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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十二話 ヴァンフリート星域の会戦
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佐は周囲の弛緩した雰囲気に混じることなく私達から少し離れた場所で戦闘の状況を追いかけています。総司令部も混乱しているのです、簡単な事ではありません。それでも傍受する事が出来た通信内容から大体の事は分かったようです。私達にも教えてくれました。

開戦後、同盟軍も帝国軍も互いの戦力から大きな部分を割いて繞回進撃を試みたそうです。つまり敵陣の周縁部を迂回してその背後を撃つ。成功すれば前後から攻撃出来、大勝利を得られます。それを狙ったのでしょう。

ですが繞回運動には危険があります。繞回運動を行なう部隊と主力部隊の間によほどの堅密な連携が維持できないと敵によって各個撃破されてしまうのです。しかしヴァンフリート星域の会戦はそれより酷い事になりました。両軍が繞回運動を行なったためただひたすら混乱し騒いでいるだけです。

“繞回運動による敵の挟撃、成功すれば華麗な勝利を得られますからね。それを狙ったのでしょうが、この星域の戦い辛さを両軍とも過小評価したようです。勝つ事よりも生き残る事が大事なのに……”

そう言った少佐に表情には暗い笑みが有りました。多分憎悪だったと思います。自分を最前線の基地に放り込んでおきながら役に立たない作戦で混乱している同盟軍を心底憎んだのでしょう。

ヴァレンシュタイン少佐はセレブレッゼ中将に状況を報告しています。
「帝国軍は同盟との艦隊決戦を望みました。どうやら帝国軍は基地の存在には気付いていないようです」
セレブレッゼ中将がほっとしたような表情を見せました。基地は安全だと思ったのでしょう。

「それで」
「艦隊決戦で同盟軍が勝てば問題は無かったのですが、現在両軍は混戦による混乱状態にあります。帝国軍の艦隊は敵を求めてヴァンフリート星域を彷徨っている状態です。場合によっては此処に気付くかもしれません」

セレブレッゼ中将の顔が歪みました。ヴァレンシュタイン少佐、やっぱり少佐はサディストです。私にはわざとセレブレッゼ中将を苛めているようにしか見えません。

少佐が戻ってきました。
「少佐、酷い戦ですがこれからどうなるでしょう」
私が問いかけると少佐は微かに微笑みました。もっとも眼は笑っていません。冷たく光っています。

「これからですか……。これからはもっと酷くなりますよ」
私は少佐の言う事を信じません。酷くなるんじゃありません、少佐が酷くするんです。そうでしょう、ヴァレンシュタイン少佐?



宇宙暦 794年 3月26日  ヴァンフリート4=2 エーリッヒ・ヴァレンシュタイン


サアヤが俺を胡散臭そうな眼で見ている。心外だな、俺は嘘を言っていない。ヴァンフリート星域の会戦はこれからが本番だ。これまではただ混乱していただけだが此処からは悲惨な結果になる。

此処までは特に原作と
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