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赤き巨星のタイタノア
第4話 残された思い出
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肩を撫でる。普段なら、彼に触れられたことで気を良くして、言うことを聞いてしまうところであるが……今回ばかりは、引き下がるわけにはいかなかった。
 今回の任務には「未知の大怪獣」という、かつてない危険が伴うのだから。

「……地球に襲来してきた奴らより、遥かに巨大な宇宙大怪獣。もし本当にそんな奴がいるのなら、いずれにせよ人類の脅威になる。オレ達が行かないと、この星のみんなが危ないんだ」
「でもっ……でも!」
「心配ないさ。今までだって、危険な任務はいくらでもあった。……それを乗り越えてきたオレ達だからこそ、この任務に選ばれたんだ」
「……威流様」
「だから安心して、いつも通りにここで待っててくれよ。ちゃんと帰ってくるからさ」
「……」

 ――そんな彼女の思案をよそに。威流は葵を不安にさせまいと、「なんてことない」ように明るく振舞っていた。此の期に及んで、自分を子供扱いする威流の対応に――葵は苛立ちを募らせる。

(……威流様は、いつもそうやって、何でもないことのように振舞われて……! いつだって、過酷な戦いばかりだったのに! 私の前では、辛い顔一つお見せにならない……! そんなにも私は、子供だと言うのですか!)

 それが暴発するまでに、そう時間は掛からなかった。かつてないほどに危険な任務であるはずなのに、決してあるはずの不安を口にしない彼に。絶対に自分に寄りかからない彼に。
 ――葵は「妻になる者」としての憤りを、噴き出した。

「……しは……では……せんっ……」
「葵……?」
「……私はっ! もう、子供ではありませんっ!」

 道着の襟を掴み、自らの体を寄せる。衣服越しに密着し、豊かな胸が逞しい胸板に押し潰されていく。
 自分の和服が威流の汗で汚れることなど、気にもとめず。彼女は決して逃がさないと言わんばかりに、彼に迫り出した。

「どうしても行かれると仰るのであれば……さ、先に! 世継ぎを残して頂かなくてはなりません!」
「ど、どうしたんだ急に。世継ぎって……んな大袈裟な」

 その鬼気迫る貌と、歳不相応な色香に圧倒されつつ。威流は取り繕うように笑い、再び宥めようとする。
 だが――彼の瞳を射抜く葵は、その誤魔化しを許さない。

「……大袈裟なものですか。私は、知っているのですよ。今まで、貴方が参加されてきた作戦全てが……決死隊にも等しい修羅場だったことくらい」
「……!」
「今度も大丈夫、いつものこと。――威流様はいつだって、私の前ではそんな悠長なことばかり仰る! 何もできず、ただ座して結果を待つしかない私のことなど、気にも留めずっ!」

 ――いつしか。彼女の頬には、雫が伝っていた。
 愛する男を、幾度となく失いかける不安と恐怖。自分がその只中で苦しむ中、当の本人は胸中にあるはず
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