暁 〜小説投稿サイト〜
魔術師ルー&ヴィー
第一章
V
[1/4]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

 翌朝、ルーファスとヴィルベルトは例の金貨や宝物をバーネヴィッツの館へと持ち帰ると、それをクリスティーナへと渡し、それを得た経緯を彼女に語った。
「ファルケルの奴…先に逝きおったのか…。」
 全て聞き終えて後、クリスティーナは淋しげな表情で呟いた。
「叔母上…信じるのか?」
「信じるも何も、これを持ってこれたのが何よりの証拠だ。これはファルケルが発見し、そしてあやつ自身で封じたものだからの。」
 そう言い、クリスティーナは在りし日を思い出すかの様に目の前の品々を見た。そしてふと、その中の一つを手に取って表情を和らげた。
 彼女が手にしたものは、美しい装飾が施された髪飾りであった。幾つもの宝石が埋め込まれ、周囲は金で出来ている逸品である。
「これも…共に眠っておったか…。」
 クリスティーナが言った独り言に、ヴィルベルトが「それは何ですか?」と首を傾げて問った。
 クリスティーナは暫く黙して後、その髪飾りについて語った。
「これはな、旧時代にここを治めていた領主の遺品ではない。まぁ、それなりに歴史のあるものではあるが、これはアーダンテが私に贈ったものなのだ。」
「は?アーダンテって…シュトゥフ氏から?」
 ルーファスは驚いて問った。二人の関係はファルケルから聞いてはいたが、実際にアーダンテ・シュトゥフとあったことのあるルーファスには、今一つピンとこないでいたのである。
「そうだ。私はな、あやつをそういう風には思えなんだ。だが、あやつは…。」
「叔母上を好いてたんだろ?何でシュトゥフ氏じゃダメだったんだよ。顔か?っても、若かりし頃のシュトゥフ氏は美形で有名だった筈だしな…。」
「まぁ、そうだな。あやつは拳闘士にも関わらず、かなり美しい顔立ちであった。今は亡き我が夫には劣るがな。」
 そう言って笑うと、その髪飾りを元の場所へと置いて言った。
「これらは、私が全て買い取ろう。そうだのぅ…四万二千ゴルテと言ったとこか。」
「…そんなに要らん。」
 ルーファスがあっけらかんとそう言うと、クリスティーナは不思議そうに尋ねた。
「何故じゃ?それだけあれば、お前もその弟子も、もはや働かずに暮らせるではないか。」
「別にそうしたい訳じゃない。俺達はただ、旅が出来りゃ良いんだよ。ん、ヴィー?」
 下がっていたヴィルベルトがルーファスの隣へと出てきたので、ルーファスはヴィルベルトへと視線を変えた。すると、ヴィルベルトは笑いながら師の意見を擁護した。
「そうです。たとえ遊んで暮らる額を受け取ったとしても、きっと面白くも何ともないですしね。旅が一番面白いですから。」
 そんな二人の言葉に、クリスティーナは苦笑しつつ返した。
「では、この金をどうしたいのだ?」
「そうだな…あの聖堂を補修するってのはどうだ?な、ヴィー?」
「それが
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ