に出入りすることは許されませぬ。どうかお引き取りを」

 玖波は、ニルギリを完全に無視して中に進む。
 ニルギリは先回りして両手を広げ、なおもさえぎろうとする。
 玖波は、そのニルギリの手首をつかむと、思い切りねじった。
 しかし、声も上げず玖波をにらむニルギリ。

「三下風情が、この僕に意見しようというの?
 何が『ノーブル・シスターズ』だよ。
 誰一人、操縦でも射撃でも運用でも、この僕に勝てなかったじゃないか。
 僕は、そんなノーブル・シスターズなどより『優秀な』人間なんだよ。
 わかったら黙って通せよ。それともかわいい手首を壊されてもいいの?」
「金で破門者を雇って身につけた技のどこが戦車道……うぐっ!」

「……通して差し上げなさい」

 玄関の奥から声がして、ニルギリに玖波を通すように促す。
 ニルギリは驚いた。

「ダ、ダージリン様……」

 それを聞いた玖波はニルギリの手を離し、彼女を床に突き飛ばした。

「ノーブル・シスターズの長はわかってらっしゃるようだ。
 リーマン・ショックの余波で傾いた、気位だけは高いこのお嬢さま学校を救ったのは 誰なのか。
 中で僕と少し話そうよ」
「……これから全体練習ですので……」
「……君、聞こえなかったみたいだね」

 玖波は、ダージリンに氷点下一歩手前の視線を向けて、薄ら笑いを浮かべた。
 やむなくダージリンは、アッサムに自分の代わりを務め
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