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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十四話 信頼
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撃を要請した。だが司令部は頷かない。”基地攻略など大した事は無いといったではないか”そう言って嘲笑するだけだ。ラインハルト様もリューネブルク准将も司令部では孤立している。そして司令官、グリンメルスハウゼン中将は全く頼りにならない。基地攻撃部隊は完全に孤立している。

『それに敵の増援部隊が近くまで迫っているかもしれん、最悪だな……、』
リューネブルク准将の声が一瞬途絶えた。攻撃する手段が無い以上、敵の増援部隊が近くまで迫っている可能が有る以上、取るべき道は決まっている、撤退しかない。このまま攻撃を続けても犠牲が増えるだけだろう。

だがリューネブルク准将はそれをラインハルト様から言わせようとしているのだろうか。撤退はミューゼル准将の進言によるとするつもりなのか、思わず身体が緊張した。ラインハルト様も表情が厳しい。

『撤退する。貴官は次席指揮官だ、俺の指示に従ってくれ』
「……」
ラインハルト様が私を見た。目には複雑な色が有る。リューネブルク准将を疑った事を恥じているのかもしれない。

「宜しいのか、それで」
ここで撤退すれば敗退ということになる。当然だが経歴には傷がつく。三年振りに戦場に出たリューネブルク准将にとってはこれが最後の戦場になるかもしれない。

勝ちたいという気持ち、敗戦の責任は取りたくないという気持ちは誰よりも強いだろう……。ラインハルト様が声をかけたのは自分も責任を分かち合うという意思表示だ。ラインハルト様らしいと言えるし、私もそうするべきだと思う。

『卿の好意には感謝する。だが負け戦の責任くらいは一人で取れそうだ、心配は無用だ』
どこか含み笑いを込めた声だった。

『それより撤退を急ごう、敵の艦隊が到着すればおそらく連中は全面的に反転攻勢に出る。追い打ちはきついものになるだろう。それまでにどれだけ基地から離れられるか、それが生死を分ける事になる』
「……」

『卿が先に行け、俺が殿を務める』
「しかし、それは」
『ぐずぐずするな、ミューゼル。一分一秒が生死を分けるのだ』



宇宙暦 794年 4月 6日  ヴァンフリート4=2  ミハマ・サアヤ



酷い話です、バグダッシュ少佐は私まで疑っていました。でも実際疑われても仕方の無いところもあります。私はフェザーンでの一件を報告しませんでした。でも、あれは報告すべきものではないと思ったのです、汚してはいけないと。

今でもその事は後悔していません。ヴァレンシュタイン少佐も私が情報部に報告しないと思ったからあの場に連れて行ったのでしょう。盗聴器を付けられていた、自分の一語一句を記録されていた、寒気がします。何ておぞましいことか……。私は一生このおぞましさを忘れる事は無いでしょう。

自分がこれまでしてきた事を考え
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