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赤き巨星のタイタノア
第2話 調査の代償
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ている円華と竜也に、圧力を掛けていた。

 ようやく怪獣軍団との戦いが終わり、終戦を宣言し。全世界が復興に向けて動き始めている中で、「大怪獣」の存在が公になれば……守備軍が怪獣軍団を撃滅したことで得た名声に、傷がついてしまうからだ。

 ――上層部にとって地球守備軍は、「宇宙の侵略者から地球を救った英雄」であらねばならないのだから。

 ◇

 ――そして、威流の撃墜から2週間。
 人類が宇宙に進出した、この新時代の東京においても、古風な景観を保ち続けている屋敷の中で。

「……そう、ですか」

 守備軍の名門「獅乃咲家(しのざきけ)」当主・獅乃咲雅(しのざきみやび)は、娘の許嫁である威流の最期を、耳にしていた。
 艶やかな黒髪を纏め上げた、色白の和風美女。端的に彼女の容姿を表現するなら、そのような言葉になる。淡い山吹色の和服に袖を通す彼女は、齢40とは思えぬほどの若々しさであり――美しくも儚げなその貌は、20代後半のようにも伺える。

 一方。その隣に控える彼女の娘・獅乃咲葵(しのざきあおい)は、目を伏せたまま報告を聞いている。
 亜麻色の髪をショートボブに切り揃えている彼女は、16歳という年齢には不相応なほど発育した肢体を、母と同じ山吹色の和服に隠している。母譲りの色白の肌と、侵し難い美貌を持つ彼女は――報告に馳せ参じた侍女と目を合わせず、ただ黙していた。

 そして。この獅乃咲家に仕える侍女にして、守備軍所属のエースパイロットである――志波円華は。頭を床に擦り付け、両手をついたまま、2人に対して頭を垂れていた。
 肩まで伸ばしたセミロングの黒髪と、小麦色に焼けた肌。全体的に筋肉質でありながらも、女性らしいラインを描いたプロポーション。その溌剌とした風貌と男勝りな人柄で、男所帯の守備軍において「エース」の座に登りつめていた彼女も――今となっては、見る影もない。

 ――日向威流は一般家庭の出でありながら、確かな実績と信頼により、獅乃咲の婿としてこの家に招かれていた。次代を継ぐ獅乃咲葵の、許嫁として。
 そんな彼を、獅乃咲に仕える身であり、共に戦うパイロットでありながら。彼を守るどころか、自分達が生還するための犠牲にしてしまった。侍女としてこれほど重大な、主人への裏切りは類を見ない。

「申し訳ございません……! 全ての責任は、彼のそばにいながら何もできず、あまつさえ此度の原因を作ったこの私にあります! 御命令さえあれば、今すぐにでもこの首を――!」
「もう、よい。彼を悼む思いは、皆同じです。これ以上、自分を責めてはなりません」
「しかしっ……当主様……!」

 守備軍の白い軍服に袖を通している円華は、顔を上げるとしきりに「裁き」を乞う。だが、雅は落ち着いた物腰で、穏やかに彼女を諭していた。

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