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嗤うせぇるすガキども
これが漢の戦車道 E
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 ギャンブルタンカー野郎どもとプロリーグ二軍補欠女子たちのスペシャルマッチ。
 重賞戦あつかいの格式で、テレビ中継まであるこの試合の火ぶたが切られようとしている。
 日本全国の場外戦車券売り場は、もはや立錐の余地すらない大混雑だ。

 はたして、常勝無敗のシャーマン「ホラー号」に、ついに土がつくのか。
 もし負けることがあるとすれば、今回が最初で最後の機会になるだろう。
 競戦車道ファンの期待と、(5対10という初めての女子側不利の戦いのため)女子側オッズは天井知らずのうなぎ登りである。

 場内の南北にあるゲートに納まった戦車に、それぞれの陣営の選手たちが乗車した。
 ゲート係員が、無線で競技本部に無事故終了を報告する。
 タワーの上の審判長が、すべて順調との報告を受けて、手旗を用意する。
 試合時間は6時間。開始時刻の正午まで秒読みに入っている。

 そしてついに30秒前。
 審判長が手旗を掲げ、楽団が出場のファンファーレを奏でた。

 場内の大時計の分針が動き、正午を指す。
 審判長が手旗を振り下ろすと同時にゲートが開き、15両の戦車が全速で場内に放たれた。
 大観衆の怒号と、履帯の立てる金属音、エンジンの咆吼が協奏曲を奏でる。
 やがてそれは「戦場音楽」というものにとってかわられるであろう。






 大方の予想を覆し、男子チームは機動戦に出なかった。
 全車ダンゴ状態のまま、西側にあるブッシュゾーンに入り込む。
 本来、観客に「見せる」試合をする彼らは、基本的に遮蔽物を使わない。
 女子側にも「当てさせてやって」見せ場を作ってから倒すのが身上だったはずだ。
 一方女子側は3両と2両に分かれ、みはらしのいい高地を目指す。



 ホラー号を中心に、林の中で円陣を組んだ男子チーム。
 戦争親父以外の車長全員が、ホラー号に集まってきた。

「おい、新入り。例のブツを出せ」

 鹿次は試合前に渡された小さな段ボール箱を取り出し、開封して中身を出す。
 中から出てきたのは高解像度CCDカメラを搭載した小型の「ドローン」だった。
 スマホで操作できるタイプであり、鹿次はいまスマホに操作アプリをダウンロードしている。
 ドローン自体は戦争親父が手に取った。

「とりあえず、連中のお手並みを拝見といこう。
 新入り、飛ばせ」

 鹿次がスマホを操作すると、ドローンの4枚のローターが回り出す。
 戦争親父はドローンを手のひらに乗せていたが、回転が十分と見るとドローンを空に放った。

「あれでも、満充電で3時間は飛ぶことができる」



 ドローンの動画は、リアルタイムで鹿次のスマホと戦争親父のタブレットに転送されてきた。
 
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